中上健次の100字レビュー(1974〜83)

中上健次書評ページ

『十九歳の地図』

表紙

発行
1974年8月 河出書房新社 215頁 絶版 購入
発行
1993年3月 河出文庫 222頁 489円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
一番はじめの出来事 / 十九歳の地図 / 蝸牛 (ほか)
評価
★★★★★

短編集。主人公である予備校生の苛立ちが全てを覆う表題作がすばらしい。なにしろ一息つける部分が全くないのだ。全ての文章で刺のある言葉が選ばれていて、改行改段も少ない。息苦しさが満点。鬱屈する青春の鏡だ。

『鳩どもの家』

表紙

発行
1975年2月 集英社 259頁 絶版 購入
発行
1980年6月 集英社文庫 267頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
日本語について / 灰色のコカコーラ / 鳩どもの家
評価
★★★★

革命がありドラッグがあり吐き気と違和感を感じる自分がいる。「日本語について」はスタイリッシュであるだけ余計に、ナイフのような敵意を突き付けてくるようだ。それでもまだきちんと「着地」する短編集ではある。

『岬』

表紙

発行
1976年2月 文藝春秋 253頁 絶版 購入
発行
1978年12月 文春文庫 267頁 490円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
黄金比の朝 / 火宅 / 浄徳寺ツアー (ほか)
評価
★★★★

芥川賞受賞作を含む短編集。親と子、血、路地というものを描き以後の著作の基礎となった表題作がやはり強い。父への憎悪として異母妹を抱く終末部の心拍数の高まりが圧巻。「浄徳寺ツアー」も暗い気分になれていい。

『蛇淫』

表紙

発行
1976年5月 河出書房新社 225頁 絶版 購入
発行
1980年6月 角川文庫 246頁 絶版 購入
発行
1996年9月 講談社文芸文庫 269頁 987円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
蛇淫 / 荒くれ / 水の家 (ほか)
評価
★★★★

暴力と性が横溢する短編集。無頼であるのに生活臭がじっとりとまとわりついて、その物語湿度は土地に縛り付けられた者たちの自慰のように哀しい。つややかでかつ土俗的な文章は初期にあってすでに天才を感じさせる。

『鳥のように獣のように』

表紙

発行
1976年6月 北洋社 253頁 絶版 購入
発行
1978年12月 角川文庫 308頁 絶版 購入
発行
1981年9月 講談社 253頁 絶版 購入
発行
1994年2月 講談社文芸文庫 342頁 1155円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
二十代の履歴書 / 紀州弁 / 母系一族 (ほか)
評価
★★★★

初のエッセイ集。ジャズと肉体労働、永山則夫へのシンパシーと犯罪ということ、書評と映画評。アングリーとハングリーで切り分け選り分け、積み上げつつ壊す若い苛立ちの俯瞰。「なぜピストルでなく万年筆なのか?」

『枯木灘』

表紙

発行
1977年5月 河出書房新社 296頁 絶版 購入
発行
1993年3月 河出文庫 312頁 599円 購入
発行
1998年9月 小学館文庫(1編を追加、『枯木灘・覇王の七日』と改題) 387頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
枯木灘
評価
★★★★★

『岬』の続編にあたる長編。その評価を絶対的なものにした傑作。父・龍造はここで巨人のように立ち現れる。血の呪縛、土地の呪縛はより強く秋幸を苦しめる。ここで言うのもなんだけど情景描写の的確さには迫力ある。

『中上健次vs村上龍 俺達の舟は、動かぬ霧の中を、纜を解いて、―。

表紙

発行
1977年6月 角川書店 198頁 絶版 購入
発行
1982年1月 角川文庫(『ジャズと爆弾』と改題) 170頁 絶版 購入
共著
共著:村上龍
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
対談 / 短編小説 / 後記的エッセイ (ほか)
評価
★★★

芥川賞を取ったばかりの村上と、その前年に受賞している中上の対談集。共通の教養としてのドラッグ体験やジャズ、文学の行方なんかを語っている。それぞれの立ち位置がはっきり分かる二人の短編小説も併録。若いね。

『十八歳・海へ』

表紙

発行
1977年10月 集英社 204頁 絶版 購入
発行
1980年7月 集英社文庫 205頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
十八歳 / JAZZ / 隆男と美津子 (ほか)
評価
★★★

著者が若い頃の作品を収録した短編集。若者の屈折したエネルギーという原風景。「海へ」の詩的な抒情世界など、「文学」を模索する技巧が衝動を抑圧している。以後の土俗的な力強さを予見させつつもスタイリッシュ。

『化粧』

表紙

発行
1978年3月 講談社 240頁 絶版 購入
発行
1981年6月 講談社文庫 261頁 絶版 購入
発行
1993年8月 講談社文芸文庫 281頁 1029円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
修験 / 欣求 / 草木 (ほか)
評価
★★★

紀州熊野を舞台にした短編集。時にエッセイ風となり時に古典調となる一見不安定な構造も、夢うつつの世界へ誘導する魔の手。聖と俗の振幅が妙に心地よくなってくること必至。この流れは『熊野集』へと引き継がれる。

