読んだらすごかった本ランキング 2001 旅と現代文学。Award
2001年に読んだ158冊のなかから、よりすぐりの面白かった本10冊をピックアップ。過去分
1位
島田雅彦『彗星の住人』

2000年11月 新潮社 2100円
内容紹介:十九世紀末の長崎、一人の芸者と米国軍人の悲恋から生まれた「恋の遺伝子」は、アメリカを経て戦時下の満州へ、焼け跡から復興した経済大国・日本へと流転する。時空を超え、自由自在に飛翔する想像力で描く、血族四代の百余年間。危険で甘美なロマンスと激動の二十世紀史が劇的に壮大に交差する、島田文学の最高傑作誕生!
100字レビュー:4代100年に渡って繰り広げられる恋物語。駐留米兵の子を身ごもった蝶々夫人、マッカーサーの愛人を寝取った蔵人、恋が歴史を作る。絡まった糸を丸ごと描写する、珍しくも本気の著者。時間の越えかたも素晴らしくて。
2位
田口ランディ『アンテナ』

2000年10月 幻冬舎 1575円
内容紹介:15年前、妹はなぜ忽然と消えたのか?父は死に、母は宗教にのめり込み、弟は発狂した。そして僕はSMの女王ナオミと出会い、封印してきた性欲が決壊し、急速に何かが変容し始めていた…。身体と精神の新たなる宇宙に挑む最先端文学。
100字レビュー:妹が突然消える。その不条理さから身を守るために、母は宗教へ、弟は精神の彼岸へ。そして僕は、僕なりの方法で妹を葬らねばならない。臨床哲学のクールな長編。時代の嗅ぎ分け方も、無駄のない文章も、全部正解だ。
3位
野田知佑『日本の川を旅する』

1985年7月 新潮文庫 540円
内容紹介:北は北海道・釧路川から南は鹿児島・川内川まで全国14の川を単身カヌーで漕ぎ下る、爽快なルポルタージュ! 写真多数を収録。
100字レビュー:日本縦断カヌー川下りの紀行文。飛沫上がるような涼しげなルポがあり、汚れ行く川への静かな哀悼がある。その土地の風俗や民度がよく分かる。この身軽な生き方を真似ようと思っても、現在の川はさらに死に体なのか?
4位
ティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』

1994年5月 文春文庫 900円
内容紹介:ヴェトナム戦争、テロル、反戦運動……我々は何を失い、何を得たのか? 六〇年代の夢と挫折を背負いつつ、核の時代の生を問う、いま最も注目される作家のパワフルな傑作長篇小説。
100字レビュー:核戦争に備えて庭に穴を掘る男。この時代にあって危機感をもつ「正常さ」を問う大長編。ヴェトナム戦争と「運動」、その挫折を思い出しながら穴を掘るのだが、物語全体が深い穴の底から語られるように薄暗くクール。
5位
ポール・オースター『鍵のかかった部屋』

1993年10月 白水社Uブックス 966円
内容紹介:幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く――「優雅なる前衛」オースター、待望のUブックス化。
100字レビュー:妻と小説原稿を残して消えた友人を追ううちに溶解してゆく主人公。というニューヨーク三部作全部同じ展開じゃねぇかと思わせながら、完結編だけあって真実を求める意志が明確な長編。まっとうであるだけ結末が効く。
6位
高橋源一郎『日本文学盛衰史』

2001年5月 講談社 2625円
内容紹介:小説などに一生を捧げてよいものかね? 「いったい、何を、どう書けばよいのだ?」漱石が、鴎外が、自然主義者が浪漫主義者が、そして、近代文学の創始者たちの苦悩が、百年後の日本に奇蹟のように甦る。
100字レビュー:これまでの仕事を集大成する長編小説。田山花袋が「露骨なる描写」を求めてアダルトビデオを監督したり、明治を通して現在を切り刻むような気概に溢れている。『こころ』の謎に迫る章はそれだけで瞠目すべき論文だ。
7位
阿部和重『ニッポニアニッポン』

2001年8月 新潮社 1260円
内容紹介:俺の人生に大逆転劇を起こす! インターネットで武装し、暗い部屋を飛び出た引き籠り青年は、いかにしてニッポンに叛逆したのか? 国家の象徴トキをめぐる「ニッポニア・ニッポン問題の最終解決」計画とは何か? 名作『インディヴィジュアル・プロジェクション』を超える先鋭的な知的興奮と白熱する物語のスリルが我々を挑発する!
100字レビュー:トキを密殺することで「ニッポン」を問い直そうとする長編。歪んだナショナリズムと的外れのテロリズムに、インターネット時代がうまくはまってる。引きこもりストーカーな主人公の偏執的な造形が著者らしくていい。
8位
田口ランディ『コンセント』

2001年11月 幻冬舎文庫 630円
内容紹介:ある日、アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いで以来、朝倉ユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになった。兄はなぜ引きこもり、生きることをやめたのか。彗星のごとく出現し、各界に衝撃を与えた小説デビュー作。2000年6月に単行本で刊行、ついに文庫化。
100字レビュー:引きこもりの末に死んだ兄の謎を追い「コンセント」という鍵に翻弄される長編。セックスの全能感でどっと疲れるけれど、人間の壊れ方の描出は丁寧で新鮮。新しいOSって話もいいし。ラストの覚醒ぶりには賛否両論か?
9位
小林恭二『首の信長』

2000年5月 集英社 1890円
内容紹介:妖しい性的魅力に溢れた織田信長の首。アクシデントから歴史を守ろうとする、未来からの歴史管理局員の努力も虚しく、何度も首を狙われて!? 表題作他、鬼才の抱腹絶倒ユーモア日本史物語集。
100字レビュー:歴史管理人のミスから運を失くした信長。何度リセットしてもその首はあっさりはねられる。SFチックな歴史小説集で、ドタバタの中にも色気ある文章。ファンなら怒りそうな幕末の志士伝(オットセイの西郷)なんてのも。
10位
辻仁成『太陽待ち』

2001年10月 文藝春秋 1901円
内容紹介:撃たれた兄とその元恋人、記憶の中の少女を幻視する老監督……時空を超えて展開する、不可能な愛に挑む男と女のオデュッセイア。
100字レビュー:映画監督の長い愛、ヒロシマの暑い夏。ルーズマイメモリーという優しい呪文とともにあの時代の「戦争」へと遡行する長編。いろいろな記憶が重なり響きあう構成で、多様な後悔の澱で世界を「汚す」ドラマが光る大作。