穂村弘の100字レビュー(1990〜2006)

穂村弘書評ページ

『シンジケート』

表紙

発行
1990年10月 沖積舎 117頁 絶版 購入
発行
2001年2月 沖積舎(新装版) 119頁 品切 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
シンジケート / こわれもの / 桃から生まれた男 (ほか)
所要
1時間
評価
★★★

第一歌集。すっと降りてくることがなくて、必ず屈折が入ってるんだよね。屈折を曲がるたびに別の風景がやってくる。見たことのない風景を呼び起こす力がどの歌にもあるなんてすごいこと。眩暈するようなカラフルさ。

『ドライ ドライ アイス』

表紙

発行
1992年11月 沖積舎 101頁 品切 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
ノー・ホイッスル / いちばん速い鳥より速く / 夏時間 (ほか)
所要
0時間30分
評価
★★★

第二歌集。夜の歌が多いせいで全体的に冷たくしんとしてる。張り詰めた首都高、振り仰ぐ星空、ロマンティストたちの見る夢。良くも悪くも古い時代の青春映画みたいだ。それも嫌味じゃなくてちゃんと奇抜な美意識で。

『いじわるな天使から聞いた不思議な話』

表紙

発行
1994年10月 大和書房 142頁 絶版 購入
発行
2005年9月 アスペクト(『いじわるな天使』と改題) 148頁 1365円 購入
共著
絵:安西水丸
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
宇宙船で女の子をいじめる方法 / 逆サンタクロースの悲劇 / ミスターカシスの道化師捜し (ほか)
所要
0時間40分
評価
★★★

可愛らしくて残酷なショートストーリーズ。あるいは詩。ファンタジーの仕立て自体は先人達の影響を容れた平凡さなのだが結句は無責任に軽い(なにしろいじわるな天使だから)。言葉の選び方が光ってるので後味が良い。

『ぞうのうんこ』

表紙

発行
1997年5月 エディションq 40頁 1050円 購入
共著
絵:東君平
NDC
726(絵画・書道>漫画 挿絵 童画)
目次
ぞうのうんこ
所要
0時間10分
評価
★★★

「サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい」。そんないかした短歌と、モノトーンの切り絵が組み合わさった絵本。中途半端なノスタルジーが新鮮さではあるけれど、新作は入ってないアイテム。

『短歌という爆弾 今すぐ歌人になりたいあなたのために

表紙

発行
2000年3月 小学館 255頁 1575円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
導火線―最高の爆弾作りをめざして / 製造法―「想い」を形にするためのレッスン / 設置法―短歌をいつ・どこで爆発させるか (ほか)
所要
3時間20分
評価
★★★★

読むだけで生きる勇気が湧く不思議な短歌教本。煮えた感情を腐らす前に、歌を詠めばよかったんだと。出不精を押して同人にも参加したくなる。確かにこれ導火線だ。「構造図」の本格論は初心で読み砕くには重いけど。

『短歌はプロに訊け!』

表紙

発行
2000年4月 本の雑誌社 318頁 絶版 購入
発行
2005年10月 角川ソフィア文庫(『短歌はじめました。』と改題) 253頁 660円 購入
共著
共著:東直子/沢田康彦
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
クリスマス / 電話 / 傷 (ほか)
所要
4時間
評価
★★★

短歌同人誌「猫又」の歌を評する座談会。回を追うごとに同人の技術も個性もはっきりして「プロレス」なんてお題だって伸び伸びバラバラ。プロの歌にはない飛ばし方があって楽しい。穂村が「型」にうるさいのが意外。

『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) 穂村弘歌集

表紙

発行
2001年7月 小学館 109頁 1680円 購入
共著
絵:タカノ綾
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) / 手紙魔まみ、天国の天気図 / 手紙魔まみ、アイ・ラヴ・エジソン (ほか)
評価
★★★★

キュートで破滅的な「まみ」の言葉を拾うそぶりで、作者のじっとりとした闇を見せ付ける。バランスをとるだけのために置かれたような能天気な歌にしても、個々に結んだ響かせ方が上手い。かたつむりが宇宙に見える。

『世界音痴』

表紙

発行
2002年4月 小学館 189頁 1365円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
一億年後の誕生日 / 回転寿司屋にて / 豚年の年賀状 (ほか)
評価
★★★★

偽悪的ならずにこれほど自分の弱さを表明できる人を他にしらない。世界の中に入ることができない戸惑いの此岸。社員旅行でのエピソードなど同じ性向を持つ人は叫びだしたくなるはず。「僕はそうじゃない」と嘯いて。

『求愛瞳孔反射』

表紙

発行
2002年12月 新潮社 131頁 絶版 購入
発行
2007年4月 河出文庫 140頁 494円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
チョコくッキ / 月光をたよりに / ドライブスルー (ほか)
評価
★★★★

まず字面の美しさが光る。温度差の作り方もうまい。現代詩の基本に忠実でありながら、細部までラブリーなラブソングだ。「海の砂」での風の歌が聞こえる慕情と、「ぼくはノーブラ」での軽妙さの連携にやられました。

