村上龍の100字レビュー(1996〜99)

『KYOKOの軌跡 神が試した映画

表紙

発行
1996年3月 幻冬舎 365頁 品切 購入
発行
1997年12月 幻冬舎文庫 248頁 品切 購入
NDC
778(演劇・映画>映画)
目次
第一章 奇蹟の旅 / 第二章 シナリオ〜an Original Screenplay / 第三章 撮影日誌 寂しさが生みだすもの (ほか)
評価
★★★

映画「KYOKO」周辺。シナリオに撮影日誌、主演の高岡早紀との対談などを収録。この映画について語るとき著者は非常にシンプルになっている気がする。とにかく全面的に「高岡早紀はすごい!」としか言ってないもの。

『モニカ 音楽家の夢・小説家の物語

表紙

発行
1996年3月 新潮社 189頁 絶版 購入
発行
1999年3月 新潮文庫 191頁 絶版 購入
共著
共著:坂本龍一
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
モニカ / 32頭の象 / 燃え上がる都市 (ほか)
評価
★★★★

坂本龍一の夢をモチーフにして村上龍が小説を書いている。まさに「それ自体小規模な文学」となっている夢のメモが面白い。夢と同質に抽象的な存在であるモニカの物語は終わりに至っていない。夢がそうであるように。

『メランコリア』

表紙

発行
1996年5月 集英社 203頁 1427円 購入
発行
2000年9月 集英社文庫 232頁 440円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
メランコリア
評価
★★★

ニューヨークのホームレスに身をやつす日本人ヤザキの示唆に溢れる独白。『エクスタシー』第二部。自意識から自由になった人間にコミュニケイトは成立するか。この時期「続編」ばかり書いたのは何故だったんだろう。

『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II

表紙

発行
1996年5月 幻冬舎 237頁 品切 購入
発行
1998年4月 幻冬舎文庫 273頁 560円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
プロローグ キャサリン・コウリー / 第1章 レトロウイルスのように / 第2章 細胞外マトリックス (ほか)
評価
★★★★★

『五分後〜』の続編で同じ地下帝国(アンダーグラウンド)を描いているが、テーマはウイルスと免疫で、幾分科学的。戦争に巻き込まれる前作よりクールなのはジャーナリストの主人公の視点か。その分迫力も押さえ気味。

『ラブ&ポップ トパーズII

表紙

発行
1996年11月 幻冬舎 198頁 品切 購入
発行
1997年12月 幻冬舎文庫 234頁 520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ラブ&ポップ
評価
★★★★

援助交際する女子高生の物語。本当に現代社会はこんな健康的に病んでいるのだろうかね? テーマの処理方はうまい。表現形態に凝っていてポップアート的だと言われるが、この部分がどうも軽く感じてしまうのだけど。

『はじめての夜 二度目の夜 最後の夜 料理小説

表紙

発行
1996年12月 集英社 201頁 1427円 購入
発行
2000年1月 集英社文庫 205頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
はじめての夜 / 二度目の夜 / 最後の夜
評価
★★★

「おいしいと思うレストランはいくつもある、だけど、『すごい』と思う料理が出てくるのはハウステンボスの『エリタージュ』だけだよ」初恋の人と再会、食事をするが料理が主役。「味」はいろんなものを呼び起こす。

『白鳥』

表紙

発行
1997年3月 幻冬舎 246頁 品切 購入
発行
2000年4月 幻冬舎文庫 213頁 520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
白鳥 / ウナギとキウイパイと、死。 / ムーン・リバー (ほか)
評価
★★★

アンソロジーに入っていたものや雑誌掲載のまま放置されていた短編を集めた短編集。短編の少ない作家だけになかなか数が揃わないのか。というとバラバラな印象のようだが、関係性を求めて苦しむ人物ばかりの統一感。

『オーディション』

表紙

発行
1997年6月 ぶんか社 213頁 絶版 購入
発行
1997年12月 幻冬舎文庫 236頁 520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
オーディション
評価
★★★

サスペンスホラーな小説。トラウマを抱えて生きる女の狂気。愛を与えられないのはつまりは社会に必要とされないということだ。誰もが彼女のようであってもおかしくない、という恐怖。どうでもいいけど文庫化早すぎ。

『ストレンジ・デイズ』

表紙

発行
1997年7月 講談社 352頁 絶版 購入
発行
2000年8月 講談社文庫 393頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
『ストレンジ・デイズ』ドアーズ / 『ホワイト・ライト・ホワイト・ヒート』ヴェルヴェット・アンダーグラウンド / 『ヴードゥー・チャイルド』ジミ・ヘンドリックス (ほか)
評価
★★★★

自分の中に巣食う怪物を幻視する男がコンビニで女と出会う。彼女はトラックドライバーで、天才的な演技力の持ち主で、血管に虫を飼っていた。「ロールプレイ」で数種の人格を演じるのは基本人格を守るためだろうか。

『RYU'S倶楽部 「仲間」ではなく友人として

表紙

発行
1997年8月 毎日新聞社 366頁 1785円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
山田詠美 / 坂本龍一 / 戸田奈津子 (ほか)
評価
★★★

友人?たちとの対話集なのだが、前園真聖の5ページだとか少々1人分が少なすぎやしないか。そんな訳で25人収録。文学への素朴な想いを述べてたりする宮本輝とか石原慎太郎の「ピアス亡国論」あたりがアピールはある。

『イン・ザ・ミソスープ』

表紙

発行
1997年10月 読売新聞社 238頁 1575円 購入
発行
1998年8月 幻冬舎文庫 304頁 560円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
イン・ザ・ミソスープ
評価
★★★★★

快楽殺人。呼吸するように人を殺すフランクは日本的な社会でどう浮きどう沈むか? これを書いている途中で神戸の「事件」が起こったことを併せ読むと面白い。この時期に不謹慎だという抗議が殺到した新聞連載小説。

