椎名誠の100字レビュー(1984後半〜87)

『ネックレス・アイランド』

表紙

発行
1984年7月 駸々堂出版 157頁 絶版 購入
共著
共著:中村征夫
NDC
785(スポーツ・体育>水上競技)
目次
南の島で人工衛星を見た / あれが有名な”便所岩” / ムール貝はうまいか (ほか)
所要
1時間
評価
★★★

海という畏怖すべき驚嘆すべきものを二人が語る。美しい海中写真を収録しながら、この世界を覗くには覚悟がいりますよという話。椎名ファンには垂涎のレア本で、巻頭の短編みたいな章は他にはない独特な調子がある。

『蚊』

表紙

発行
1984年7月 新潮社 251頁 絶版 購入
発行
1987年6月 新潮文庫 276頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
真実の焼うどん / さすらいのデビルクック / 戸間袋急行 (ほか)
評価
★★★★

黒煙のように大発生した蚊と格闘する表題作を含む短編集。超常物と私小説系がともに入っている。「日本読書公社」の読書が仕事ってのは夢のよう。私小説系では哀しくて優しい気持ちになれる「海を見に行く」がいい。

『むははは日記』

表紙

発行
1984年9月 本の雑誌社 318頁 1427円 購入
発行
2002年6月 角川文庫 287頁 580円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
第一章 活字荒野に夕陽が沈む / 第二章 雑誌たちよ / 第三章 むははは日記
評価

本の雑誌連載のエッセイをまとめた「むは」シリーズ第一弾。基本的にこのシリーズは本の周辺話を中心としたもの。朝日新聞で連載された伝説の「マガジンジャック」も収録。雑誌めったぎり!もうない雑誌も多いけど。

『イスタンブールでなまず釣り。』

表紙

発行
1984年10月 情報センター出版局 270頁 絶版 購入
発行
1991年4月 文春文庫 248頁 絶版 購入
NDC
916(日本文学>記録 手記 ルポルタージュ)
目次
イスタンブールでなまず釣り / 西ドイツビールガブのみ血笑旅 / あやしい探検隊突如としてダンゴ屋を攻める (ほか)
評価
★★★

五メートル級の大なまずを求めてなまず博士とともにイスタンブールへ潜入する。と思えばいつのまにか東京湾でキスを釣っている。本場のトルコ風呂?を訪ねたり西日暮里で団子を食ったりもするあやしい探検隊番外編。

『全日本食えばわかる図鑑』

表紙

発行
1985年3月 小学館 236頁 絶版 購入
発行
1989年4月 集英社文庫 303頁 480円 購入
NDC
596(家政学・生活科学>食品 料理)
目次
突然の青イソメ・ゴカイ丼 / 北の演歌か、ウニ・ホタテ丼 / ハバツ課長のカレイ煮定食 (ほか)
評価
★★★★

全国の美味いものを語るエッセイ。いわゆるグルメ志向とは一線を画し、海苔弁当だとかコロッケライスだとかあくまで庶民派なB級で、これがまた美味そうなのである。しかもまた美味そうな文章なのである。抱腹絶倒!

『岳物語』

表紙

発行
1985年5月 集英社 252頁 1260円 購入
発行
1989年9月 集英社文庫 269頁 450円 購入
発行
1998年8月 集英社(『続岳物語』と合本し『定本 岳物語』として) 460頁 2100円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
きんもくせい / アゲハチョウ / インドのラッパ (ほか)
評価
★★★★

息子・岳の成長とそれを見守る父の温かい交流を描いた私小説。喧嘩にキャンプにかけまわる父親似の小学生岳の活躍は、父が回想する少年時代と重なりいきいきしている。理想の父親像とはこの辺にあるんだなぁと思う。

『あやしい探検隊 不思議島へ行く』

表紙

発行
1985年9月 光文社 247頁 絶版 購入
発行
1993年7月 角川文庫 307頁 品切 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
与那国島 シケの東シナ海でカジキマグロに偏愛する / 瓢箪島 うけけけ、と泡だち海ボウズが夜更けに笑う / 由利島 公衆電話をヤブ蚊が守る怪しの無人島 (ほか)
評価
★★★

最北端イソモシリ島から与那国島まで、日本縦断の天幕旅シリーズ第三弾。東京湾にある猿島・浮島でのエピソードが面白い。首都近郊でもこんな探検ができるものなのだな。うすら寒く馬鹿げた光景だけど笑ってしまう。

『シベリア夢幻 零下59度のツンドラを行く

表紙

発行
1985年12月 情報センター出版局 93頁 絶版 購入
発行
1991年3月 集英社文庫(『零下59度の旅』と改題) 159頁 600円 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
影法師の町 / ヤクートの馬と男たち / 氷の国の静かな人々 (ほか)
評価
★★★

世界で最も寒い地域のひとつシベリアの旅行記。汗が凍って、それまで乗っていた黒馬がいつのまにか白馬に変わっていた、というのもすごい。とはいっても写真がメインで、文章は申し訳程度。文庫版はカラー写真増補。

『むはの断面図』

表紙

発行
1986年4月 本の雑誌社 253頁 1223円 購入
発行
2002年11月 角川文庫 254頁 560円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
唐突ヒキツレ発作旅 / 血煙り試写室 / むははは日記 (ほか)
評価
★★★

