町田康の100字レビュー(1992〜2004)

町田康書評ページ

『供花 (くうげ)

表紙

発行
1992年1月 思潮社(町田町蔵名義) 172頁 絶版 購入
発行
1997年12月 思潮社(新装版・町田康名義) 172頁 絶版 購入
発行
2001年9月 新潮文庫 176頁 380円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
I飯を貰う / II蟲姦 / III饂飩妻 (ほか)
評価
★★★★

アルバム歌詞に書き下ろし詩篇を加えた初の詩集。パンク歌手町田町蔵の熟練した本域。ちゃぶ台をひっくり返す勢いのその言葉、乱雑で繊細な言葉に感応せよ。愚民たる俺たちにできることは世界にツバすることだけだ。

『壊色 (えじき)

表紙

発行
1993年7月 リトル・モア(初版は町田町蔵名義) 189頁 絶版 購入
発行
1998年8月 ハルキ文庫 242頁 609円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
第一章 天丼ゆうてる / 第二章 うどん玉・バカンス・うどん / 第三章 また時間どうりに来やがらぬ (ほか)
評価
★★★★

「初のエッセイ集」というよりは散文詩集だろう。パンク歌手の平凡な日常から涌き出る過激な妄想世界。脳髄の絞りかすのような美風景。唱歌に秘められた悪意を読み解いたり、歌詞集が別冊付録だったり盛りだくさん。

『くっすん大黒』

表紙

発行
1997年3月 文藝春秋 173頁 1500円 購入
発行
2002年5月 文春文庫 181頁 410円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
くっすん大黒 / 河原のアパラ
評価
★★★★★

パンクロッカー町田町蔵の作家デビュー作。ダメな人間のダメな生活を楽しげに描く。置物の大黒みたいに役立たずで、だからこそ生きていけるんだ。へろへろした文体なのに高速移動している。この浮遊感がたまらない。

『へらへらぼっちゃん』

表紙

発行
1998年1月 講談社 260頁 1680円 購入
発行
2003年5月 講談社文庫 285頁 560円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
どうにかなる日々 / よのなかの道 / ああなんたるいたちごっこ! (ほか)
評価
★★★★

エッセイ集だが小説であってもおかしくない。小説とまったく同じテンションの日常描写は見事。朝から飲んでテレビの時代劇を日に六本も見て困窮する生活。へらへらと。書評(的な文)のスタイルは見習いたいものです。

『夫婦茶碗』

表紙

発行
1998年1月 新潮社 213頁 1470円 購入
発行
2001年5月 新潮文庫 221頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
夫婦茶碗 / 人間の屑
評価
★★★★★

相変わらずのダメ人間だ。ペンキを塗ったり卵を並べ替えたりメルヘンに溺れたりして激しく堕落してゆく。夢がこわれました。とにかく読むのが楽しい。この文体のまま切実な哀しみさえ表現しきった「人間の屑」併録。

『屈辱ポンチ』

表紙

発行
1998年12月 文藝春秋 180頁 1200円 購入
発行
2003年5月 文春文庫 214頁 450円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
けものがれ、俺らの猿と / 屈辱ポンチ
評価
★★★

小品な表題作よりも「けものがれ、俺らの猿と」の方が不埒でよい。これまでのような能動的に路頭に迷う男ではなく、壊れた外部にとりこまれてゆく男の話なのだが、その暴力的な破綻ぶりは小説として失格。てな佳作。

『つるつるの壺』

表紙

発行
1999年2月 講談社 240頁 絶版 購入
発行
2004年4月 講談社文庫 293頁 560円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ロックの老いの坂 / おめえ、生きててつらいだろ? / 地獄の鉄板 (ほか)
評価
★★★★

エッセイ集。『くっすん大黒』などの文体そのままで安心する。これが彼における地なのだろうか。パンク歌手と自己規定する道化は「笑わせてナンボ」が明確で気持ちいい。それでいて自信溢れる言葉っぷりが後に残る。

『俺、南進して。』

表紙

発行
1999年9月 新潮社 192頁 2100円 購入
共著
写真:荒木経惟
NDC
748(写真・印刷>写真集)
目次
俺、南進して。
評価
★★★★

舞台は大阪、町田をモデルに荒木が写真を撮りおろす。その写真からインフレートする物語世界。乱交と死のイメージが加速する。写真に引きずられてか緊張感ある文体を獲得、新鮮だ。もっと言えば写真が勝ってるかも。

『耳そぎ饅頭』

表紙

発行
2000年3月 マガジンハウス 249頁 1575円 購入
発行
2005年1月 講談社文庫 281頁 700円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
収入のクライベイビー / 心が融ける。俺は儲かる / 顕現する、ワオ!暴力世界 (ほか)
評価
★★★★

こんな自堕落ではいかんと社会性を獲得すべくもがくパンク歌手を、半ば他人事のように冷静に、あるいは友人のごとき馴れ馴れしさでともに踊りながらも嘲笑するエッセイ集。刹那的であることのエネルギーだ。うくく。

『きれぎれ』

表紙

発行
2000年7月 文藝春秋 188頁 1200円 購入
発行
2004年4月 文春文庫 213頁 450円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
きれぎれ / 人生の聖
評価
★★★

シャイニービーストが絶叫する表題作はそれでもかろうじて枠内にあるが「人生の聖」はすでに狂気の彼方。水溶性の精神が排水溝に吸いこまれて行くそのスピード。早ぇ早ぇよと興奮する傍観者たちの声。滑落する現実。

『実録・外道の条件』

表紙

発行
2000年10月 メディアファクトリー 217頁 1470円 購入
発行
2004年12月 角川文庫 203頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ファッションの引導鐘 / ロックの泥水 / 地獄のボランティア (ほか)
評価
★★★★★

マスコミの低能を罵倒する短編集。良心も常識もない奴等の無礼からこちらも不愉快になる寸前、ジューシーな文章で笑いにかっさらってくれるのが心地よくて。実録だとするなら紐育のしゅず子はその後どうなったのだ?