『ブルーシンジケート』

表紙

発行
2003年2月 沖積舎 38頁 1890円 購入
共著
共著:井筒啓之
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
ブルーシンジケート
所要
0時間20分
評価
★★★

『鉄道員』なども手がけたイラストレーターとのコラボレーション。既出の短歌をピックアップして沿う絵を描いているので幸せな結合が見られる。歌のポップさがより際立つ印象。本文カラーでないのが残念だけれども。

『車掌』

表紙

発行
2003年5月 ヒヨコ舎/星雲社 77頁 絶版 購入
共著
共著:寺田克也
NDC
726(絵画・書道>漫画 挿絵 童画)
目次
フォトグラフ / こどもカー / 車掌 (ほか)
所要
0時間10分
評価
★★★

詩画集。表題作は、絵も穂村作だったなら「お前この絵描きたかっただけなんちゃうんか」と叫んだに違いない小品。そんな暴力車掌は寺田氏作。ほかどの作品も極まる前に収束してしまうのだが気づけば頬が緩んでいる。

『ラインマーカーズ』

表紙

発行
2003年6月 小学館 143頁 998円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
シンジケート / ごーふる / ドライ ドライ アイス (ほか)
評価
★★★★

自選ベスト。それぞれの歌集のキーになるような歌はもれなく採録されたゆえ、物語は壊れず饒舌なままだ。歌集未収録の作品もあり、特に「手紙魔まみ」の続編となる章には新しい宇宙で生き生きと遊ぶまみの姿がある。

『回転ドアは、順番に』

表紙

発行
2003年8月 全日出版 175頁 絶版 購入
発行
2007年11月 ちくま文庫 195頁 609円 購入
共著
共著:東直子
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
遠くから来る自転車を / 青空くさいキスのはじまり / 月を見ながら迷子になった (ほか)
所要
0時間40分
評価
★★★★★

恋を歌い、愛を詩う交換詩歌集。キラキラした想いの結晶が夏の残り香を連れてくる。台所から出てきたような語彙で折り重なる呼吸の密度は軽々と現実を超える。中盤の交歓の節が完璧だから、二人の行方が涙腺に響く。

『短歌があるじゃないか。 一億人の短歌入門

表紙

発行
2004年5月 角川書店 222頁 1365円 購入
共著
共著:東直子/沢田康彦
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
きらきら / 草 / 人名を入れ込んで詠む (ほか)
所要
3時間
評価
★★★

お題で詠んだ同人歌を三人で選考評論。プロの短歌と並ぶとその感覚の飲み下し方がやはり違うのだと分かったような気になる短歌入門。それでも素人なりの瞬発力で特に「ママン」の章では背筋の寒くなる歌が高水準だ。

『もうおうちへかえりましょう』

表紙

発行
2004年6月 小学館 189頁 1470円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
曇天の午後四時からの脱出 / 存在と時間 / 煉獄、或いはツナサンド・イーター (ほか)
所要
1時間30分
評価
★★★

かっこ悪さをかっこ悪さのまま着こなしている人はかっこいい。背伸びしないって美しいことだね。「金利と歌風」という論点は狭隘にして的確だし、漫画への襟の正し方は胸に応えるものがある。すべてが等身大だから。

『現実入門 ほんとにみんなこんなことを?

表紙

発行
2005年3月 光文社 245頁 1470円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
現実だな、現実って感じ / 美しいドラえもん / <生活>といううすのろがいなければ (ほか)
所要
2時間
評価
★★★

献血、占い、合コンとこれまで怖くて逃げ回っていた「現実」を初体験してみるというドラマ。仕掛けが多いフィクション混じりのエッセイで終盤は驚愕する。人生の経験値、急激な上昇だ。笑いながらも祝福するばかり。

『本当はちがうんだ日記』

表紙

発行
2005年6月 集英社 205頁 1470円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
エスプレッソ / 現実圧 / 愛の暴走族 (ほか)
所要
1時間40分
評価
★★★★

キムタクの着た服が似合うくらいかっこよくて、エスプレッソの味が分かるほど大人な「本当の自分」。今の自分は本番じゃないと言い続けるポーズは共鳴度高くってヤラれてしまう。「タクシー乗り場にて」は目から鱗。

『にょっ記』

表紙

発行
2006年3月 文藝春秋 141頁 1300円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
にょっ記
所要
1時間
評価
★★★★

日記を模したネタ帳だな。とぼけた視点と歌人らしい言葉の乗せ方に頬が緩む。「猿をあなたに」とか使用済み定期券で作られたビルとか、毎日こんなこと考えて過ごせたら幸せですね。結婚後の余裕かね。造りも可愛い。

『課長』

表紙

発行
2006年5月 ヒヨコ舎 77頁 1365円 購入
共著
共著:寺田克也
NDC
726(絵画・書道>漫画 挿絵 童画)
目次
Robot / 課長のランチタイム / あめ玉 (ほか)
所要
0時間10分
評価
★★★

文章に絵をつけた『車掌』とは逆に、こちらは絵が先にあって、ホムラ文が後。絵がなきゃ成立しないって交感度アップ。どっちも負けてない。特に「電車の人々」なんてジャストで笑う。またロボットが可愛い飼いたい。

穂村弘書評ページ