「むははは」から「むはシリーズ」となったエッセイ集。長文短文、映画時評に旅日記とバラエティ豊かだが、「魚を突く」話が好きかな。まったくもって海の男たちはたくましいのだ。付録の山田対談が軽妙な味でよい。

『岳物語(続)』

表紙

発行
1986年7月 集英社 283頁 1260円 購入
発行
1989年11月 集英社文庫 299頁 490円 購入
発行
1998年8月 集英社(『岳物語』と合本し『定本 岳物語』として) 460頁 2100円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
あかるい春です / 少年の五月 / 盗聴作戦 (ほか)
評価
★★★

父を越えて一個の男となってゆく岳を一抹のさびしさとヨロコビをもって見つめる父。子育て、教育の物語ではなく「男たちの友情物語」完結編。98年の定本では長いあとがきと、岳自身によるエッセイが追加されている。

『フグと低気圧』

表紙

発行
1986年9月 講談社 233頁 絶版 購入
発行
1989年9月 講談社文庫 224頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
蚊学ノ序 / 怒の日 / 背広をかいに (ほか)
評価
★★★

長めのエッセイが数本。特にテーマはない。蚊学があり、背広購入の緊張した面持ちがあり、ウニ・ホヤ・ナマコ絶賛論があり、大人達の運動会がある。だからどやねん!と力任せに言葉乱れる「日常生活日記拡大文章」。

『海を見にいく』

表紙

発行
1987年1月 本の雑誌社 185頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
白い波が崩れ、海鳴りが聞こえても、 / 海を見にいく / 風の中の赤灯台 (ほか)
評価

海を遠望する写真と文章を集めたもの。既出作品からの転載を含むため、ファンには「損」な感じもするかと思われる。ところどころハッとするようなロマンチックな文章もあるしガクの写真も可愛いので許せはするけど。

『パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り

表紙

発行
1987年5月 情報センター出版局 257頁 絶版 購入
発行
1993年3月 三五館 254頁 1325円 購入
発行
1994年6月 集英社文庫 252頁 570円 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
トランクの中 / 寒い夏 / マゼラン海峡 (ほか)
評価
★★★★★

パタゴニア紀行。気温の低さにカメラがだめになる極地冒険だが、危険な精神状態にある妻を日本に残してきたという悔恨の曇天が遠く広がっている。タンポポという哀しい風景が風にそよぐまっすぐな愛の物語でもある。

『少年の夏』

表紙

発行
1987年7月 徳間書店 145頁 絶版 購入
発行
1991年10月 新潮文庫 143頁 絶版 購入
共著
写真:佐藤秀明
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
少年の夏
評価
★★★

著者の息子岳が友人三人と川をカヌーで下る。川原でキャンプをし、海を目指す。先導するのは野田知佑。というひと夏の冒険を小説として描いている。自然を学び、逞しく育て。いいね、少年の夏とはかくあるべきだな。

『ロシアにおけるニタリノフの便座について』

表紙

発行
1987年7月 新潮社 221頁 絶版 購入
発行
1990年5月 新潮文庫 246頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ロシアにおけるニタリノフの便座について / 万年筆いのち / はじめての川下り (ほか)
評価
★★★

便座のないロシアでいかにして用を足すか、という食事中には読んではいけないシベリア紀行を中心として、およそ文学者らしくない万年筆への偏愛や日本の小さな祭など雑多に入っている。シナメンスキー・ネルネンコ。

『菜の花物語 紙すきの歌

表紙

発行
1987年9月 集英社 259頁 品切 購入
発行
1990年10月 集英社文庫 281頁 480円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
菜の花 / 蝉 / ねずみ坂小画廊 (ほか)
評価
★★★

菜の花を持ってインタビューに訪れた雑誌社の女性、カヌー犬ガクとの散歩、私小説として描かれた何気ない風景には優しい風が吹いている。大きな事件は何も起こらないが、どこかしら花の香りの漂うように特に上品だ。

『活字のサーカス 面白本大追跡

表紙

発行
1987年10月 岩波新書 222頁 777円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
カバンの底の黄金本 / 蛭的問題 / オトコの夢 (ほか)
評価
★★★★

どうだどうだの岩波新書進出エッセイ。旅に持っていく本選定における悲喜こもごも、というのは当サイトの永遠テーマでもあるので、むやみに褒めておこう。そのほか本に関する話を中心に、蛭とかインドとかいろいろ。

『シベリア追跡』

表紙

発行
1987年11月 小学館 293頁 品切 購入
発行
1991年3月 集英社文庫 282頁 480円 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
極限の島アムチトカ / シベリア横断零下五十九度 / シベリア横断白夜の夏 (ほか)
評価
★★★

江戸時代に「おろしや」を流浪した大黒屋光太夫の足跡を辿るシベリア極地旅。学術的考証まで含む本格派のルポルタージュである。パンスト友好条約だとか便座問題だとかもちろん単純に笑えるところも多いのだけれど。

『新橋烏森口青春篇』

表紙

発行
1987年12月 新潮社 230頁 絶版 購入
発行
1991年5月 新潮文庫 272頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1章 グリーンスネイク / 第2章 塔屋の車座団 / 第3章 トタン雨 (ほか)
評価
★★★★

『哀愁の〜』続編にあたる自伝的青春小説。小さな会社に勤め始めたころ。業界紙の編集をしてギャンブルをして恋をする。勤め人として「仕事が楽しくなってくる」ムードはなかなかにほほえましい。この前途洋々ぶり。