『螢川』

- 発行
- 1978年2月 筑摩書房 184頁 品切 購入
- 発行
- 1980年2月 角川文庫(『螢川・泥の河』と改題) 178頁 357円 購入
- 発行
- 1985年1月 筑摩書房(『道頓堀川』と合本、『宮本輝川三部作』として) 390頁 絶版
- 発行
- 1986年1月 ちくま文庫(『道頓堀川』と合本、『泥の河・螢川・道頓堀川』として) 403頁 840円 購入
- 発行
- 1994年12月 新潮文庫(『螢川・泥の河』と改題) 190頁 380円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 泥の河 / 螢川
- 評価
- ★★★
中編ニ編を収めるが、どちらも昭和30年代の土臭い生活を描いている。「泥の河」においては巨鯉が、表題作においては蛍の群が、疲れきった「営み」にある種の破壊神のように福音を投げる。懐古的正調さが醸す安定感。
『幻の光』

- 発行
- 1979年7月 新潮社 153頁 絶版 購入
- 発行
- 1983年7月 新潮文庫 171頁 380円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 幻の光 / 夜桜 / こうもり (ほか)
- 評価
- ★★★
短編集。奥能登の暗い空の下、線路の上で生を閉じた前夫の影をいつまでも思い出す女の表題作。唯一の出口のように海面は光るが、それさえも幻であるとしたら。あえて整理しない独白調の語尾に悲壮感もまた増幅する。
『星々の悲しみ』

- 発行
- 1981年4月 文藝春秋 230頁 絶版 購入
- 発行
- 1984年8月 文春文庫 236頁 460円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 星々の悲しみ / 西瓜トラック / 北病棟 (ほか)
- 評価
- ★★★
夭折した画家の絵を盗んでからそいつに囚われてゆく表題作ほか。皆はっきり自分の行く末を意識した登場人物ばかりだけど死に至る病、あるいは蝶を追う病がため? そこから出るためにもっともがけよと焦れてみたり。
『道頓堀川』

- 発行
- 1981年5月 筑摩書房 257頁 絶版 購入
- 発行
- 1983年5月 角川文庫 252頁 品切 購入
- 発行
- 1985年1月 筑摩書房(『道頓堀川』と合本、『宮本輝川三部作』として) 390頁 絶版
- 発行
- 1986年1月 ちくま文庫(『螢川』と合本、『泥の河・螢川・道頓堀川』として) 403頁 840円 購入
- 発行
- 1994年12月 新潮文庫 247頁 420円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 道頓堀川
- 評価
- ★★★★★
道頓堀川の澱みに映る薄暗い繁華街で生きる人間達の長編。「同じ船に乗り合わせ」た者同士のシビアな人生ドラマだ。人数分の過去があってなおかつ過去は問わない演歌的青春群像。ビリヤードの最終段は完璧な美しさ。
『錦繍』

- 発行
- 1982年3月 新潮社 209頁 1470円 購入
- 発行
- 1985年5月 新潮文庫 223頁 460円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 錦繍
- 評価
- ★★★★★
愛人との心中未遂から堕ちる男と、モーツァルトに死を聴く女が、離縁から10年を経て綴り出す往復書簡。割れた壺のような冷たい無音に支配される文脈のなかで、生へと牽引する令子の存在が感動的。過去、現在、未来。
『流転の海 第一部』

- 発行
- 1984年7月 ベネッセコーポレーション 379頁 絶版 購入
- 発行
- 1990年4月 新潮文庫 403頁 620円 購入
- 発行
- 1992年11月 新潮社 348頁 1995円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 流転の海
- 評価
- ★★★★
長編連作の第一部にあたる。落ちぶれた者、成り上がった者、戦後の何かが胎動を始める時代を描く。「星廻りとケンカをしてこそ、ほんまの人生とは言えんかのお」とある奇跡のように子を授かった熊吾の語調は力強く。
『葡萄と郷愁』

- 発行
- 1986年6月 光文社 215頁 絶版 購入
- 発行
- 1990年10月 角川文庫 234頁 460円 購入
- 発行
- 1995年1月 文春文庫 231頁 460円 購入
- 発行
- 2002年10月 光文社文庫 236頁 480円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 葡萄と郷愁
- 評価
- ★★★
東京とブダペストに住む二人のヒロインの物語が同時展開する長編。それぞれが郷愁の重力圏から外へと飛び出したいと願う、その夢と決断には「青春の終わり」みたいな苦さがあって。暗喩だとかテクニカルな印象だな。
『五千回の生死』

