読んだらすごかった本ランキング 1999 旅と現代文学。Award

1999年に読んだ96冊のなかから面白かった本ベストテン。過去分

1位

町田康『くっすん大黒』

表紙

1997年3月 文藝春秋 1500円

内容紹介:すべては大黒を捨てようとしたことから始まった!? ありふれた日常と異次元世界を描く注目の大型新人登場。「河原のアパラ」を併録。

100字レビュー:パンクロッカー町田町蔵の作家デビュー作。ダメな人間のダメな生活を楽しげに描く。置物の大黒みたいに役立たずで、だからこそ生きていけるんだ。へろへろした文体なのに高速移動している。この浮遊感がたまらない。

2位

平野啓一郎『日蝕』

表紙

1998年10月 新潮社 1365円

内容紹介:異端信仰の嵐が吹き荒れるルネッサンス前夜の南仏で、若き神学僧が体験した錬金術の驚異、荘厳な光の充溢、そして、めくるめく霊肉一致の瞬間…。現役大学生が聖文学を世紀末の虚空に解き放つ。

100字レビュー:15世紀南仏。とある神学僧が森に住む錬金術師と出会い、事の真実へと潜ってゆく。両性具有者、魔女、神と悪魔の長編。難解な文体は中世の禍々しくも美しい世界を描ききるために選び取られ、適切な効果を成している。

3位

花村萬月『ぢん・ぢん・ぢん』

表紙

1998年7月 祥伝社 2940円

内容紹介:モラルの破壊か、倫理の創造か! 花村萬月の新たなる飛翔!青年は性を知り、孤独を知り、差別を知り、地獄を見た… 家出少年イクオの性と魂の遍歴。

100字レビュー:大長編哲学小説。ヒモ修行中のイクオが出会う尋常ならざる人物達。美醜は本質的にムゴイものだ。差別することされること、イクオは明暗を流れる。延々繰り返されるセックス描写と黙考が一つの倫理体系を築いている。

4位

藤沢周『陽炎の。』

表紙

1998年11月 文藝春秋 1300円

内容紹介:失業生活のなか、徐々に壊れゆく男の日常を描いた、芥川賞受賞第一作の表題作他三篇収録。鋭い視点で現代社会をリアルに捉えた短篇集。

100字レビュー:失業者の苛立ちを描いた表題作と、前後不覚の幻想生活「事情聴取」がイカす短編集。これまで内面をあえて排除する作家なのかと思っていたが、ここではキリキリと胃痛のような精神活動がある。新潟弁もどこか新鮮だ。

5位

高橋源一郎『あ・だ・る・と』

表紙

1999年3月 主婦と生活社 1575円

内容紹介:純文学が、エロの世界に衝撃的デビュー! アダルトピデオを舞台に性と生の深奥を問う、タブー破りの問題作。

100字レビュー:「AVというお仕事」を描いた長編。見かけと装丁はエロ本みたいだけど、勃起している頭に突然押し込まれる人生の深淵。セックスと愛なんて嘯いている場合ではない。こんな純文学見たことない。必ず最後まで読むこと。

6位

村上龍『ワイン一杯だけの真実』

表紙

1998年12月 幻冬舎 1470円

内容紹介:宝石のような8本のワインに呼応する、女たちの一瞬の官能。散文の極点を目指した村上龍最新小説集。

100字レビュー:ワインをめぐる短編集。関係に飢えるあまりみな少しずつ心を壊してゆく。その導火線としてあるいは最後の一線としての極上ワイン。ブルジョワが鼻につく話だったら嫌だなと敬遠してたのだがいらぬ世話でした。傑作。

7位

島田雅彦『子どもを救え!』

表紙

1998年5月 文藝春秋 1500円

内容紹介:首都郊外に家族と暮らす作家千鳥は酒と女にあけくれつつ、震災や頻繁に殺人がおこる世の中から、子供を救おうと世界を奔走する。

100字レビュー:郊外で起こる妻子殺しの事件。それをなぞるように千鳥は夫からも父親から滑り落ちて行く。文学は子供を救えるか? 阪神大震災とオウム事件と内省も内包。『優しいサヨク〜』の世界は不倫小説という祈りへ成熟した。

8位

丸山健二『争いの樹の下で』

表紙

1999年2月 新潮文庫 上巻620円、下巻660円

内容紹介:首吊り女が産んだ奇跡の子。齢千年の巨樹はその未来を見通した。親も家も名も持たぬ「おまえ」を待つ、腐臭を放つ二十一世紀の日本。「おまえ」は盗みをくりかえし、白毛の老猿が語る謎の詩集に導かれ、個の自由を求めて流れゆく。だが、猛火と爆発を逃れつづけた「おまえ」の姿が捉えられる瞬間はついにやってきた―。強烈なスリルと暴力的な興奮が横溢する新世紀への黙示録。

100字レビュー:首吊り女から産み落とされた子供。老木が見据えるその運命。彼は猿の詩集を抱えて二十一世紀を流れる。「よくぞ生まれし!」。著者の哲学満載で説教臭いと感じる部分もあるが、文学の熱気が充満する迫力に敗北感嘆。

9位

藤沢周『サイゴン・ピックアップ』

表紙

1999年2月 河出文庫 599円

内容紹介:修羅は聖か、仏は俗か――ヤクザから身を隠すために修行僧となった男を待ちうける奇怪な運命をハードボイルド・タッチで描き、人間の混沌と暗黒をあばく芥川賞作家、白熱の長篇。無の地雷をしかける傑作。

100字レビュー:借金取りから身を隠すために仏門に入った男は俗塵にまみれたまま宿命に連れ去られる。地雷型の玩具がランダムに暗示を吐き出す、まっすぐ進め、そいつを殴れ。オリエンタル好きの外国人向けみたいだがカッコイイよ。

10位

小林恭二『カブキの日』

表紙

1998年6月 講談社 1680円

内容紹介:劇的なる傑作長篇小説。第11回三島由紀夫賞受賞。今日、運命の舞台に奇跡が生まれる。日本一の大劇場「世界座」の迷宮をめぐる、美少女・蕪(かぶら)の時空を超えた旅が始まった!

100字レビュー:世界座の楽屋に広がる広大な迷宮を蕪は進む。切幕を与えられた京右衛門の荒れた舞台に、やがて神が降りてくる。歴史を越える「藝」を描きながら文藝の魅力を発揮した長編。神の舞というクライマックスに目も釘付け。