保坂和志の100字レビュー(すべて)

保坂和志書評ページ

『プレーンソング』

表紙

発行
1990年9月 講談社 221頁 絶版 購入
発行
1996年8月 講談社文庫(『草の上の朝食』と合本、『プレーンソング/草の上の朝食』として) 470頁 絶版 購入
発行
2000年5月 中公文庫 245頁 720円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
プレーンソング
評価
★★★

何も書くことのない時代の純文学として模範的な善良さ。随所に著者の主張は現れるが、四人の共同生活たる平和な日溜り、平凡の反復が心地よい。なのでラスト間際の緊張感が吹っ飛んでる(ふりしてる)部分だけが違和。

『草の上の朝食』

表紙

発行
1993年8月 講談社 220頁 絶版 購入
発行
1996年8月 講談社文庫(『プレーンソング』と合本、『プレーンソング/草の上の朝食』として) 470頁 絶版 購入
発行
2000年11月 中公文庫 294頁 840円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
草の上の朝食
評価
★★★★

『プレーンソング』の続編で、平凡で非生産的な彼らのその後が描かれる。均質な日々を志向する主人公の(あるいは著者の)正攻法なゆるさを堪能しよう。じわりと「愛のようなもの」が現れてくるあたりは絶妙な間だし。

『猫に時間の流れる』

表紙

発行
1994年7月 新潮社 189頁 絶版 購入
発行
1997年8月 新潮文庫 232頁 絶版 購入
発行
2003年3月 中公文庫 220頁 700円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
猫に時間の流れる / キャットナップ
評価
★★★

猫小説2編。乱暴で近所の嫌われモノのノラ、クロシロ。彼にだんだん情が移っていくんだけれど「情が移った」なんて簡単に言ってしまわない人間たちとの愛すべき平穏な時間。毅然とし続けることは難しいことだよね。

『この人の閾 (いき)

表紙

発行
1995年8月 新潮社 209頁 絶版 購入
発行
1998年8月 新潮文庫 247頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
この人の閾 / 東京画 / 夏の終わりの林の中 (ほか)
評価
★★★★

丁寧に心理を追うという意味では正統的な作品集。自分の心を覗きながら生きてる人だね。適度に洗練された会話文は気持ちいいとこ突いてくる。変わった物と変わらない物を確認して鎌倉を歩く「夢のあと」が好きだな。

『季節の記憶』

表紙

発行
1996年8月 講談社 316頁 絶版 購入
発行
1999年9月 中公文庫 376頁 780円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
季節の記憶
評価
★★★★

父と息子、友人たちとの静かな稲村ガ崎。父は浮世離れしてるようでいて厳格に自己規定しているし、息子クイちゃんもその影響下にあるのだが、この関係がすごくいい。クイちゃんの純真が物語を愛らしく中和しながら。

『残響』

表紙

発行
1997年6月 文藝春秋 211頁 絶版 購入
発行
2001年11月 中公文庫 203頁 660円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
コーリング / 残響
評価
★★★

表題作ももう一編も視点の転換が目まぐるしく、油断してたら迷子になりそうになる。遠く隔たった者たちと肩を寄せ合う事は可能なのか、一人一人がいかに響き合いうるのか。そこには偶発的要素なんてないんだと思う。

『アウトブリード』

表紙

発行
1998年6月 朝日出版社 258頁 2415円 購入
発行
2003年4月 河出文庫 269頁 977円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
『愛』 / やっぱり猫のこと、そして犬のこと / 重層の時間 (ほか)
評価
★★★★

作家として事象とどう向き合っているのかがよく見えるエッセイ。だから彼の小説がしっかりした哲学に裏打ちされながらも柔らかな世界観を提供しているその理由がわかる。思考の純粋な状態はないという小論が示唆的。

『〈私〉という演算』

表紙

発行
1999年3月 新書館 203頁 1890円 購入
発行
2004年2月 中公文庫 196頁 680円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
写真の中の猫 / そうみえた『秋刀魚の味』 / 祖母の不信心 (ほか)
評価
★★★

写真の猫が実際に「いた」という感覚や、そこに滞留する記憶など、他の小説にも組み込まれるモチーフが溢れる「生の思考」。演算を繰り返すことで彼が近づこうとしてるいろんな表象は、多分一つのものなんだろうね。

『もうひとつの季節』

表紙

発行
1999年4月 朝日新聞社 156頁 絶版 購入
発行
2002年4月 中公文庫 220頁 700円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
もうひとつの季節
評価
★★★

『季節の記憶』の続編で登場人物に猫の茶々丸が加わる。子供と猫という無敵の武器を絡ませたらそれだけで微笑ましい生活が描き切れてしまうのだが、「観念的」な輪が全体をくるんでるので考えさせられる部分は多々。

