花村萬月の100字レビュー(1990〜97)

花村萬月書評ページ

『ゴッド・ブレイス物語』

表紙

発行
1990年2月 集英社 210頁 1020円 購入
発行
1993年9月 集英社文庫 220頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ゴッド・ブレイス物語 / タチカワベース・ドラッグスター
評価
★★★★

伝説のハード・ブギ・バンド「ゴッド・ブレイス」。ボーカル朝子の一人称で進む物語はどこかぎこちないが、逆に生々しい性が匂っている。青春小説としてキチンとまとまっていて「デビュー作らしい」爽快さを感じる。

『重金属青年団』

表紙

発行
1990年11月 角川書店 277頁 絶版 購入
発行
1993年6月 角川文庫 298頁 504円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
重金属青年団
評価
★★★★★

クスリ漬けのブンガクさんを仲間に加え、バカスケ共は単車を北へ北へと走らせる。奇妙な人物造型と唐突な暴力、あるいはクサイ台詞。それが魅力となる不思議。なんとなく著者のイメージに近い作品だという気がする。

『屠られし者、その血によりて』

表紙

発行
1991年2月 徳間書店 253頁 絶版 購入
発行
1994年7月 徳間ノベルス(『紫苑』と改題) 238頁 780円 購入
発行
2001年10月 徳間文庫(『紫苑』として) 340頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
I 月の光 / II サマー・タイム / II 流氷 (ほか)
評価
★★★

修道院で殺人兵器として育てられた美貌の少女たる紫苑、指令通りに「神の敵」を消して行くことに疑問を感じ始める。アクション映画風に人が殺されてくのを見て楽しむべき一冊。ラストシーンは確かに絵として美しい。

『渋谷ルシファー』

表紙

発行
1991年6月 集英社 261頁 1427円 購入
発行
1994年3月 集英社文庫 291頁 510円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
俺と悪魔の / 嵐の月曜日 / 迷路の狐 (ほか)
評価
★★★★

『ゴッド・ブレイス物語』続編と言える。バーのマスター桜町とブルースシンガーの娘・映子が主役だが、実は朝子なのかも。連作という形式上、何度も振り出しに戻るような流れだが、過剰な感傷が統一感を与えている。

『聖殺人者イグナシオ』

表紙

発行
1992年1月 廣済堂出版 299頁 品切 購入
発行
1994年4月 廣済堂ブルーブックス 244頁 品切 購入
発行
1999年2月 角川文庫(『イグナシオ』と改題) 314頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
プロローグ / 第一章 檻の中 / 第二章 豚小屋 (ほか)
評価
★★★★

『ゲルマニウムの夜』の原型。修道院で育ったイグナシオは完璧な知性と容姿をもつ。衝動的な暴力と性欲、快楽主義というその作風の一端がストレートに出ている。純粋に本能のまま人を殺す者に救いはあるのだろうか?

『ブルース』

表紙

発行
1992年8月 カドカワノベルズ 362頁 絶版 購入
発行
1998年9月 角川文庫 566頁 860円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 虚しい愛 / 第一章 スラッジのブルース / 第二章 それでも、朝は、くる (ほか)
評価
★★★★★

天才ギタリストにしてドヤの住人村上。日本刀を持ったゲイ徳山。ブルースの本質を解する若い才能綾。暴力的な愛情のトライアングルが軋んだ音をたてて転がる。途方もなく重いが呼吸を忘れてしまうため一息で読める。

『真夜中の犬』

表紙

発行
1993年2月 光文社カッパノベルス 273頁 840円 購入
発行
1997年6月 光文社文庫 403頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
真夜中の犬
評価
★★★★

少年院帰りの貢は熱狂なしに暴力に身を任せる狛犬に魅かれて旅立つ。クスリを捌き、ヤクザに追われ、人を殺す。暴力を愛情表現として描き出そうとするアクションハードボイルド。必然性なく酸ヶ湯温泉ってのがいい。

『月の光 ルナティック

表紙

発行
1993年4月 廣済堂出版 294頁 絶版 購入
発行
1999年7月 廣済堂ブルーブックス 237頁 840円 購入
発行
2002年6月 文春文庫 335頁 540円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
月の光 / 終章
評価
★★

麻薬で縛られた知人を助けるため新興宗教に潜入するアクション長編。バイクで東京から丹後半島まで駆け抜けるロードノベルとしての味は、書きたい物を書いたらこうなるぜ、という見本。ハーレー好きならいけるかも。

『ヘビィ・ゲージ』

表紙

発行
1993年4月 毎日新聞社 237頁 絶版 購入
発行
1995年10月 角川文庫 233頁 441円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
歓喜の歌 / ドランカー / 狐の秋 (ほか)
評価
★★★★