『紀州 木の国・根の国物語

表紙

発行
1978年7月 朝日新聞社 289頁 絶版 購入
発行
1980年6月 角川文庫 338頁 絶版 購入
発行
1986年4月 角川選書 307頁 絶版 購入
発行
1993年11月 朝日文庫 339頁 絶版 購入
発行
1999年1月 小学館文庫 349頁 品切 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
新宮 / 天満 / 古座 (ほか)
評価
★★★★

著者の故郷でありその物語世界の源泉地である紀伊半島を巡るドキュメンタリ。風俗や歴史を辿るこの書では、当然のことながら重層的に積もる部落差別を中心に論じている。差別・被差別に迫った渾身のルポルタージュ。

『中上健次全発言 1970〜1978

表紙

発行
1978年10月 集英社 459頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
戦後文学の流れから / 闇の力−ディオニソスを求めて / 痩せたソクラテスより太った豚になれ (ほか)
評価
★★★

九年に渡る対談を集めたもの。血気盛んな20代、いきなり喧嘩腰でどうなるかと思うのだが、文学に対する熱い想いが詰まっている。月並みな言い方だけど。対談相手は高橋三千綱、長谷川和彦、村上龍、安岡章太郎など。

『夢の力』

表紙

発行
1979年2月 北洋社 277頁 絶版 購入
発行
1981年7月 角川文庫 330頁 絶版 購入
発行
1982年1月 講談社 277頁 絶版 購入
発行
1994年8月 講談社文芸文庫 356頁 1155円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
海人の海 / 風景の貌 / 心にひびいた言葉 (ほか)
評価
★★★

第二エッセイ集。『枯木灘』の文学的達成感に裏打ちされ歯切れ良い文芸評論や時代分析などを納めている。書くことについて書いた最終章が興味深い。『枯木灘』を書きあげた男が「腕をみがきたい」と言っているのだ。

『水の女』

表紙

発行
1979年3月 作品社 197頁 絶版 購入
発行
1982年11月 集英社文庫 223頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
赫髪 / 水の女 / かげろう (ほか)
評価
★★★

湿った短編集。生活力のない男と、欲望だけを肯定する女の無頼な日々。彼らはセックス以外にはまったく関心がないけれど、雨に閉じ込められた部屋でこのままつながって生きて行けたら、それで幸せなのかもしれない。

『破壊せよ、とアイラーは言った』

表紙

発行
1979年8月 集英社 176頁 絶版 購入
発行
1983年9月 集英社文庫 222頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
RUSH / 破壊せよ、とアイラーは言った
評価
★★★

いきなりの矢沢永吉賛歌につんのめりそうになるエッセイ集。ジャズとクスリに浸かってきた著者が誠実にジャズを語る。ジャズは言語とイコールで物語をやるのと同じだ。高校時代に書いた処女小説を蔵出し収録ている。

『鳳仙花』

表紙

発行
1980年1月 作品社 398頁 絶版 購入
発行
1982年10月 新潮文庫 397頁 580円 購入
発行
1999年3月 小学館文庫 445頁 880円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
鳳仙花
評価
★★★

『枯木灘』の正嫡は『地の果て〜』だがこれは傍系にあたる続編長編。戦前戦後を生きた女の生涯を描く。「龍造に孕まされた女」、秋幸の母親の物語だ。母系社会という物語世界を展開するための地場固めといった風情。

『千年の愉楽』

表紙

発行
1982年8月 河出書房新社 243頁 絶版 購入
発行
1992年10月 河出文庫 291頁 599円 購入
発行
1999年7月 小学館文庫 267頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
半蔵の鳥 / 六道の辻 / 天狗の松 (ほか)
評価
★★★★★

高貴ゆえに澱んだ血の宿命を生きる中本の一統。破滅的に生き若死にしてゆく者らの輪廻を見守るオリュウノオバ、その神の座が禍禍しく迫る長編。貴と賤を描ききり、円環しながら拡大する曼陀羅世界を堪能してみよう。

『地の果て 至上の時』

表紙

発行
1983年4月 新潮社 486頁 絶版 購入
発行
1993年7月 新潮文庫 616頁 品切 購入
発行
2000年2月 小学館文庫 669頁 1050円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
地の果て 至上の時
評価
★★★★

『枯木灘』に続く「秋幸三部作」完結編。弟殺しの罪を償って帰ってきた秋幸は路地が消滅しているのを知る。彼の手でやる前に路地は自壊し、父龍造は自滅する。何もなくなった所から、著者は再び始めようとするのだ。

『風景の向こうへ』

表紙

発行
1983年7月 冬樹社 254頁 絶版 購入
発行
2004年12月 講談社文芸文庫(「物語の系譜」を追加、『風景の向こうへ 物語の系譜』として) 367頁 1418円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
風景の向こうへ 韓国の旅 / 物語が輪舞する / 柄谷行人への手紙 (ほか)
評価
★★★

韓国へ旅してパンソリ・広大の意味を考え、「アジア的法・制度」というキーワードで物語を論じる。どちらも差別の構造に至り、『紀州』ルポでの達成感をもって力強く切り開くエッセイ集。好戦的部分もあったりして。

中上健次書評ページ