『町田康全歌詩集 1977〜1997

表紙

発行
2001年4月 マガジンハウス 413頁 2835円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
馬場はカマタに負けよった / 岸壁 / 福助人形 (ほか)
評価
★★★

町田の歌詩は初めから文学であったけれど、それでもパンクが語彙を獲得して行く推移がグラデーションになって見えるね。「音」は黒いはずだが心情吐露の譜で考えたら存外に美しいんじゃないか。天使な装丁だしねぇ。

『土間の四十八滝』

表紙

発行
2001年7月 メディアファクトリー 125頁 1260円 購入
発行
2004年5月 ハルキ文庫 143頁 462円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
猿ぼんぼん / 俺も小僧 / 飯屋が再び (ほか)
評価
★★★

詩集になるのかな。町田小説の文体なのだけれど、分かち書きにするだけで行間の悪意がくっきりする。こんなに売れてても「賤民、水上スキーの稽古して」なんて言葉を惜しげもなく使って、なおも売れてしまうのだね。

『人生を救え!』

表紙

発行
2001年10月 毎日新聞社 261頁 1575円 購入
発行
2006年3月 角川文庫 317頁 580円 購入
共著
共著:いしいしんじ
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
どうにかなる人生 / 苦悩の珍道中
評価
★★★

人生相談と対談集。人生相談なんて、パンク歌手なりの破裂型かと思えば意外とまとも。老いも若きもなるほどなぁと納得することしきりだろう。浅草やお台場を歩いて語る対談は、老人の繰言程度には示唆に富んでいる。

『爆発道祖神』

表紙

発行
2002年7月 角川書店 226頁 品切 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
焼き鮭と石の憎い奴の前で俺、ひっひっひっ / ぷりぷりの尻としゃらくさいものども / 怒りが岡持と花に吸着して身代が築けぬわ
評価
★★★★

詩なのかもしれないがたぶん短編集なんだろう。これまでの文体を磨き自己修練するがごとき反復。写真と微妙に食い違うので、そのズレが温い語尾と手をとりあって。楽勝な孤独。「てっ」て笑っておきましょう。てっ。

『テースト・オブ・苦虫1』

表紙

発行
2002年11月 中央公論新社 245頁 1785円 購入
発行
2007年11月 中公文庫 251頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
コミュニケーション・ブレイクダウン / 洞窟から誰も出てこない / 陽気な僕ら浮気なあんたら。ハッピーなデイズ (ほか)
評価
★★★

世の傍若無人にきりきり舞いを舞い、苦虫の味を堪能するキュートな日々。ここで着目すべきは、自分の職業を物書きだと規定したりする数編ではなかろうか。パンク歌手としての自負と相半ばする形で。微妙なバランス。

『権現の踊り子』

表紙

発行
2003年3月 講談社 203頁 1575円 購入
発行
2006年4月 講談社文庫 249頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
鶴の壺 / 矢細君のストーン / 工夫の減さん (ほか)
評価
★★★

初の「ちゃんとした」短編集か。踊りながら時代劇を鑑賞してる町田の姿が浮かぶ逸品から小さな退廃までいろいろだが、彼なりの勧善懲悪ちゅうか何を善しとするのかが垣間見える。それを瑣末と読んでしまうと無意味。

『町田康詩集』

表紙

発行
2003年5月 ハルキ文庫 252頁 630円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
不義は頭脳を / プラチナの釈尊 / 倖いである (ほか)
評価
★★★

文庫オリジナルの自薦詩集。書き下ろし詩篇も入ってるとなれば買わざるを得ない。相も変わらずパンクって言ってもいいし、昔っから文学。って言ってもいいのだが、その言葉を日常に置いてみました。って写真に笑う。

『パンク侍、斬られて候』

表紙

発行
2004年3月 マガジンハウス 315頁 1680円 購入
発行
2006年10月 角川文庫 360頁 660円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
パンク侍、斬られて候
評価
★★★

謎の宗教腹ふり党と対決する時代小説に見せかけて。自意識が傷つかないよう不戦敗を選ぶニヤニヤ笑いや、自分で物を考えない足の引張りあいを斬捨てる現代批判。パンクのというより社会学者のようなメッセージ色だ。

『猫にかまけて』

表紙

発行
2004年11月 講談社 252頁 1680円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
拙宅の猫たち / 横着者が黒豆を / 拙宅の守旧派 (ほか)
所要
2時間20分
評価
★★★★

町田家の猫たちの極悪非道なる振る舞いを小気味良いリズムで論った腹筋にくるエッセイ。に留まらず、突然舞い込む死の予兆に対して人にできる事はなんだろうという考察が、笑みを引きずった頬に痛かったりする良作。

町田康書評ページ