- 発行
- 1987年6月 新潮社 215頁 絶版 購入
- 発行
- 1990年4月 新潮文庫 212頁 420円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- トマトの話 / 眉墨 / 力 (ほか)
- 評価
- ★★★★
構成の美しさが光る短編集。一日に五千回も死にたくなる男の表題作は、奇妙な爽快感が読後にある。自転車の軋みが聴こえてくるリアリティだ。「トマトの話」は上手すぎて先が読めるにも関わらず感動的だし。いいよ。
『異国の窓から』

- 発行
- 1988年1月 光文社 263頁 絶版 購入
- 発行
- 1991年8月 角川文庫 254頁 品切 購入
- 発行
- 1996年2月 文春文庫 266頁 470円 購入
- 発行
- 2003年1月 光文社文庫 271頁 500円 購入
- NDC
- 915(日本文学>日記 書簡 紀行)
- 目次
- ニュールンベルクへ / レーゲンスブルクへ / バイエルンの村々 (ほか)
- 所要
- 1時間40分
- 評価
- ★★★
『ドナウの旅人』取材のためドイツからルーマニアへドナウ川を辿る道中を旅行記にしたもの。壁崩壊前の東欧の緊張感みたいなものはあるが、それよりもわがままな作家に同行する担当者は大変だねぇってことのほうが。
『花の降る午後』

- 発行
- 1988年4月 角川書店 425頁 絶版 購入
- 発行
- 1991年1月 角川文庫 476頁 735円 購入
- 発行
- 1995年4月 講談社文庫 506頁 770円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 白い家 / 夏の坂 / 揺れる港 (ほか)
- 評価
- ★★★★
神戸の仏料理店アヴィニョンを舞台にした店乗っ取りの謀略。なのだが、女主人典子が自分の欲望に正直なものだから、若い画家との性愛物語になったりしてる。それでも典子の少女のような心の震えは清々しくも華やか。
『真夏の犬』

- 発行
- 1990年3月 文藝春秋 213頁 絶版 購入
- 発行
- 1993年4月 文春文庫 237頁 460円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 真夏の犬 / 暑い道 / 駅 (ほか)
- 評価
- ★★★
小説教本みたいに起承転結ばっちり決まる。短編作家って呼びたくなりますね。廃車置場で番をする少年と野良犬、そして父と女がからんでくるくだりはひたすら技巧的。「力道山の弟」もちゃんと時代嗅げるんだよなぁ。
『ここに地終わり 海始まる』

- 発行
- 1991年10月 講談社(上) 302頁 絶版 購入
- 発行
- 1991年10月 講談社(下) 271頁 絶版 購入
- 発行
- 1994年10月 講談社文庫(上) 294頁 540円 購入
- 発行
- 1994年10月 講談社文庫(下) 272頁 520円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 第一章 絵葉書 / 第二章 薪ストーブ / 第三章 雲のかたち (ほか)
- 評価
- ★★★
ヨーロッパの西端にあるというその碑文をしたためた葉書が、生きる意志を与える。18年を病室で過ごした無垢の女として描かれる志穂子がいやに計算高かったり、どの人物もある意味人間臭くて、それが魅力とはいえる。
『地の星 流転の海第二部』

- 発行
- 1992年11月 新潮社 427頁 2205円 購入
- 発行
- 1996年3月 新潮文庫 494頁 740円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 地の星
- 評価
- ★★★
病弱な息子の療養のため大阪から戻った南宇和での生活。田舎根性の隣人たちの中で一人先見する主人公熊吾の存在感は前作通り圧倒的だが、「鮎を手掴み」の挿話で妻の、「肥溜め」で息子のキャラも俄然動き出してる。
『私たちが好きだったこと』

