椎名誠の100字レビュー(1988〜90)

『犬の系譜』

表紙

発行
1988年1月 講談社 279頁 絶版 購入
発行
1991年1月 講談社文庫 261頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
目なし足なし虫 / 小蟹の海 / 金魚と拳骨 (ほか)
評価
★★★

代替わりしてゆく飼犬の系譜を中心に家族の生活と歴史を描いた長編。「ですます」調が懐古ムードを増強する。飼犬が死ぬのは大変な事件で、でもまた新しい犬を飼ってしまう、というのは犬好き家庭にはよく分かる話。

『長く素晴らしく憂鬱な一日』

表紙

発行
1988年2月 マガジンハウス 197頁 絶版 購入
発行
1990年5月 角川文庫 206頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
三時の夕子とゴケアオミドロ / 新宿シルクロードぬめぬめルート / クサカ・シノブは何時笑いますか (ほか)
評価
★★★★

舞台は新宿。視線のままあちこちに想念を蠢かせながら時間はもったりと流れ、ぐったりとした憂鬱をもてあましつつ新宿シルクロード方面へぬるぬると歩く一日を描いた長編。「とりとめもなく」という感触の都市風景。

『熱風大陸 ダーウィンの海をめざして

表紙

発行
1988年4月 講談社 201頁 絶版 購入
発行
1991年5月 講談社文庫 205頁 絶版 購入
共著
写真:山本皓一
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
なんだか熱い胸さわぎ / 赤い砂塵 / オパール掘り (ほか)
評価
★★★

砂嵐にまみれて大陸を疾走する4WD。オーストラリア縦断紀行。そして熱風のなかでビールだ。ってなヨロコビ。暑そうだなー、ビール美味そうだなー、ってただそれだけの文章。いや、悪く言ってるつもりはないけども。

『ハーケンと夏みかん』

表紙

発行
1988年5月 山と渓谷社 202頁 918円 購入
発行
1991年3月 集英社文庫 209頁 400円 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
ハーケンと夏みかん / 雪山ドタドタ天幕団 / 仮称ヤブレガサ山登山記 (ほか)
評価
★★★

あやしい探検隊番外編的紀行。不器用な手つきでハーケンを扱う高校時代から本格的ロック・クライミングに挑む現在まで。温泉ブームで山の秘湯にまでやってくるバカギャルと、それに付随したスケベオヤジを排除せよ!

『さよなら、海の女たち』

表紙

発行
1988年9月 集英社 239頁 品切 購入
発行
1991年11月 集英社文庫 265頁 480円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
グンジョー色の女 / 伊勢海老騒動 / 珊瑚礁の女 (ほか)
評価
★★★

青春私小説系短編集。沖縄の海が舞台だったりするのだが、特有の湿度感はあまりなく、爽やかな風のフィクションになっている。壊れゆく珊瑚礁を哀しむ静かなトーンがあって。こういう女性の描き方はさすがにうまい。

『あやしい探検隊 海で笑う』

表紙

発行
1988年9月 情報センター出版局 302頁 1682円 購入
発行
1993年10月 三五館 333頁 1631円 購入
発行
1994年6月 角川文庫 330頁 品切 購入
共著
写真:中村征夫
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
第一章 巨大魚を抱きにいく / 第二章 あやしい探検隊南太平洋ジグザグ旅 / 第三章 日本海のサメ穴でサメ頭なでなで作戦に挑む (ほか)
評価
★★★

ダイビングしにグレートバリアリーフへ。今でこそ「俗っぽい」行為にも思えるが当時はあやしかった。のか? とにかくパッキリと青い空!透き通る海!の写真がキレイすぎて、リゾート度が高い。好評シリーズ第四弾。

『ねじのかいてん』

表紙

発行
1989年2月 講談社 249頁 絶版 購入
発行
1992年2月 講談社文庫 226頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ねじのかいてん / 水域 / パンツをはいたウルトラマン (ほか)
評価
★★★★

著者の一分野となる超常小説の萌芽、色彩鮮やかな短編集。先人達の影響が随所に出ていて、自分のSF表現を模索している感じも逆に好印象だ。『選考経過』も笑える。後に長編に書き直される『水域』の原型短編も収録。

『土星を見るひと』

表紙

発行
1989年3月 新潮社 227頁 絶版 購入
発行
1992年6月 新潮文庫 235頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
うねり / 壁の蛇 / クックタウンの一日 (ほか)
評価
★★★★★

私小説風のものが多いが、どの短編にも陰鬱な影がある。深い海の底のような。著者は嫌がるだろうが「コッポラコートの私小説」が好きだ。混濁する精神と染みのような苛立ちがリアルに映し出された良質の現況報告で。

『白い手』

表紙

発行
1989年4月 集英社 201頁 品切 購入
発行
1992年6月 集英社文庫 191頁 440円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
白い手
評価
★★★

小学生時代の生活を、子供特有の低い目線で追認した小説。窓から手だけが見える少女の、その手の白さ。恋心以前の表現不可能の心のうごめきや、それよりも友達とバカみたいに走って笑ってるのが楽しかったりする頃。

『ホネのような話』

表紙

発行
1989年8月 東京書籍 289頁 絶版 購入
発行
1994年4月 角川文庫 315頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
正しいCMと正しくないCM 東海林さだお / 探検隊はなぜ怪しいのか 井上ひさし / ホテルの悪口 沢野ひとし (ほか)
評価
★★★

