島田雅彦の100字レビュー(1983〜91)

島田雅彦書評ページ

『優しいサヨクのための嬉遊曲』

表紙

発行
1983年8月 ベネッセコーポレーション 218頁 絶版 購入
発行
1985年11月 福武文庫 241頁 絶版 購入
発行
2001年8月 新潮文庫 196頁 380円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
優しいサヨクのための嬉遊曲 / カプセルの中の桃太郎
評価
★★★★

タイトルのインパクトで世間を揺すったデビュー作。「サヨク」という意義よりも、千鳥とみどりの純愛物語として読んだほうが楽しい。文体の薄っぺらさは時代に対する悪意で、初期のアピールではある。つまり知能犯。

『亡命旅行者は叫び呟く』

表紙

発行
1984年2月 ベネッセコーポレーション 229頁 絶版 購入
発行
1986年1月 福武文庫 248頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
亡命旅行者は叫び呟く / 大道天使、声を限りに
評価
★★★★

亀頭と私のああソ連! ヒコクミンであり続けるためにロシアを犯す旅物語。サヨクの続編的のような様相を呈しているが文学を遊んでしまえるのは著者の知性か。「パロディ」として書かれている技巧修練のような二編。

『夢遊王国のための音楽』

表紙

発行
1984年8月 ベネッセコーポレーション 243頁 絶版 購入
発行
1993年10月 福武文庫 239頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
夢遊王国のための音楽 / スピカ、千の仮面
評価
★★★

クラシック音楽のように無節操な中編二編。あえて蛇足をやることで物語を破綻させては喜んでいる文学初期衝動。言いたいことなんて始めからないのかも知れない。その調和と裏切りのリズムは現在まで続くスタイルだ。

『中枢は抹消の奴隷 解剖学講義

表紙

発行
1985年7月 朝日出版社 253頁 絶版 購入
発行
2004年7月 朝日出版社(『ネコのヒゲは脳である』と改題) 284頁 品切 購入
共著
共著:養老孟司
NDC
491(医学・薬学>基礎医学)
目次
中枢は末梢の奴隷
所要
3時間20分
評価
★★★

解剖学の教えを請う対談集。機能と形態の関係、さらに知覚・認識論を踏まえた「人間以上」への言及が興味深い。『バカの壁』ブームの後「20年前に対談してたんだぜ」と出た新装版は内容にそぐわないほど可愛い装幀。

『天国が降ってくる』

表紙

発行
1985年10月 ベネッセコーポレーション 298頁 絶版 購入
発行
1990年12月 福武文庫 330頁 絶版 購入
発行
2000年10月 講談社文芸文庫 361頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
若い遺伝子たちの肖像 / 二十一世紀旗手真理男の遍歴時代 / ジークフリート、モスクワへの旅 (ほか)
評価
★★★

嫌なやつを書かせたら格別。自意識を糧として生きる繊細で傲慢な男の生涯。読者を不愉快にすることで取り込む作法は『僕は模造人間』と共通するが、これは思索的に不充分であるだけ混迷度は高い。マリオ? なぜだ。

『偽作家のリアル・ライフ』

表紙

発行
1986年1月 講談社 287頁 絶版 購入
発行
1989年10月 講談社文庫 264頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ユートピア / 青二才から青0才へ / 夢想者が考える世界の再生 (ほか)
評価
★★★

第一エッセイ集。若い才能がきらめく見事な文学理論、時代認識、アフォリズム。表題となった一文はエッセイではないのだが、意味不明の名作。史上最多という記録をもつ著者の「芥川賞落選御礼日記」なんてのも収録。

『僕は模造人間』

表紙

発行
1986年4月 新潮社 203頁 絶版 購入
発行
1989年10月 新潮文庫 199頁 380円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一楽章 はずれ玉 / 第二楽章 間男 / 第三楽章 賭博者 (ほか)
評価
★★★★★

「自意識過剰な夢想的偽悪少年」の生育過程を描く、著者の毒全開の長編。彼は常に自分を演じている。行動は全て他人を意識した嘘で言葉は自らを裏切る。「思春期」に重ねあわせて読むことも拒否する一大青春讃歌だ。

『ドンナ・アンナ』

表紙

発行
1986年9月 新潮社 205頁 絶版 購入
発行
1990年10月 新潮文庫 204頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
観光客 / 聖アカヒト伝 / ある解剖学者の話 (ほか)
評価
★★★★

デタラメで破壊的な疾走感という魅力。どうしてこんな作品ばかり書いてしまうのか、悪意に満ちた短編集。オペラ的不均衡な愛の抒情詩たる表題作をはじめ四編を収録。「聖アカヒト伝」はあまりの毒々しさに気分爽快。

『語らず、歌え』

表紙

発行
1987年1月 ベネッセコーポレーション 271頁 絶版 購入
発行
1991年8月 福武文庫 268頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
文体崇拝者の死 / 分子・機械の文学へ / ミシマが夢で私に語ること (ほか)
評価
★★★

エッセイ集。前半には三島論が多面的に展開され、後半はクラシック音楽などいろいろ。スタイリスト(文体崇拝者)とパロディストの違い、そして自分がパロディストであるという自負。河合奈保子アイドル論ってのも…。

『未確認尾行物体』

表紙

発行
1987年10月 文藝春秋 188頁 絶版 購入
発行
1993年7月 文春文庫 217頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
未確認尾行物体 / ビデオ・イコン / エイズ友の会 (ほか)
評価
★★

