村上春樹の100字レビュー(1979〜86)

村上春樹書評ページ

『風の歌を聴け』

表紙

発行
1979年7月 講談社 201頁 1260円 購入
発行
1982年7月 講談社文庫 155頁 絶版 購入
発行
2004年9月 講談社文庫(新装版) 160頁 400円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
風の歌を聴け
評価
★★★★★

いまだ鮮烈デビュー作。乾いたノスタルジーが軽やかに偏在している。鼠、ジェイズ・バー、小指のない女の子、短い夏。テンポのいい会話と的確な比喩で淡々と進む断章的青春群像。そして、80年代がやってくるわけだ。

『1973年のピンボール』

表紙

発行
1980年6月 講談社 207頁 1470円 購入
発行
1983年9月 講談社文庫 176頁 絶版 購入
発行
2004年11月 講談社文庫(新装版) 183頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
1973年のピンボール
評価
★★★★

双子の女の子との暮らし。想い出のピンボールとの再会。もう何も欲しがるまい。失ってしまったものへのやわらかな諦観が支配する世界。前作と同じ匂い、温度を感じる。井戸が出てくるのも(今から考えれば)興味深い。

『ウォーク・ドント・ラン 村上龍vs村上春樹

表紙

発行
1981年7月 講談社 154頁 絶版 購入
共著
共著:村上龍
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
都会と田舎 / なぜ小説を書くのか / 新人賞の周辺 (ほか)
評価
★★★

全く異なる資質を持った二人による対談集。『コインロッカー〜』後『羊をめぐる〜』前という時期なので、やっぱり村上龍が格上の感。春樹の洗練、龍の衝動を自分にないものとして違いに憧れまた反発する若きW村上。

『夢で会いましょう』

表紙

発行
1981年11月 冬樹社 232頁 絶版 購入
発行
1986年6月 講談社文庫(12編削除、12編追加) 232頁 470円 購入
共著
共著:糸井重里
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
アシスタント / アパート / アルバイト (ほか)
評価
★★★

糸井重里とのコンビによるよく分からない本。カタカナ言葉のお題にそれぞれがショート・ショートなりエッセイなりを書くというもの。短編集と言えなくもない。総体としてある種の寓話性を獲得している、のだろうか?

『羊をめぐる冒険』

表紙

発行
1982年10月 講談社 405頁 1995円 購入
発行
1985年10月 講談社文庫(上) 245頁 絶版 購入
発行
1985年10月 講談社文庫(下) 231頁 絶版 購入
発行
2004年11月 講談社文庫(新装版・上) 268頁 500円 購入
発行
2004年11月 講談社文庫(新装版・下) 257頁 500円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 1970/11/25 / 第二章 1978/7月 / 第三章 1978/9月 (ほか)
評価
★★★★★

「鼠」三部作完結編。彼の作品に共通する「巨大な喪失感」の落とし前。羊捜しの冒険へと巻き込まれてゆく凡庸な僕は、必然性に導かれるように決定的にそこにいる。魅力的な修辞と重厚な物語で読ませる初期の傑作だ。

『中国行きのスロウ・ボート』

表紙

発行
1983年5月 中央公論新社 238頁 1365円 購入
発行
1986年1月 中公文庫 238頁 絶版 購入
発行
1997年4月 中公文庫(改版) 288頁 600円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
中国行きのスロウ・ボート / 貧乏な叔母さんの話 / ニューヨーク炭鉱の悲劇 (ほか)
評価
★★★★★

初の短編集になる。これほど「完璧な短編集」はそうそうない。どれもが触覚的冷たさと痛みに貫かれている。それでいて押し付けがましさはまるでなく、当たり前みたいに静かな物語。表題作は何度読んでも心に染みる。

『カンガルー日和』

表紙

発行
1983年9月 平凡社 233頁 絶版 購入
発行
1986年10月 講談社文庫 251頁 470円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
カンガルー日和 / 4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて / 眠い (ほか)
評価
★★★★

短めの短編集。どれも人生について考えさせてくれたり感動の嵐でなぎ倒してくれたりはしない小品であるが、著者らしさはそこかしこに。「眠い」や「あしか祭り」などに見えるスパイスとしてのユーモア(!)も楽しい。

『象工場のハッピーエンド』

表紙

発行
1983年12月 ソニー・マガジンズ 120頁 絶版 購入
発行
1986年12月 新潮文庫 173頁 580円 購入
発行
1999年2月 講談社(1編を追加) 140頁 絶版 購入
共著
絵:安西水丸
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
カティーサーク自身のための広告 / クリスマス / ある種のコーヒーの飲み方について (ほか)
評価
★★★

軽いタッチの短文。双子や羊男が再登場したり象を作る工場だったり万年筆だったりするが、ここでは文章よりも、やはり軽いタッチの安西水丸のイラストレーションがいい。巻末の対談「襖絵事件」もいいね。猫を放つ。

『波の絵、波の話』

表紙

発行
1984年3月 文藝春秋 95頁 品切 購入
共著
写真:稲越功一
NDC
748(写真・印刷>写真集)
目次
波の絵、波の話
評価
★★

基本的には写真集。波の写真。それに春樹が短文を寄せている。サーファーとか出てきたのだっけ? 実のところ、何が書いてあったのか全く覚えていないんです。ごめんなさい。だったら載せるな、という感じですけど。

『五人十色』

表紙

発行
1984年6月 フィクション・インク 253頁 絶版
共著
共著:金井美恵子/橋本治村上龍山川健一
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
橋本治 / 村上春樹 / 村上龍 (ほか)
評価
★★★

