川上弘美の100字レビュー(すべて)

川上弘美書評ページ

『物語が、始まる』

表紙

発行
1996年8月 中央公論新社 207頁 1470円 購入
発行
1999年9月 中公文庫 217頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
物語が、始まる / トカゲ / 婆 (ほか)
評価
★★★★

公園で拾った男の雛型を育てる表題作。雛型は徐々に言葉を覚えて男のようなものになってゆく。そんな怪しさ爆発の小説なのに、胸をきゅっと掴まれる。愛でも恋でもないそれに良く似た感傷を描こうとしてるようだね。

『蛇を踏む』

表紙

発行
1996年9月 文藝春秋 169頁 1050円 購入
発行
1999年8月 文春文庫 183頁 410円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
蛇を踏む / 消える / 惜夜記
評価
★★★

踏んだ蛇が女になり、部屋に住みつく。次第に彼女を「蛇に似た母のようなもの」として交わり始める。柔らかな文体で描かれる寓意のない寓話。「消える」は吉田戦車のストーリー漫画風な怪しさだが、作者は楽しそう。

『いとしい』

表紙

発行
1997年10月 幻冬舎 237頁 品切 購入
発行
2000年8月 幻冬舎文庫 258頁 560円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
いとしい
評価
★★★★

初期の不条理系方法論をそのまま拡張した長編。ミドリ子の上に黒雲のように集まる鳥だとか部分部分のイメージが鮮烈に膨らむ一方で、読後感は「いとしい」気持ちだけ。そういう意味では恋愛小説だとしか言えないね。

『椰子・椰子』

表紙

発行
1998年5月 小学館 103頁 1470円 購入
発行
2001年5月 新潮文庫(1編追加) 132頁 500円 購入
共著
絵:山口マオ
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
椰子・椰子*春 / 春の山本 / 椰子・椰子*夏 (ほか)
評価
★★★

なんでこの人は子供を畳んで押入れにしまったりできるんだ。なんでひょうたんを磨いているうちに踊りたくなれるんだ。発想がすごいというか逡巡のなさがすごい。嘘をつく時には人は多くを説明してしまうものなのに。

『神様』

表紙

発行
1998年9月 中央公論新社 194頁 絶版 購入
発行
2001年10月 中公文庫 203頁 480円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
神様 / 夏休み / 花野 (ほか)
評価
★★★★

夢の中のような(というか題材は夢そのものなんだろうな)心地よい脈絡のなさ。現在につながろうという意志がないのか、懐かしさがいっぱいで。表題作は春の日溜りと誠実なるクマが幸せな気分にさせてくれておすすめ。

『溺レる』

表紙

発行
1999年8月 文藝春秋 181頁 1300円 購入
発行
2002年9月 文春文庫 204頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
さやさや / 溺レる / 亀が鳴く (ほか)
評価
★★★★

突き出した棘に刺さりに行くようなアイヨクの表題作が痛くて好き。不条理系の短編集にも関わらず「ああこれも愛だよな」というピリピリした安堵感がそれぞれの短編にあって。このバランスの有り無しが重要だと思う。

『あるようなないような』

表紙

発行
1999年11月 中央公論新社 255頁 1890円 購入
発行
2002年10月 中公文庫 293頁 620円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
困ること / 蛇や墓や / 祭の夜 (ほか)
所要
2時間50分
評価
★★★

初のエッセイ集。文章のテンポとあいまって、古きよき時代の日本が匂い立つよう。SMAPの話をしてるのに豆腐屋のらっぱが聞こえてくるか。巻末にある「パソコン通信」時代の話は、そんなことしてたんだと意外な感じ。

『おめでとう』

表紙

発行
2000年11月 新潮社 191頁 1365円 購入
発行
2003年6月 新潮文庫 213頁 420円 購入
発行
2007年12月 文春文庫 205頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
いまだ覚めず / どうにもこうにも / 春の虫 (ほか)
所要
2時間
評価
★★★★

優しくって少しばかな私達が体現するねじくれて真っ直ぐな恋。ボタンを掛け違ったところにある不思議な浸透圧。同じ感情をいろんな方向から見つめたような短編群だ。「寒いです。おめでとう。あなたがすきです」と。

『センセイの鞄』

表紙

発行
2001年6月 平凡社 277頁 1470円 購入
発行
2004年9月 文春文庫 278頁 560円 購入
発行
2007年9月 新潮文庫 299頁 540円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
月と電池 / ひよこ / 二十二個の星 (ほか)
評価
★★★★★

元先生と教え子が居酒屋で再会。飲み友達からゆっくり育ってゆく恋の坂道には、郷愁のような痛みを覚える。懐かしい恋。隙だらけの行間から立ち上るこの温かみは何だろう。旅行のシーンも微笑ましくてドキドキする。

『ゆっくりさよならをとなえる』

表紙

発行
2001年11月 新潮社 215頁 1470円 購入
発行
2004年11月 新潮文庫 221頁 420円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
雨蛙 / かすかなもの / しょうがパンのこと (ほか)
所要
2時間
評価
★★★

小説の導入部に使えそうな文章ばかりのエッセイ集。リズムはもちろん、オクラをひと夏食べ続けたり本屋の棚を見守ったり、暮らしがもう物語に包まれている。書評の章も語らってるうちに本の話になったという自然さ。

『パレード』

表紙

発行
2002年4月 平凡社 84頁 1000円 購入
発行
2007年9月 新潮文庫 86頁 420円 購入
共著
絵:吉富貴子
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
パレード
所要
0時間20分
評価
★★★

『センセイの鞄』からのアウトテイクのような、センセイとツキコさんの小エピソード。二匹の天狗とともに過ごした時代の思い出話が、幸せな時間として共有される。一冊には短すぎるんだけど本編が気に入った人なら。

『龍宮』

表紙

発行
2002年6月 文藝春秋 205頁 1300円 購入
発行
2005年9月 文春文庫 231頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
北斎 / 龍宮 / 狐塚 (ほか)
評価
★★★

奔放なイメージの不条理譚を極めたような作品群だが、シュルレアリスムが陥った袋小路も思わせる。民話伝承を下敷きにして「意味はないのに深刻」というヤバイ方向に向かってる気がして。あっ、「荒神」は好きです。

『光ってみえるもの、あれは』

表紙

発行
2003年9月 中央公論新社 327頁 1575円 購入
発行
2006年10月 中公文庫 362頁 620円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
すべて世はこともなし / 夜になると鮭は… / 木のぼりして (ほか)
所要
3時間50分
評価
★★★★

川上作品としてはわりと素直に少年の成長を見守る青春小説。登場人物には友達みたいな家族だとか女装する親友だとか、定型ながら不思議な綾がある。ハッピーエンドとも言えないのにこの爽やかな読後感はなんなんだ。

『ニシノユキヒコの恋と冒険』

表紙

発行
2003年11月 新潮社 249頁 1470円 購入
発行
2006年7月 新潮文庫 279頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
パフェー / 草の中で / おやすみ (ほか)
所要
2時間30分
評価
★★★★

男の女性遍歴を十人の女性の側から語る連作短編集。幸彦の主体が無色に描かれている一方、女の愛し方は個性的なキュートさだ。ドンファンじゃなくって振り回してるのは女の方かも。始まって終わる恋の多様さに放心。

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