「エイズのオカマ」に追われる恐怖を描く長編。彼女(彼?)をめぐるドタバタ悲劇。時代のためか、この茶化し方にいくらか差別的ニュアンスを感じないこともないのだが、一人で死んでたまるかと鬼気迫るオカマは強烈。

『ストレート・アヘッド』

表紙

発行
1988年2月 コナミ出版 198頁 絶版 購入
共著
共著:川村毅
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
第1章 八〇年代・新中間層をめぐって / 第2章 都市の思考回路 / 第3章 人生を映画のように (ほか)
評価
★★★

書くことと演じることを軸に、80年代を検証し、90年代を予見。都市論に絡んでの原風景の捨て去り方は潔くかっこよい。ところで版元のコナミってゲームの? 対談中でファミコンの話題が出たりするのもそのせいなの?

『ユラリウム』

表紙

発行
1988年3月 河出書房新社 154頁 絶版 購入
発行
1992年10月 河出文庫(『ルナ』と合本、『ユラリウム・ルナ』と改題) 242頁 絶版 購入
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
ユラリウム
評価
★★★

失われた恋人を訪ねて冥界を浮遊する幻想的な戯曲。多分に教養的というかスタイリッシュ。「クラシック」から入った作家はこういうものを書くんでしょうな。文庫版は彼の戯曲ニ編がまとめて読めるようになってます。

『永劫回帰マシーンの華やぎ 作家の方法

表紙

発行
1988年3月 岩波書店 223頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
肉体の言葉=言葉の肉体 / 円環の切断 / 多神教的華やぎ
評価
★★★

講演を採録したもの。ニーチェ、フーコー、ドストエフスキーを取り上げ文学と哲学を論じている。作家が哲学を分かり易く噛み砕いたというものではなく淡々と語るのみ。それは著者の真面目さを示すものなのだろうか。

『天使が通る』

表紙

発行
1988年11月 新潮社 260頁 絶版 購入
発行
1992年5月 新潮文庫 319頁 絶版 購入
共著
共著:浅田彰
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ダンテ−愛の超新星 / ニーチェ−超人のオペラ・ブッファ / フーコー−悦ばしき回帰 (ほか)
評価
★★★

ダンテ、ニーチェ、フーコー、三島由紀夫、ヴェンダースという思索する五人を論じた対談集。当時の哲学的文脈になるわけだが、スキゾキッドと青二才のそれぞれに偏った「知」が意外に同方向を志向していて驚いたり。

『夢使い レンタルチャイルドの新ニ都物語

表紙

発行
1989年11月 講談社 431頁 絶版 購入
発行
1995年5月 講談社文庫 440頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
舞子の嗅覚 / 隕石と乳母車 / しょうがないという理論 (ほか)
評価
★★★★★

ニューヨークを歩く皮膚感の長編。孤独を切り売りするレンタルチャイルド、心の友ミカイナイトといろんな仕掛けがあり、舞台も世界を駆け巡る。文章修辞をとっても「模造人間」から確実に抜け出た会心の作といえる。

『ルナ 輪廻転生の物語

表紙

発行
1990年5月 河出書房新社 150頁 絶版 購入
発行
1992年10月 河出文庫(『ユラリウム』と合本、『ユラリウム・ルナ』と改題) 242頁 絶版 購入
共著
演出ノート:蜷川幸雄
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
ルナ
評価
★★★

戯曲第二弾。ダンテの『神曲』を下敷きに、天使と娼婦の魂が融合拡散する。「蜃気楼を見ているような目をした、空気のように目立たない、美しい娼婦を見ませんでしたか?」バベルの塔風の舞台、演出ノートも面白い。

『ロココ町』

表紙

発行
1990年7月 集英社 243頁 品切 購入
発行
1993年8月 集英社文庫 249頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
迷子の探偵 / 遊園地の進化論 / 情報屋 (ほか)
評価
★★★

狂った都市はひとつの遊園地として閉塞する。電気的パラレルワールドで新たな倫理と冗談を打ちたてんとする長編。SF的文調に成功しているかどうかは疑問があるが、神としてのギルガメ師の視座と壊れた人々は面白い。

『アルマジロ王』

表紙

発行
1991年4月 新潮社 222頁 絶版 購入
発行
1994年6月 新潮文庫 228頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ユダヤ系青二才 / 砂漠のイルカ / 優雅な野良犬 (ほか)
評価
★★★★

短編集。砂漠化した都会を駆ける救世主、甲冑を纏ったアルマジロ王を求める表題作。みな独りきりで、救われたいと願っている。みなし子たちは流れる。直に死と向き合うラストニ編が異質に響きながらも哀しく揺れる。

『愛のメエルシュトレエム 島田雅彦クロニクルズ1987-1991

表紙

発行
1991年12月 集英社 317頁 絶版 購入
発行
2000年2月 集英社文庫(『ヒコクミン入門』と改題) 320頁 580円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
1987年 / 1988年 / 1989年 (ほか)
評価
★★★

ベルリンの壁の崩壊、湾岸戦争など移ろう時代のエッセイ集。知的ゲリラ、あるいは下半身至上主義者がめぐる世界紀行としていろいろ収録。湾岸戦争における日本の戦争に関する論考は、30歳となった青二才の現在地点。

島田雅彦書評ページ