読んだらすごかった本ランキング 2005 旅と現代文学。Award

2005年に読んだ90冊のなかから、これはすげぇと思った10冊。過去分

1位

村上龍『半島を出よ』

表紙

2005年3月 幻冬舎 上巻1890円、下巻1995円

内容紹介:2011年、北朝鮮「反乱軍」を名乗る特殊部隊が来襲し、福岡市中心部を制圧した。日本はこの危機をどう乗り越えるのか?現実を凌駕した近未来日本の現実を描く問題作。

100字レビュー:北朝鮮のコマンドが福岡を占拠する。政府の場当たり対応やメディアの狼狽に兵士の心情を絡めながら、国家として何が最優先事項なのかと問う。爆風ひるがえる映像美と瓦礫にきらめく希望が、この国の限界を押上げる。

選評:2005年のナンバーワンはこれでした。文句なしで。小説を読むことのヨロコビを存分に味わわせてもらいました。本気出した村上龍はやっぱりすごい。普段から本気出してくれたらいいのにね。

2位

白石一文『僕のなかの壊れていない部分』

表紙

2005年3月 光文社文庫 650円

内容紹介:出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は、驚異的な記憶力を持つ。その理由は、彼の特異な過去にあった。――生と死の分かちがたい関係を突き詰める傑作。

100字レビュー:生への強烈な諦念で近づく誰もを傷つける「僕」を、最後まで受け入れられない。でも許せるような気がする。表層を泳ぐように三人の女性と関係を続けても、それはタフネスではなくって厚い壁を築く僕らの弱さだから。

選評:文庫になってようやく読んだわけですが、読み始めの印象と読了の印象がここまで違う作品も珍しい。ヘタな教養主義と俗っぽさに途中で投げ捨てようと思ったのですが諦めないでよかったです。まだ読んでない方は、そういうものとして、投げずに読んで欲しいと思います。

3位

高橋源一郎『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』

表紙

2005年4月 集英社 2940円

内容紹介:もうひとつの「風の又三郎」や「注文の多い料理店」はどんなお話? 壊れた時間の住人たちがおくる、真夜中のヒットパレード。「すばる」で連載された「ミヤザワケンジ全集」がついに一冊に!

100字レビュー:宮沢賢治の短篇とその精神をモチーフにしながら、全く自由に飛び去る作品群。マジカルな「水仙月の四日」がすげぇ。小説で「言葉」の境界と彼岸にまで到達できるのなら賢治という触媒なんてもう必要ないんじゃない?

選評:高橋源一郎としてはパワー全開ではないですし、短篇によってクオリティ高低ありますけれど、総合的に満足度高いです。宮沢賢治読んだことありなし関係ないので安心してどうぞ。

4位

東野圭吾『秘密』

表紙

2001年5月 文春文庫 660円

内容紹介:妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。

100字レビュー:娘の体に妻の魂が宿るというオカルトな設定ながら自然体でハートフル。嫉妬や軽蔑、身も蓋もない感情も家族小説としてのそれで、だからこそ父・夫の想いがリアルに響く。父の決断(あるいは秘密)にはもちろん泣いた。

選評:つい最近、映画化されたものも観たんですが、やっぱり泣いてしまいました。ベタベタなエンタメですが。

5位

川崎徹『彼女は長い間猫に話しかけた』

表紙

2005年5月 マドラ出版 1470円

内容紹介:-

100字レビュー:絞りすぎ乾燥させすぎでカラカラな文章の多い氏の小説にあって、父の死に思いを馳せる表題作は特異な突き抜け方。満ちて溢れるままの感情で読者を流し去るような、ある意味正攻法の作品。併録作はいつも通りだけど。

選評:作家として語られることのほとんどない人ですが、意外にぐっと来ますよ。とりあえず表題作だけでも読んどけ。

6位

藤沢周『焦痕』

表紙

2005年2月 集英社 1680円

内容紹介:焼け焦げた記憶から立ち上る友人の不確かな死の謎を描く表題作をはじめ、登場人物の奇妙な連鎖を通じて、全11編がウロボロスの蛇のように絡み合う、気鋭の芥川賞作家が放った連作短編集。

