いとうせいこうの100字レビュー(1995〜)

いとうせいこう書評ページ

『秘見仏記』

表紙

発行
1995年4月 中央公論新社 315頁 絶版 購入
発行
1999年1月 角川文庫(『見仏記2 仏友篇』と改題) 332頁 760円 購入
共著
共著:みうらじゅん
NDC
718(彫刻>仏像)
目次
滋賀 西野薬師堂・赤後寺・彼岸寺 / 滋賀 小谷寺・石道寺・己高閣・世代閣・知善院 / 京都 東寺・仁和寺・法金剛院 (ほか)
評価
★★★★

仏像を訪ねる男2人旅(ホモのように)第2弾。お遍路ーラーとしての四国巡礼、鎌倉の大仏、佐渡の朽ちる仏。セクシーなブツに文字通りの愛情を感じているのだろう、知識がありながらも感情最優先の語り口調が楽しけだ。

『波の上の甲虫』

表紙

発行
1995年4月 求龍堂 159頁 品切 購入
発行
1998年8月 幻冬舎文庫 213頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 10月4日 火曜日 / 第二章 10月5日 水曜日 / 第三章 10月6日 木曜日 (ほか)
評価
★★★★

奇妙な長編。南国でバカンスを過ごす作家の日常と彼の描く物語の生活が何度も裏返る。現実と虚構を激しく行き交いながら結局現実なんてどこにもないんだと言っているようだ。さすがいとうせいこう、コンセプトの鬼。

『スキヤキ』

表紙

発行
1995年9月 集英社 282頁 絶版 購入
NDC
596(家政学・生活科学>食品 料理)
目次
上を向いて食べよう / 紳士荘のチョコ味噌 / ざらめルーレットによる審判 (ほか)
評価
★★★

「スキヤキを答えとする問い」を求めての全国行脚。というより日本一おいしいスキヤキを求めての高級店めぐり。全面的に「とろける肉」に自分も食べたくなること必至だ。スキヤキストたる著者、いい仕事してますね。

『マルクス・ラジオ』

表紙

発行
1995年11月 角川書店 385頁 絶版 購入
NDC
932(英米文学>戯曲)
目次
第一話 初仕事・奥様大尾行の巻 / 第二話 家賃騒動の巻 / 第三話 遺産はばっちりいただきの巻 (ほか)
評価
★★★

マルクス・ブラザーズ主演、1930年代のラジオコメディを訳出編集。元の英文が思い浮かばないほどこなれた駄洒落の嵐と、右往左往するだけのナンセンスな展開。古びれはしてないし笑えるのだが、少々疲れるかもです。

『世紀末は世紀末か』

表紙

発行
1995年11月 早川書房 266頁 品切 購入
共著
共著:赤間啓之
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
世紀末は世紀末か
評価
★★★

哲学者赤間との対談集。「ラカン」という接点を中心に、現代哲学を道具として揺れ動く世界の消失点を探る。ここでいう「世紀末」という意義も、理論家たるいとうらしくてよい。実は内容よく覚えてないんですけどね。

『豊かに実る灰』

表紙

発行
1996年6月 マガジンハウス 246頁 絶版 購入
共著
占:マドモアゼル朱鷺
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 RETREAT / 第二章 いたずらか、もてなしか / 第三章 鬼魂越獄 (ほか)
評価
★★★★

占い師が切り出したタロットカードが暗示する未来を、作家のインスピレーションで小説化した連作短編。不確定な過去と、想い出のような未来が軋む音調。重苦しい「物語り」はどれだけ現実と寄り添いうるのだろうか?

『そんなにまでして』

表紙

発行
1996年8月 世界文化社 206頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
90年代前半の大衆行動分析A / 対談 いとうせいこうvs香山リカ1 / 90年代前半の大衆行動分析B (ほか)
評価

「深読み博士」が90年代前半の流行を解き明かすエッセイ。カラオケ、ヘア・ヌード、ぬいぐるみなど。が、ちょっと手を抜きすぎだという気もする。香山リカ・ナンシー関との対談もあり、香山との精神病理談は面白い。

『岩だらけの懐かしい星』

表紙

発行
1996年10月 角川書店 237頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
岩だらけの懐かしい星 / 破天荒なロバ
評価
★★★

明治期のペルー移民として生きた女性を描くノンフィクション。運命の糸に手繰られた奇妙な生涯。事実を正確に伝えるためにかストレートな文体となっている著者では特異な作。巻末には彼女をモデルにした短編小説も。

『去勢訓練』

表紙

発行
1997年10月 太田出版 161頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
その1 性交写真 / その2 CLOSET / その3 シングル・オルガスムス (ほか)
評価
★★★★

エロティックな短編集。本気で官能小説をやっている。写真を撮られて興奮する女、別れた妻の服を着てもだえる男。文脈は違うけれど村上龍『トパーズ』みたいなイメージ。倒錯していることでなんとか生き延びている。

『見仏記 海外篇』

表紙

発行
1998年2月 角川書店 317頁 品切 購入
発行
2000年8月 角川文庫(『見仏記3 海外篇』と改題) 318頁 600円 購入
共著
共著:みうらじゅん
NDC
718(彫刻>仏像)
目次
韓国 梵魚寺、通度寺 / 韓国 仏国寺、石窟庵、慶州博物館 / 韓国 四面石仏、栢栗寺、拝里三体石仏、鮑石亭址 (ほか)
評価
★★★

ついに海外へ飛び出した仏像マニア二人組。仏教伝来のそのルーツを探る旅は韓国・タイ・中国、そしてインドへ。百点満点の仏は中国五台山にあった!と叫ばれると旅支度したくなるが、個人的にはタイの廃寺が見たい。

『ダンシング・オールナイト 〜グルーヴィーな奴らを探せ!

