短編?『博士と助手』


「これはどうなっているんだ?」
「これはあれじゃないですか。つまり、これをこうすれば・・・」
「やってみるか? こうだろ? こう、こういう風に・・・」
「あ、そこはそうじゃないですよ。こうですよ」
「そうか? それじゃあ変だろ」
「変? 変って何です?」
「なんというか、観念的に」
「表象的にやればいいんです」
「表象的にもなにも、これはあれだからさ」
「そんなに叩かないでくださいよ。壊れたらどうするんですか」
「ああ、いや、すまん。じゃあ君に任せるよ」
「見ててください。こうするんです」
「ううむ・・・」
「ほら、渦巻状になるでしょう? そうしたらこれを逆立てるんです。あとはレバーを上下させれば・・・あっ」
「ちょっと、どうしたんだ」
「こんなはずは・・・」
「おい、失敗なのか?」
「失敗と言うより、断崖です」
「なに?」
「断崖ですよ。どうします」
「どうしますって君、君がなんとかしたまえよ」
「食べますか」
「食えるのか?」
「発情すればなんとか」
「発情・・・わしはだんだん何の話だかわからなくなってきたんだが」
「食べないんなら僕が食べちゃいますよ」
「いや、わしが食う。どれどれ・・・」
「どんな味です? それをオチにしましょう」
「トマトの味がする」
「・・・ちょっと、それじゃオチになんないですよ」
「オチもなにも、トマトの味だもの。ほら、君、記録してくれ。メモってくれたまえ、トマトの味、と」
「ちぇっ。もっと楽しいものだと思ってたのにな。だいたい・・・」
「なにがだね」
「喋らないでくださいよ。僕のボヤキで終わるんですから。ああもう、またタイミング逃しちゃったじゃないですか」
「盆踊りでも踊るかい?」
「6月にですか? うーん、最悪それでいきましょうか」
「踊るぞ。ほらほい」
「あ、そこはそうじゃないですよ。こうですよ」
「そうか? それじゃあ変だろってさっきもこんな台詞あったろ」
「あー! だから言わないでくださいよ!」
「エンドレスに回転する物語としては文脈がおかしいだろ」
「解説しないでくださいよ、もうだめだ」
「チャンチャンって効果音はどうだろう?」
「だめです」


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