短編集。どれも重くて参ってしまうのだがやはり「ナッシング・バット・ザ・ブルース」が秀逸だ。この溢れんばかりの哀しみはどうだ。怪しげなヴードゥ娼館のイメージが強力に爆ぜる。結局皆どこまでも他所者なんだ。

『永遠の島』

表紙

発行
1993年9月 学習研究社 307頁 絶版 購入
発行
1996年10月 角川文庫 312頁 525円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 / 第一部 液体ダイヤモンド / 第二部 幾億の夜 (ほか)
評価
★★★

バミューダ海域のように船が消える事件。中心となる日本海の孤島・匂島では何が起こっているのか。秘密を握る老人は驚異的な若い肉体を持っている。科学的な考察が多くまるで古きよき時代のSFのようだが、やや力技。

『紅色の夢』

表紙

発行
1993年12月 徳間書店 250頁 絶版 購入
発行
1999年4月 徳間文庫 238頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 命の鎖 / 第二章 卒業 / 第三章 フリーズドライ・シスター
評価
★★★

愛子が描き続ける紅い亀裂というモチーフ、そこには姉の性が塗りこめられている。ダ・ヴィンチやデュシャンの「美大生的」考察もありながら姉妹の絆を艶っぽく描く長編。会話文がこんなに堅いのも個性なんだろうか?

『わたしの鎖骨』

表紙

発行
1994年3月 毎日新聞社 233頁 絶版 購入
発行
2000年5月 文春文庫 251頁 510円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
わたしの鎖骨 / カオル / 秋の話 (ほか)
評価
★★★

短編集。オートバイ事故の表題作、四コマ漫画的な「カオル」、父と息子の「秋の話」などバラバラな印象ではある。眠り猫だったりもする。「加速度的にして、慣性の法則を無視して、光さえねじ曲げる」ブスが楽しげ。

『風に舞う』

表紙

発行
1994年6月 集英社 252頁 1427円 購入
発行
1998年11月 集英社文庫 265頁 500円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
そうだね / 風に舞う / けっこう、いいよ (ほか)
評価
★★★

ビル清掃の仕事をしながら本物のブルースを求める、「元」ミュージシャン。ヒロイン操の性格設定からして『ゴッドブレイス〜』の系譜。つまり彼流の青春小説アゲイン。「癌一代」のパンクな詩はやはりどうかと思う。

『セラフィムの夜』

表紙

発行
1994年9月 小学館 364頁 絶版 購入
発行
1999年1月 小学館文庫 415頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
セラフィムの夜
評価
★★★

天使のような肉体をもつ涼子と、半分韓国の血が流れる右翼山本の純愛物語。自分は何者なのかという古典的な問いを暴力とセックスに昇華する。宿命的な悲劇がニ人を結びつけている。エッジの上を歩くような危うさで。

『ジャンゴ』

表紙

発行
1995年6月 角川書店 316頁 絶版 購入
発行
2000年10月 角川文庫 315頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 地下室の光景 / 第二章 ジャンゴの誕生 / 第三章 麗子の場合 (ほか)
評価
★★★

指を失ったギタリストの失地回復と見せかけつつ、芸能という畸形を志向する長編。過剰な者たち。破壊へ向かうよりほかない麗子のようなキャラを描けるのは強み。救いがないから、堕ちることで救われたいと願うのか。

『触角記』

表紙

発行
1995年9月 有楽出版社/実業之日本社 240頁 絶版 購入
発行
2001年6月 文春文庫 262頁 530円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
触角記
評価
★★

これ勘違いする人がいないように、フランス書院かどこかの官能文庫から出したほうがいいんじゃないかなぁ。自分の「触覚」が女性に行使する影響力を通して自分を見つめるわけだけど、どう見ても平均的なポルノだよ。

『皆月』

表紙

発行
1997年2月 講談社 323頁 絶版 購入
発行
2000年2月 講談社文庫 396頁 660円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 妻が、逃げた / 第二章 ごんたろう / 第三章 幽かに酸っぱい (ほか)
評価
★★★★

妻に逃げられた冴えない男の失地回復作戦。美しくも哀しいソープ嬢との愛の暮らしでも、人間として妻を追わなければならない。松本などを経由し能登の皆月までの旅風情もある。ヤクザ者の描き方は相変わらずうまい。

『鬱 -うつ-

表紙

発行
1997年7月 双葉社 579円 品切 購入
発行
2000年6月 双葉文庫 551頁 900円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
評価
★★

一大長編。文学性を拒絶した性表現をポルノと呼ぶのなら、この作品はポルノから大きく逸脱してしまった。終盤、物語は青い文学論と哲学談義で拡散し収拾がつかなくなる。こういう時はそう、問題作と言えばいいんだ。

花村萬月書評ページ