大江健三郎の100字レビュー(すべて)

大江健三郎書評ページ

『死者の奢り』

表紙

発行
1958年3月 文藝春秋 303頁 絶版 購入
発行
1959年9月 新潮文庫(2編を追加、『死者の奢り・飼育』と改題) 270頁 460円 購入
発行
1987年3月 文藝春秋(新装版) 303頁 品切
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
死者の奢り / 他人の足 / 飼育 (ほか)
評価
★★★★

最初期にあたる短編集。黒人兵を獣のように飼う「飼育」ほか、粘膜質の厚い壁の中で暮しながら、決してそこから逃亡しようとしない僕たちの抉れ方。ぼんやりとした苛立ちを澱のように溜めながら見つめるその眼の先。

『芽むしり仔撃ち』

表紙

発行
1958年6月 講談社 245頁 絶版 購入
発行
1960年1月 講談社ミリオンブックス 256頁 絶版 購入
発行
1962年1月 角川文庫 187頁 絶版 購入
発行
1965年5月 新潮文庫(改版) 187頁 420円 購入
発行
1970年1月 講談社現代文学秀作シリーズ 235頁 絶版 購入
発行
1994年10月 講談社(新装版) 245頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 到着 / 第二章 最初の小さな仕事 / 第三章 襲いかかる疫病と村人の退去 (ほか)
評価
★★★★

感化院の少年たちが疎開した山里に疫病が発生、村人たちに見捨てられ閉じ込められたできそこないたちの絶望と怒り。この柔軟な(それゆえ壊れることのない)壁の圧迫感と陰鬱さを楽しめる人には割と読みやすいだろう。

『見るまえに跳べ』

表紙

発行
1958年10月 新潮社 252頁 絶版 購入
発行
1974年5月 新潮文庫 367頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
奇妙な仕事 / 動物倉庫 / 運搬 (ほか)
所要
5時間20分
評価
★★★

動物が殺されすぎる前半からロシア文学みたいに饒舌な後半へと色合いがグラデイトしていくのだが、変化のない道を歩くのに疲れた滞留感がある。中段に置かれた表題作も低い雲と湿壁がどこにも逃げ場がないと囁いて。

『性的人間』

表紙

発行
1963年6月 新潮社 231頁 絶版 購入
発行
1968年4月 新潮文庫(1編を追加) 236頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
性的人間 / セヴンティーン / 共同生活
評価
★★★

表題作後半の命を賭した痴漢ぶりは明らかに犯罪なんだけれども、倫理道徳に楔を打つ作品のありかたを越えて「自分もこうしちゃいられない」気分にさせる。あるいは彼のように「性的」には生きられないという確認か。

『個人的な体験』

表紙

発行
1964年8月 新潮社 ?頁 絶版 購入
発行
1981年2月 新潮文庫 258頁 500円 購入
発行
1994年11月 新潮社(新装版) 251頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
個人的な体験
所要
4時間10分
評価
★★★

頭部に異常をもって生まれた子供の死を願いながら、逃亡を続ける鳥。作家としての向き先を決定付けた長編。重いテーマを背負ってしまったのがこの一作で瞭然だが、腐臭を放つその心から目を背けないのは足腰の強さ。

『万延元年のフットボール』

表紙

発行
1967年9月 講談社 393頁 絶版 購入
発行
1971年7月 講談社文庫 422頁 絶版 購入
発行
1988年4月 講談社文芸文庫 491頁 1575円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
死者に導かれて / 一族再会 / 森の力 (ほか)
評価
★★★★★

「乗越え点」たる長編。自死の朱色、万延元年の一揆を再現する陰鬱な祝祭じみた暴動、四国の森の土俗的高揚感、「反社会的な結束」。穴の中へ梯子を降りて行く暗闇が最後まで晴れない。重すぎる荷にヤラれるばかり。

『ピンチランナー調書』

表紙

発行
1976年10月 新潮社 370頁 絶版 購入
発行
1982年3月 新潮文庫 431頁 740円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 戦後草野球の黄金時代 / 第二章 幻の書き手が起用される / 第三章 しかしそれらは過去のことだ (ほか)
評価
★★★

被爆した原発技師の父と、障害をもって生まれた息子が「転換」する。その哄笑的(ha、ha)超自然さを飲み込んで革命的集団に巻き込まれてゆくのだが、これは「道化」なんだろうか? 貪欲にナンセンスを求めるが故に?

『同時代ゲーム』

表紙

発行
1979年11月 新潮社 493頁 絶版 購入
発行
1984年8月 新潮文庫 592頁 820円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一の手紙 メキシコから、時のはじまりにむかって / 第二の手紙 犬ほどの大きさのもの / 第三の手紙 「牛鬼」および「暗がりの神」 (ほか)
評価
★★★

創世期から現代まで包含して洪水のように流し去る村=国家=小宇宙の歴史。神話の伝承者と宿命付けられた男と、巫女にも娼婦にもなる双子の妹が時間の混沌へジャンプする。厚いけれど、個々の挿話も民族学的に厚い。

『「雨の木」を聴く女たち』

表紙

発行
1982年7月 新潮社 288頁 絶版 購入
発行
1986年2月 新潮文庫 315頁 500円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
頭のいい「雨の木」 / 「雨の木」を聴く女たち / 「雨の木」の首吊り男 (ほか)
評価
★★★★

雨の木(レイン・ツリー)という暗喩に仮託した連作。結果的に連作という形になったのだという嘘も、形を変えながら繰りかえされる死の葉陰からこの結末にたどり着くために重要な布石だろう。雨、南国に降る雨の温度。

『宙返り』

表紙

発行
1999年6月 講談社(上) 454頁 2310円 購入
発行
1999年6月 講談社(下) 477頁 品切 購入
発行
2002年6月 講談社文庫(上) 527頁 絶版 購入
発行
2002年6月 講談社文庫(下) 568頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 犬のような顔の美しい眼 / 第一章 百年 / 第二章 再会 (ほか)
評価
★★★

オウムを目撃したうえでの宗教物語。信者を裏切って「宙返り」した師匠と案内人が10年を経て世に打って出る。救いを求める人の心に何の言葉が必要か。再生する集団の絆が揺れあるいは凝縮されてゆく過程が鮮やかだ。

『取り替え子(チェンジリング)』

表紙

発行
2000年12月 講談社 342頁 1995円 購入
発行
2004年4月 講談社文庫 388頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 田亀のルール / 第一章 Quarantineの百日(一) / 第二章 「人間、この壊れやすいもの」 (ほか)
所要
5時間
評価
★★★

もちろんそんなとこに留まってる小説ではないんだけど、義兄・伊丹十三の自死を主題に、現実に同定可能な事象が並んでて、どうしてもなぞって読む。そうすると松山の回想エピソードを理解しそこねてしまうんだよな。

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