池澤夏樹の100字レビュー(1998〜)

池澤夏樹書評ページ

『むくどりとしゃっきん鳥』

表紙

発行
1998年5月 朝日新聞社 221頁 絶版 購入
発行
2001年4月 朝日文庫(『むくどりの巣ごもり』の後半・『むくどり最終便』と合本、『むくどり通信 雌伏篇』として) 519頁 1050円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ドリーム・キャッチャー / 努力と習慣 / ホックニーごっこ (ほか)
評価
★★★

「借金返しちくりー!」と鳴く鳥。らしくない「しちくり」口調で幻惑させつつも、きちんとその鳥の生態を調べて教えてくれる安心の池澤節第五弾。基地問題も多いが、もちろん自然科学系も多いからね、このシリーズ。

『室内旅行 池澤夏樹の読書日記

表紙

発行
1998年7月 文藝春秋 292頁 絶版 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
室内旅行 / 言葉の職人と木の職人と / ケーキと春画 (ほか)
所要
4時間10分
評価
★★★

「本を読む人は室内にいるままで既に旅人である」という前段から始まる書評集。旅に関する本をということでもないのでいくつもテーマがあるのだが、これだけ幅広いジャンルの書を生活実感で語れるのはすごい博識だ。

『メランコリア』

表紙

発行
1998年11月 光琳社出版 76頁 絶版 購入
共著
絵:阿部真理子
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
メランコリア
評価
★★★

アメリカンテイストのイラストにポエトリー。大事な女の子がどっか行っちゃって、探す旅が楽しくなってきちゃって、初めから居なかったような気もしてきちゃって。テンポよくって一息に読めるんだけど後で色が残る。

『読書癖4』

表紙

発行
1999年4月 みすず書房 260頁 2100円 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
文芸時評一九九六年四月 / 五月 / 六月 (ほか)
評価
★★★

とりあえずこれで終了となる4冊目。文芸時評をやるにあたって「文芸時評はまだ可能か」と考察してしまうのが著者流。半分が時評で残りが通常の書評。『てるりん自伝』とか彼だから論じられる本はまだ多くあるはず。

『むくどり最終便』

表紙

発行
1999年5月 朝日新聞社 213頁 絶版 購入
発行
2001年4月 朝日文庫(『むくどりの巣ごもり』の後半・『むくどりとしゃっきん鳥』と合本、『むくどり通信 雌伏篇』として) 519頁 1050円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
誰か故郷を思わざる / 名護親方の教え / 馬毛島を提案します (ほか)
評価
★★★★

「普天間飛行場移転先私案」として実現可能な実際の地名を出しているのはすごい。胸を張って沖縄の特異点とその誇りを体現している。「自分がやるべき仕事」というような意欲のため連載エッセイもこんなに色を持つ。

『花を運ぶ妹』

表紙

発行
2000年4月 文藝春秋 421頁 絶版 購入
発行
2003年4月 文春文庫 459頁 760円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
1 カオル / 2 哲郎 / 3 カオル (ほか)
評価
★★★★

麻薬ではめられ捕まった兄を救うため妹はバリ島へ飛ぶ。妹の西欧的感覚をほぐしてゆくアジアの風土と、画家たる兄が見出す画布に落としきれない色彩が重層的に描かれる。このタイトルが効いてくる後半が非常によい。

『すばらしい新世界』

表紙

発行
2000年9月 中央公論新社 591頁 2415円 購入
発行
2003年10月 中公文庫 723頁 1100円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
沖縄へ行こう / 日常生活の原理 / 社内の雰囲気 (ほか)
所要
6時間40分
評価
★★★★

技術系サラリーマンがネパール奥地で単身、発電用の小さな風車を設置する話。チベット仏教や民族問題にまで触れながら見つけるものは身の丈にあった社会経済の試論で、説法臭さを全開にしても風車はしなやかに回る。

『カイマナヒラの家』

表紙

発行
2001年3月 ホーム社/集英社 213頁 1890円 購入
発行
2004年2月 集英社文庫 199頁 620円 購入
共著
写真:芝田満之
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
神様に着陸を禁じられた飛行機 / すべてのはじまり / カイマナヒラの家 (ほか)
評価
★★★★

ハワイイの家に入れ替わり暮らす若者たち。サーフィン賛歌も淡い恋心も悔恨も、全部この島の歴史のように受け止める家。ヒッピー的な時代恋慕に陥ることなく、それでもきっぱり懐かしい。波の音が聞こえる静けさだ。

『この世界のぜんぶ』

表紙

発行
2001年6月 中央公論新社 ?頁 1470円 購入
発行
2004年11月 中公文庫 ?頁 680円 購入
共著
絵:早川良雄
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
春 / 夏 / 秋 (ほか)
所要
0時間30分
評価
★★★

小説より先に詩を書いていた著者だが、こうした正統的な詩集は多くはない。思索的な色が並ぶんじゃないかと思いながら読むと意外と諧謔が見える。自然観察の目線も初々しさを湛えているので、懐かしい明るさがある。