『生きる歓び』

表紙

発行
2000年7月 新潮社 158頁 絶版 購入
発行
2003年9月 新潮文庫 164頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
生きる歓び / 小実昌さんのこと
所要
1時間10分
評価
★★★

びっくりするほど唐突に終わる捨て猫の話と、普通に考えればエッセイなのだが小説だという田中小実昌の想い出。生死というテーマより、主人公の心の動かし方が同じなので統一感はある。生活としての生命の思索とか。

『世界を肯定する哲学』

表紙

発行
2001年2月 ちくま新書 233頁 756円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
そもそも人間はこの宇宙に存在しなかったのではないか / 世界のモデルと視覚(1) / 世界のモデルと視覚(1) (ほか)
所要
2時間40分
評価
★★★

考え方を読者に正しく伝えようとするとどんどん難解になるのが保坂の特徴。タイトルに騙されて太陽サンサンな書物を期待すると痛い目にあう。人がいかに在るかを問い詰めた果てにある肯定を肯定することは可能かい?

『小説修業』

表紙

発行
2001年9月 朝日新聞社 213頁 1680円 購入
共著
共著:小島信夫
NDC
901(文学>文学理論 作法)
目次
リアリティ、『杜子春』、夢、猫、鬼、喜怒哀楽 / 偶然、リアリティ、『私の作家遍歴』、トルストイ、平凡なるもの / 『プレーンソング』、身をやつす、“使い尽くす”、“自然ぜんたい”、“人間ぜんたい”、トルストイ、「さらば、我ら何をなすべきか」 (ほか)
所要
2時間10分
評価
★★★

小説、文学をめぐる往復書簡。保坂の誘い水にぜんぜん応えずに別次元の話をしだす小島。深い思慮があるのかボケつつあるのかよく分からず、カフカ的な理不尽さに包まれることになる。この空回りも一種のワザと見る。

『明け方の猫』

表紙

発行
2001年9月 講談社 171頁 絶版 購入
発行
2005年2月 中公文庫 207頁 680円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
明け方の猫 / 揺籃
所要
2時間10分
評価
★★★

夢の中で猫になっていた。慣れない手足を動かしては発見する新たな知覚。思考することが目的の小説なので、猫の歩幅で読者も世界の広さを思考することになる。記憶は何に凭れる? 「揺籃」は保坂には珍しく幻惑的。

『カンバセイション・ピース』

表紙

発行
2003年7月 新潮社 410頁 1890円 購入
発行
2006年3月 新潮文庫 498頁 700円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
カンバセイション・ピース
評価
★★★

家に残る記憶と気配。人も猫もここで暮らしたという不定形な古写真がぽこぽこ沸いてくる。野球場なんかの無駄に長い細部も全部思索の速度に則っているので、読むことと考えることがイコールになるという読書体験が。

『書きあぐねている人のための小説入門』

表紙

発行
2003年10月 草思社 218頁 1470円 購入
NDC
901(文学>文学理論 作法)
目次
1章 小説を書くということ / 2章 小説の外側から / 3章 何を書くか? (ほか)
評価
★★★

元より特殊な書き方(ルール決めとか)をする作家による小説作法は、どう書けばよいかではなく「私はこう書いてます」とやっちゃうこの工法で正解。参考にできないまでも、小説がどのように捉え得るのかという幅がね。

『小説の自由』

表紙

発行
2005年6月 新潮社 360頁 1785円 購入
NDC
901(文学>文学理論 作法)
目次
第三の領域 / 私の濃度 / 視線の運動 (ほか)
所要
6時間30分
評価
★★★

小説が小説たるために必要なものについてぐるぐる考える思索集。世間並みでない「保坂の小説観」は伝わるが、アウグスティヌスをもってしても「小説とは」は分からず。このモヤモヤが大事とカフカを読んでみるか。

『途方に暮れて、人生論』

表紙

発行
2006年4月 草思社 256頁 1470円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
「生きにくさ」という幸福 / 老いることに抗わない / 家に記憶はあるか? (ほか)
所要
2時間30分
評価
★★★

著者にとって「小説を語る」ことは人生論そのものだったりするわけだが、「この社会で生きること」を考えることはやっぱり彼の小説観と同じ地平にある。とりとめない話ばかりなのに気軽にも読めないタチの悪い随筆。

『小説の誕生』

表紙

発行
2006年9月 新潮社 432頁 1995円 購入
NDC
901(文学>文学理論 作法)
目次
第二期のために書きとめて壁にピンで止めたメモのようなもの / 小説と書き手の関係 / 現代性、同時代性とはどういうことか (ほか)
所要
5時間30分
評価
★★★

『小説の自由』に続いて。相変わらず哲学的領域をぐるぐる回りながら、小説以前のモノたちから小説が産まれ得る瞬間を探す。本質に迫っていった…感はあまりないのだが、この考察によって保坂がいい小説書くんなら。

保坂和志書評ページ