『寂しい国の殺人』

表紙

発行
1998年1月 シングルカット 94頁 1890円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
寂しい国の殺人
評価
★★★

近代化の終わった日本で何が起こっているのか。神戸のあの殺人事件を受けて分析する子供たちの今。フォトショップで作った画像の写真集ともなっている。般若の面にオーバーラップする少女の裸体など、こっちも刺激。

『夢見るころを過ぎれば 村上龍vs女子高生51人

表紙

発行
1998年6月 リクルートダヴィンチ編集部 327頁 絶版 購入
NDC
367(社会>家族問題 男性 女性問題 老人問題)
目次
東京都私立女子高校一年生・金沢ゆき、東京都私立女子高校三年生・岸本幸子 / 東京都私立高校二年生・松田敬子、吉野めぐみ / 東京都私立高校三年生・河内理恵、佐々木輝子 (ほか)
所要
4時間40分
評価
★★

『ラブ&ポップ』な頃の女子高生インタビュー集。一人一人が違うんだ、女子高生とひとくくりになんてできないという龍的主張がありながらも、頁を繰るごとに全員同じに見えてくるという不思議。売春とブランドと夢。

『ライン』

表紙

発行
1998年8月 幻冬舎 209頁 品切 購入
発行
2002年4月 幻冬舎文庫 252頁 520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
Vol.1 向井 / Vol.2 順子 / Vol.3 ゆかり (ほか)
評価
★★★★

これまで著者が追いかけてきた社会の暗部、その様々なモチーフが全部入っている。章ごとに違う主人公が立つのだが、みな一様に病んでいる。ただ主人公が変わる趣向のため散漫な印象になってしまっている部分は残念。

『憂鬱な希望としてのインターネット』

表紙

発行
1998年9月 メディアファクトリー 163頁 絶版 購入
共著
共著:ダ・ヴィンチ編集部
NDC
547(電気工学・電子工学>通信工学 電気通信)
目次
第一章 表現者としてのインターネット / 第二章 『tokyoDECADENCE』が創造する村上龍ワールド / 第三章 『tokyoDECADENCE』の軌跡 (ほか)
評価
★★★

自身のサイト『tokyo DECADENCE』を開設するに至る動機、背景などを語る。著作というよりはファン本。Shockwaveを使った見せ方の試行錯誤ぶりは、コミュニケーションというものを表現し続ける著者の現在地ではある。

『すべての男は消耗品である。Vol.5』

表紙

発行
1998年10月 ベストセラーズ 301頁 1628円 購入
発行
2004年8月 幻冬舎文庫(『明日できることは今日はしない』と改題) 260頁 560円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
他人の話を面白いと思ったことはもの心ついた幼児の頃から数えても、十回もない。 / また、アメリカで映画を作りたい、私は切実にそう思っている。 / 私の脳細胞はまずいワインのためには一分も稼動しようとしないだろう。 (ほか)
評価
★★★★

日本には危機感がない、つまりは無知だ、それは醜悪なことだ。乱暴にここで言われていることをまとめるとこうなる。このシリーズエッセイでは久しぶりに硬派な主張が繰り広げられている。Jリーグ批判とか楽しいね。

『ワイン一杯だけの真実』

表紙

発行
1998年12月 幻冬舎 189頁 絶版 購入
発行
2001年8月 幻冬舎文庫 190頁 520円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
オーパス・ワン / シャトー・マルゴー / ラ・ターシュ (ほか)
評価
★★★★★

ワインをめぐる短編集。関係に飢えるあまりみな少しずつ心を壊してゆく。その導火線としてあるいは最後の一線としての極上ワイン。ブルジョワが鼻につく話だったら嫌だなと敬遠してたのだがいらぬ世話でした。傑作。

『存在の耐えがたきサルサ 村上龍対談集

表紙

発行
1999年6月 文藝春秋 477頁 絶版 購入
発行
2001年6月 文春文庫 695頁 880円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
中上健次 存在の耐えがたきサルサ / 柄谷行人 キューバ エイズ 六〇年代 映画 文芸雑誌 / 小山鉄郎 『五分後の世界』をめぐって (ほか)
評価
★★★

彼の創作活動の流れを補強する対談集。例えば『ヒュウガ・ウィルス』を書いた時期に免疫の専門家と語るという構成。だから彼の著作を読んでいる人が読むべき。『EV Cafe'』での顔ぶれのほか中上健次や庵野秀明など。

『あの金で何が買えたか バブル・ファンタジー

表紙

発行
1999年8月 小学館 103頁 品切 購入
発行
2001年4月 角川文庫(大幅加筆、『あの金で何が買えたか 史上最大のむだづかい'91〜'01』として) 148頁 600円 購入
共著
絵:はまのゆか
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
「知る」ということ / 対談(村上龍/植草一秀) / 日本興業銀行公的資金投入額 6000億円 (ほか)
評価
★★★

バブルのツケで潰れそうになった銀行に投入された公的資金など「むだづかい」の額を挙げ、もっと役に立つことに使えるはずなのにという比較案。「途上国に図書館」など人道的、国際貢献的な対象が多いのも村上龍印?

『最前線 THE FRONT LINE

表紙

発行
1999年12月 ラインブックス 261頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
共同体が崩れた現在で個人を支えるもの 上原隆 / 「学校崩壊」の現場から 河上亮一 / 「できない子」たちの復讐 諏訪哲二 (ほか)
評価
★★★

各分野の最前線に立つ人との対談集。戦場カメラマンだったり金融アナリストだったりするのだが、前半の教育分野から語られる現在分析が特に興味深い。当然現場のリアルな話であり、その救いのなさに沈んだりもする。