沢野ひとしとか中村征夫とかいわゆる椎名ファミリー的人脈が主体の対談集。気心知れた感覚のフリートークが楽しめる。もちろん、中沢正夫なら精神世界など相手の得意分野の話にはなるわけだが。ほか竹下景子なども。

『風の国へ』

表紙

発行
1989年9月 朝日新聞社 48頁 絶版 購入
発行
1994年7月 新潮文庫(『駱駝狩り』と合本、『風の国へ・駱駝狩り』として) 147頁 絶版 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
I タクラマカン砂漠 / II オアシスの人々 / 笑う風
評価
★★

広大な砂漠、優しい潤いのオアシス、無言で通りすぎる風。楼蘭探検チームとしてタクラマカンを駆け抜けた紀行文、写真集。清廉な文章が乾いた世界の描写に合っている。タイトルどおりに風のさまざまな表情が面白い。

『駱駝狩り』

表紙

発行
1989年9月 朝日新聞社 ?頁 絶版 購入
発行
1994年7月 新潮文庫(『風の国へ』と合本、『風の国へ・駱駝狩り』として) 147頁 絶版 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
駱駝狩り / 笑うラクダ
評価
★★

『風の国へ』と同じ版型の写真集で、こちらは同じ砂漠でもオーストラリア。多くの生き物が逞しく生きてる荒野。ラクダを捕まえて調教するノウハウが詳しく描かれ、いかに奇妙な動物かが分かる。エアーズロックへも。

『酔眼装置のあるところ』

表紙

発行
1989年12月 本の雑誌社 303頁 1427円 購入
発行
2003年4月 角川文庫(『ばかおとっつあんにはなりたくない』と改題) 315頁 620円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
七年ぶりに見つけたサメの本 / マミヤプレスに再会した日 / 四帖半カラオケオペラのだら汗地獄 (ほか)
評価
★★★

巻末に「この本の中で著者が読んだ本一覧」が付くほど本に関しての話題ばかりのエッセイ集。書評ではなく生活に密着した読書習慣という風情。屋根裏部屋にたまった雑誌類を一念発起処分してゆく哀愁ある背中がよい。

『アド・バード』

表紙

発行
1990年3月 集英社 393頁 品切 購入
発行
1997年3月 集英社文庫 574頁 950円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1章 出発 / 第2章 暗闘 / 第3章 潜入 (ほか)
評価
★★★★★

日本SF大賞受賞の大作。高度に発達した広告によって滅びた未来都市。蛇口を捻れば宣伝文句が流れ、鳥たちは商品を謳う。異形な生物に導かれ都市中心部へ。これを読めば著者への印象がガラリと変わる。カッコよすぎ。

『小さなやわらかい午後』

表紙

発行
1990年5月 本の雑誌社 77頁 1631円 購入
NDC
748(写真・印刷>写真集)
目次
小さなやわらかい午後
評価
★★★

モノクロ写真に短文が付く形のいつもの写真集。それでも海にくるとクハクハ笑う犬、水辺に突ったつ名も知らぬ小さな木などのイメージは、タイトルどおりのやわらかい午後に映えて、抒情的風景を優しく包むのである。

『街角で笑う犬』

表紙

発行
1990年6月 朝日新聞社 51頁 絶版 購入
発行
1997年10月 新潮文庫 148頁 絶版 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
島での五日間 / 下町の運河を下る / 風のとまった村 (ほか)
評価
★★★

田舎の素朴な風景を撮った写真と、それに添えられた文章からなる。どこまでも伸びる道、冬の祭り、気の置けない仲間達とのキャンプ、なにより子供達。モノクロームの世界で止まった時間が語りかけてくる彼らの時代。

『水域』

表紙

発行
1990年9月 講談社 294頁 絶版 購入
発行
1994年3月 講談社文庫 287頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
水域
評価
★★★★★

SF3部作第2弾。なんらかの理由で水没した世界を舟でさまよう男の冒険譚だ。終末的風景の中を、怪しい生物が跋扈する。人をまず疑ってみなければ生きていけない世界で、ふいに出会う愛。そして感動のラストシーンへ。

『発作的座談会』

表紙

発行
1990年11月 本の雑誌社 349頁 1631円 購入
発行
1996年10月 角川文庫 375頁 品切 購入
共著
共著:木村晋介沢野ひとし目黒考二
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
人生はとりあえず「?」である / モンゴウイカが空を翔ぶ / 大盛りラーメン十三番勝負 (ほか)
評価
★★★★

本の雑誌社幹部(笑)四名による座談会。初期は本周辺の話があるのだが、次第に「茶わん蒸しはおつゆかおかずか」とかワケのわからないテーマになる。もとより気の合う仲間同士の雑談なのだから楽しい会話を楽しもう。

『武装島田倉庫』

表紙

発行
1990年12月 新潮社 207頁 絶版 購入
発行
1993年11月 新潮文庫 214頁 420円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
武装島田倉庫 / 泥濘湾連絡船 / 総崩川脱出記 (ほか)
評価
★★★★★

SF3部作第3弾。戦後の泥濘化した世界を生きぬく男たち。混乱に乗じた略奪や局地的衝突は絶えず、倉庫を守るにも銃器が手放せない。全体が曇天の薄暗さで鬱々としているが、物語が湧き立つ熱い奔流に読後感は良好だ。