表紙

発行
1998年3月 NTT出版 296頁 絶版 購入
共著
共著:押切伸一・桜井圭介
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
第1章 ショーコーじゃ踊れない / 第2章 武道の身体はすべてに通ず / 第3章 グルーチョ・マルクスは今世紀最高のダンサーである (ほか)
評価
★★★

麻原ってグルーヴしてないよな、と「ダンスしているかどうか」(「生き生きしているかどうか」)を中心軸に現代文化を語った鼎談集。などと読んではいけないらしい。なるほどパントマイムとか韓国舞踊も出てくるしな。

『ボタニカル・ライフ 植物生活

表紙

発行
1999年3月 紀伊国屋書店 273頁 1890円 購入
発行
2004年3月 新潮文庫 399頁 620円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
1996年 / 1997年 / 1998年 (ほか)
評価
★★★

サイト上で書き継がれた植物達との生活日誌。シャコバサボテンの短日処理に燃え、アマリリスに愛を打ち明け、コーヒーの収穫を夢見る、ガーディナーならぬ「ベランダー」。いいね、花のある都会生活。後書きには涙。

『禅絵魂 是は何ぞ。

表紙

発行
2000年3月 小学館 197頁 絶版 購入
共著
共著:川崎ぶら
NDC
726(絵画・書道>漫画 挿絵 童画)
目次
一画 / 二画 / 三画 (ほか)
所要
1時間20分
評価
★★

ビックコミックスピリッツ連載、意味のない筆跡に加筆して意味を浮かび上がらせる遊び。流麗だったり下ネタだったりする見立てが楽しい。いとうと川崎の役割は?と言えば一般人のボケに対するツッコミということで。

『他流試合 兜太・せいこうの新俳句鑑賞

表紙

発行
2001年4月 新潮社 261頁 絶版 購入
共著
共著:金子兜太
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
俳句は「切れのかたまり」なり / 定型は「スピートを得るための仕組み」なり / 「新俳句」の新しさはここにあり (ほか)
評価
★★★

「伊藤園新俳句大賞」から現在の俳句状況を巡る対談。切れと韻律の重要性を語れば、当然日本語全体が見えてくる。いまだ「日本語ラップの祖」の文脈で定型詩の秘密を発見してしまういとう氏。韻はこんなに深いのか。

『見仏記 親孝行篇』

表紙

発行
2002年11月 角川書店 249頁 1575円 購入
発行
2006年1月 角川文庫(『見仏記4 親孝行篇』と改題) 262頁 540円 購入
共著
共著:みうらじゅん
NDC
718(彫刻>仏像)
目次
奈良 如意輪寺・竹林院・桜本坊・金峯山寺 / 奈良 大野寺・室生寺 / 京都 鞍馬寺 (ほか)
評価
★★★★

両親を連れて、さらにテンションを上げる仏像見物記。「友人の親」という居心地の悪さも気恥ずかしさも飲み込んで、美しい仏の前で言葉を失くす一行。親孝行っていいねぇ。句を詠まれちゃった日にはしみじみするね。

『文芸漫談 笑うブンガク入門

表紙

発行
2005年7月 集英社 253頁 1680円 購入
共著
共著:奥泉光/渡部直己
NDC
904(文学>論文集 評論集 講演集)
目次
プロローグ イロニー行きのモノレール / 第1章 職業作家で行こう! / 第2章 小説的グループ (ほか)
所要
3時間50分
評価
★★★

客の前で漫談形式で文学を語ると。変なスタイル思いつくものだ。暗黙のコードだとか「言葉は屈折する」だとか、もっと説明が要るところが場において流れちゃっててしかも笑えるネタでもなかったり、やや苦しいかな。

『職人ワザ!』

表紙

発行
2005年8月 新潮社 204頁 1365円 購入
発行
2008年3月 新潮文庫 256頁 460円 購入
NDC
502(技術・工学>技術史 工学史)
目次
扇子職人の幾何学―『文扇堂』荒井修 / 文字の生命力―『文字プロ』橘右之吉 / 手ぬぐいに風を感じる―『ふじ屋』川上千尋 (ほか)
所要
3時間20分
評価
★★★

手ぬぐいにパイプにかりんとう、下町の職人たちに話を聞いて歩いたルポ。それぞれの技術よりは江戸っ子の「粋」に迫ってる。扇子職人の口から「アルチザンの集合体」なんて言葉が出てきたりしても驚いちゃいけない。

いとうせいこう書評ページ