金井美恵子、橋本治、村上春樹、村上龍、山川健一へのインタビュー集成。それぞれ勢いのある時期で、自信を固めつつある言葉が頼もしい。人選が僕好みだし。田中康夫などパートIIもあるそうだがそっちは読んでない。

『村上朝日堂』

表紙

発行
1984年7月 若林出版企画 223頁 絶版 購入
発行
1987年2月 新潮文庫 232頁 580円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
アルバイトについて / そば屋のビール / 三十年に一度 (ほか)
評価
★★★★

以後のエッセイにも冠されウェブサイト名ともなる「村上朝日堂」という記念碑的初のエッセイ集。徹底して身辺雑記で哲学や人生なんて絶対に語らない。まぁ媒体が「日刊アルバイトニュース」ってこともあるんだけど。

『螢・納屋を焼く・その他の短編』

表紙

発行
1984年7月 新潮社 177頁 1365円 購入
発行
1987年9月 新潮文庫 189頁 380円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
螢 / 納屋を焼く / 踊る小人 (ほか)
評価
★★★★

後に『ノルウェイの森』の一部となる「螢」を含む短編集。この中ではそれが圧倒的に面白いのだが、『ノルウェイ〜』の暗い影が入りこんでいて(発表順から言って変だけど)どうにも息苦しい。ついでに他のも重苦しい。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

表紙

発行
1985年6月 新潮社 618頁 絶版 購入
発行
1988年10月 新潮文庫(上) 397頁 620円 購入
発行
1988年10月 新潮文庫(下) 347頁 580円 購入
発行
1999年5月 新潮社(新装版) 618頁 絶版 購入
発行
2005年9月 新潮社(新装版) 618頁 2520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ハードボイルド・ワンダーランド(エレベーター、無音、肥満) / 世界の終り(金色の獣) / ハードボイルド・ワンダーランド(雨合羽、やみくろ、洗いだし) (ほか)
評価
★★★★★

夢読みの僕と計算士の私。静と動、ニつの世界が交互に語られる。その物語構造で世間をあっと言わせた新境地。物語への「引き込み方」がすごい。読み始めたら止まらない。スピーディーな展開で気づけば危うい結末だ。

『回転木馬のデッド・ヒート』

表紙

発行
1985年10月 講談社 196頁 1470円 購入
発行
1988年10月 講談社文庫 194頁 絶版 購入
発行
2004年10月 講談社文庫(新装版) 214頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
はじめに・回転木馬のデッド・ヒート / レーダーホーゼン / タクシーに乗った男 (ほか)
評価
★★★

人から聞いた話を小説の体裁にしたというスケッチ集。好きなのは「今は亡き王女のための」かな。悲しい話だけれど僕も彼女を嫌いになるだろうな、という意味で。「ハンティング・ナイフ」で終わるその余韻が絶妙だ。

『羊男のクリスマス』

表紙

発行
1985年11月 講談社 68頁 1733円 購入
発行
1989年11月 講談社文庫 110頁 540円 購入
共著
共著:佐々木マキ
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
羊男のクリスマス
評価
★★★

クリスマスのための音楽を作曲するよう依頼された羊男は、呪いを解くために穴に潜る。ドーナツに双子の女の子などお気に入りのモチーフ勢ぞろい(そういう意味では穴もだ)の楽しい絵本。でも子供は喜ばないだろうな。

『映画をめぐる冒険』

表紙

発行
1985年12月 講談社 252頁 絶版 購入
共著
共著:川本三郎
NDC
778(演劇・映画>映画)
目次
映画をめぐる冒険
評価
★★★

1926年〜1984年までの映画をピックアップ、交互に論評している。それぞれに偏った映画の楽しみ方があるわけだが、二人の趣味を足したらそれなりの映画史になってると思われる。春樹ファンには垂涎のレア本ではある。

『パン屋再襲撃』

表紙

発行
1986年4月 文藝春秋 203頁 1100円 購入
発行
1989年4月 文春文庫 221頁 450円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
パン屋再襲撃 / 象の消滅 / ファミリー・アフェア (ほか)
評価
★★★★★

言葉の冴え冴えとした短編集。変かもしれないけれど「ファミリー・アフェア」が一番。顕微鏡で自分の部屋を覗いているような物哀しい気分になって。文章が洗練されているだけ余計に。「ねじまき鳥」原型も収録する。

『村上朝日堂の逆襲』

表紙

発行
1986年6月 朝日新聞社 246頁 絶版 購入
発行
1989年10月 新潮文庫 263頁 460円 購入
共著
絵:安西水丸
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
自由業の問題点について / 早遅ゲーム / 交通ストについて (ほか)
評価
★★★

朝日堂第2弾。例によって短くお気楽なエッセイ集。Fの鉛筆がセーラー服を着た女学生に見え始める、というくだりは面白い(何だか欲求不満みたいだけれど)。「一に健康、二に才能」というのも作家の姿勢としてはよい。

『ランゲルハンス島の午後』

表紙

発行
1986年11月 光文社 101頁 絶版 購入
発行
1990年10月 新潮文庫 110頁 620円 購入
共著
絵:安西水丸
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
レストランの読書 / ブラームスとフランス料理 / シェービング・クリームの話 (ほか)
評価
★★★

安西水丸の画集状態なのは『象工場〜』的だけれども、こちらの文章は基本的にエッセイとなっている。小確幸(小さくはあるが確固とした幸せ)という雰囲気が全体にある絵物語。ランゲルハンス島、体のなかに浮かぶ島。

村上春樹書評ページ