- 発行
- 1995年11月 新潮社 285頁 絶版 購入
- 発行
- 1998年12月 新潮文庫 334頁 580円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 私たちが好きだったこと
- 評価
- ★★
出来すぎな出会いから始まる男女四人の共同生活。嫉妬したり傷ついたり励ましあったりと夏の夜の雨のように匂い立つ湿度。もう少しセックス賛歌な部分を抑えれば立派なテレビドラマになる。ネパールの蝶探しはいい。
『胸の香り』

- 発行
- 1996年6月 文藝春秋 196頁 絶版 購入
- 発行
- 1999年7月 文春文庫 190頁 420円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 月に浮かぶ / 舟を焼く / さざなみ (ほか)
- 評価
- ★★★
不倫だとか中絶だとか主人公達の身の置き場は寒々としてるんだけれど、それを「燃える小舟」とか情景描写一発で叙情に変えちゃう。本人の問題がスコンと突き抜けちゃう。だから「乞食」も嫌らしくならないんだよね。
『血脈の火 流転の海第三部』

- 発行
- 1996年9月 新潮社 443頁 2205円 購入
- 発行
- 1999年10月 新潮文庫 561頁 780円 購入
- NDC
- 913(日本文学>小説 物語)
- 目次
- 血脈の火
- 評価
- ★★★
大阪へ戻って再出発、という五部構成(予定)の折り返し地点。雀荘開いたり突然きんつば焼き始めたり思いつくまま事業を展開して行く危険な時期なのだが、家族ばかりでなく自分が守らねばならない人々への想いがいい。
『ひとたびはポプラに臥す 1』

- 発行
- 1997年12月 講談社 248頁 絶版 購入
- 発行
- 2002年3月 講談社文庫 257頁 660円 購入
- NDC
- 915(日本文学>日記 書簡 紀行)
- 目次
- 第1章 少年よ、歩きだせ / 第2章 麦の道 / 第3章 麻雀を考えついた国 (ほか)
- 所要
- 2時間
- 評価
- ★★★
鳩摩羅什の足跡を辿り、西安からイスラマバードまで6700キロ40日間の旅に出た記録。やや観光客的な西安巡りを発つと、途端に水にやられて全員ダウン。あとは食い物への猜疑ばかりが募る第1巻。蘭州を過ぎ武威まで。
『ひとたびはポプラに臥す 2』

- 発行
- 1998年4月 講談社 216頁 絶版 購入
- 発行
- 2002年3月 講談社文庫 218頁 660円 購入
- NDC
- 915(日本文学>日記 書簡 紀行)
- 目次
- 第5章 風の底 / 第6章 星星峡への憧れ / 第7章 天道、是か非か
- 所要
- 1時間10分
- 評価
- ★★★
武威を出てトルファン手前までの道程。シルクロードの看板都市・敦煌が当然大きく扱われるわけだが、2巻での見所は風の底、歴史がゴミのように積もる谷だろう。なんとも中国的な風。星星峡への憧れと裏切られ方も。
『ひとたびはポプラに臥す 3』

- 発行
- 1998年8月 講談社 237頁 絶版 購入
- 発行
- 2002年3月 講談社文庫 239頁 660円 購入
- NDC
- 915(日本文学>日記 書簡 紀行)
- 目次
- 第8章 あなたんは、わたしんのん、いのちんいんいんいん。 / 第9章 天山南路 / 第10章 時を超える音
- 所要
- 1時間40分
- 評価
- ★★★
シルクロード紀行第三巻はトルファンから天山南路をクチャへ。羅什を追う旅だと言うのに、遺跡への興味のなさというか歴史に想いを馳せない度合いが潔すぎやしないか。そこにあるのはただ乾いたゴビと竜巻と蜃気楼。
『ひとたびはポプラに臥す 4』

- 発行
- 1998年12月 講談社 217頁 絶版 購入
- 発行
- 2002年4月 講談社文庫 219頁 660円 購入
- NDC
- 915(日本文学>日記 書簡 紀行)
- 目次
- 第11章 河を渡って木立の中へ / 第12章 死をポケットに入れて / 第13章 生の学理的強奪
- 所要
- 2時間10分
- 評価
- ★★★
滞在することよりも移動し続けることのなかに、己の背中を凝固させようとしているのだなと改めて思う。クチャからカシュガルへの行程、前も後ろも地平線までゴビという道を一人歩く男に重ねて視るのはこの上の彼岸。