『新世紀へようこそ』

表紙

発行
2002年3月 光文社 397頁 1470円 購入
NDC
316(政治>国家と個人 宗教 民族)
目次
「しかし」について / 作戦名 / 憲法前文 (ほか)
評価
★★★

米テロ事件から始まったメールコラムを集めたもの。テロに戦争、彼らの思惑、日本の立ち位置など「しかし」から話し始める論調は強固。単純な怒りだとか無力感ってのともまた違うんだよね。読者の反応も収録してる。

『イラクの小さな橋を渡って』

表紙

発行
2003年1月 光文社 87頁 1000円 購入
発行
2006年2月 光文社文庫 89頁 480円 購入
共著
写真:本橋成一
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
イラクの小さな橋を渡って
所要
0時間30分
評価
★★★

戦争前夜のイラクを写真も豊富に伝えるレポート。「独裁」とは無関係に普通の生活がそこにあって、彼らを殺す権利が誰にあるのだ?というシンプルな問いかけだ。論理が届かない場所で戦争は行われるわけだけれども。

『憲法なんて知らないよ というキミのための「日本の憲法」

表紙

発行
2003年4月 ホーム社/集英社 143頁 品切 購入
発行
2005年4月 集英社文庫 213頁 500円 購入
NDC
323(法律>憲法)
目次
第一章 天皇 / 第二章 戦争の放棄 / 第三章 国民の権利と義務 (ほか)
所要
1時間
評価
★★★

池澤が易しく訳しなおした憲法。九条の意義や改憲論など主張や想いはひとまず置いて、憲法に何が書いてあったのかは正しく理解しておきましょうという試み。こんなに短かったんだっけ?と驚いたりすること請け合い。

『世界のために涙せよ 新世紀へようこそ2

表紙

発行
2003年6月 光文社 362頁 1575円 購入
NDC
316(政治>国家と個人 宗教 民族)
目次
見えない戦争 / ものを買わない日 / 軍事法廷 (ほか)
所要
4時間40分
評価
★★★

アフガン、イラクへの侵略によってアメリカがどういう国であるのかが明白になったこの世界で、取るべきスタンスについて。平和を求める実直な声明だ。その根源と解決策について「利子」から論じた項は読み応えあり。

『神々の食』

表紙

発行
2003年8月 文藝春秋 154頁 1800円 購入
発行
2006年6月 文春文庫 187頁 700円 購入
共著
写真:垂見健吾
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
匂い立つ豆腐 / グルクンの大変身 / 滴る透明な液体 (ほか)
所要
2時間
評価
★★★

沖縄そばやイラブー、「アイスクリン」とか沖縄の食の魅力を存分に。「食べる」より「獲る」「作る」「育てる」に比重がある分、口にしたときの期待感を高める文章になってる。沖縄行って味わってみなきゃって焦る。

『静かな大地』

表紙

発行
2003年9月 朝日新聞社 629頁 2415円 購入
発行
2007年6月 朝日文庫 670頁 1050円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
煙の匂い / 最初の夏 / 鮭が来る川 (ほか)
評価
★★★

北海道に入植した元士族がアイヌと共に牧場を開く、成功と失敗の日。複数の話者によって広がるサーガが物語を聴く楽しみとなる。人と自然を考える静かな怒りの長編。何故僕らはそんなに異民族が怖かったんだろうな?

『パレオマニア 大英博物館からの13の旅

表紙

発行
2004年4月 集英社インターナショナル 364頁 品切 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
ギリシャ篇 / エジプト篇 / インド篇 (ほか)
所要
5時間50分
評価
★★★★★

大英博物館の展示物に魅入られ、その歴史を邂逅して在りし地へ旅立つ。「専門家の手前、観光客の先」での掘り下げ方が絶妙にロマンをかきたてる文明論。同じパレオマニア(古代妄想狂)として旅に出たくって堪らない。

『アマバルの自然誌 沖縄の田舎で暮らす

表紙

発行
2004年6月 光文社 249頁 2100円 購入
発行
2007年6月 光文社文庫 252頁 650円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
サシバの冬 / 名前がわからない / 春から夏へ (ほか)
所要
2時間40分
評価
★★★

沖縄の安間原に暮らし、図鑑で調べたり顕微鏡を覗いたりする自然観察日記。文字通りの花鳥風月が全部入ってる。もっと正確に言えば花鳥風月虫虫虫。それも蜘蛛に百足に芋虫毛虫の類に研究熱心で、うっと来る写真も。

『きみのためのバラ』

表紙

発行
2007年4月 新潮社 211頁 1365円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
都市生活 / レギャンの花嫁 / 連夜 (ほか)
所要
3時間
評価
★★★★

ヘルシンキ、バリ、メキシコなどを舞台に描かれる巡りあいの短編集。不案内な土地で交流が生まれる瞬間だけを切り取っていて「ここで?」ってところでスパンと終わるのだが、それがまた醸し出す独特の情感は匠の技。

池澤夏樹書評ページ