100字レビュー:すれ違う他人に次々カメラが渡されていく連作短編だが全部同じ人間に見える。誰だって焦げた執着を抱えて鏡に唾吐いてるからな。円環にすることで出口さえ奪う非情さで「持て余された自分」の向き先を教えてくれる。

選評:藤沢周は作品のトーンがどれも似通っていたりします。そのなかでも割と成功してる作品です。

7位

平野啓一郎『葬送』

表紙

2005年7〜8月 新潮文庫 第一部上・下巻各540円、第二部上・下巻各660円

内容紹介:ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ社交界に現れたポーランドの音楽家ショパン。その流麗な調べ、その物憂げな佇まいは、瞬く間に彼を寵児とした。高貴な婦人たちの注視の中、女流作家ジョルジュ・サンドが彼を射止める。彼の繊細に過ぎる精神は、ある孤高の画家をその支えとして選んでいた。近代絵画を確立した巨人ドラクロワとショパンの交流を軸に荘厳華麗な芸術の時代を描く雄編。

100字レビュー:激動するパリを舞台にショパンとドラクロワ、二人の天才を追う大作。物語的には大味なんだけれども、気が遠くなりかけるたびに目覚しい比喩で引き戻される。特に演奏会では美しすぎる描写に感嘆。この文章力は本物。

選評:長すぎだし読み通すのにかなり体力を使います。でも体力を使っただけの充足感があります。

8位

角田光代『真昼の花』

表紙

2004年8月 新潮文庫 420円

内容紹介:行方不明の兄を追うようにしてアジアの国へ来た私。闇両替で所持金のほとんどを失い、一日パン一個で食いつなぎ、安宿をシェアして、とうとう日本企業の前で物乞いを……。帰る気もなく、行くあてもなく、いったい今ここで何をしているのか。それでも、私はまだ帰らない、帰りたくない――。若いバックパッカーの癒しえない孤独を描く表題作他一篇を収録。『地上八階の海』改題。

100字レビュー:アジアに沈没するバックパッカー「真昼の花」、母や兄の平凡な生活に苛立つ「地上八階の海」。世間に馴染めず社会から黙殺される自分を断罪するふりで、正しいのは私のほうだという裏の思いが今風に息苦しくて凄惨。

選評:人の心の嫌な部分を増幅してみせる角田光代のこだわりがうまく昇華された作品。

9位

宮本輝『天の夜曲 流転の海第四部』

表紙

2005年4月 新潮文庫 780円

内容紹介:昭和31年、熊吾は大阪の中華料理店を食中毒事件の濡れ衣で畳むことになり、事業の再起を期して妻房江、息子伸仁を引き連れ富山へ移り住む。が、煮え切らない共同経営者の態度に、妻子を残して再び大阪へ戻った。踊り子西条あけみと再会した夜、彼に生気が蘇る。そして新しい仕事も順調にみえたが……。苦闘する一家のドラマを高度経済成長期に入った日本を背景に描く、ライフワーク第四部。

100字レビュー:富山に越した母息子と、大阪を拠点に中古車業を起こす父。強い意志で運をなぎ倒してきた熊吾に運命が反撃と押し寄せる。踊り子あけみのエピソードはその狼煙か。年を取り、力の衰えも見える独り言の痛々しさが魅力。

選評:全六部作(になる予定)の4作目。ここまで来たら最後まで読ませてください。

10位

舞城王太郎『煙か土か食い物』

表紙

2004年12月 講談社文庫 580円

内容紹介:腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが? ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー! 故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った第19回メフィスト賞受賞作。

100字レビュー:名医にして名探偵の俺が連続主婦生き埋め事件をズバッと解決! 飛躍や投げ捨てが多くて何でもアリ(ドラえもん?)を爆走する謎解きも、母親が二郎に包丁を向けるシーンだけで許せる。暴力耐性ないとキツイとは思う。

選評:デビュー作。めちゃめちゃですが、それが気持ちよかったりすることがあります。