清水義範の100字レビュー(1991〜92)

『ナウの水びたし』

表紙

発行
1991年3月 文藝春秋 270頁 絶版 購入
発行
1994年3月 文春文庫 326頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
ブランドごっこ / 清潔仮面 / お金大好き (ほか)
評価
★★★

ブランド信仰、リゾート・ブームなどナウな現象を分析する。素直なエッセイかと思いきや泉麻人系エッセイのパスティーシュだったりするから油断はならない。これがナウだと「言ったもん勝ち」よりは真っ当だけれど。

『ジャンケン入門』

表紙

発行
1991年3月 天山出版/大陸書房 243頁 絶版 購入
発行
1994年3月 角川文庫 239頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ジャンケン入門 / 窮理オレンジ教の教え / チャンバラ・ギャング (ほか)
評価
★★★★

基本から応用までジャンケンの入門書という体裁の表題作は秀逸。当たり前のことをもっともらしく語る類の笑いは独壇場。冗談は真顔で言ってこそ面白いのだ。もはや何を描いても清水流、という安定期にあたる短編集。

『主な登場人物』

表紙

発行
1991年5月 実業之日本社 321頁 絶版 購入
発行
1994年5月 角川文庫 349頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
主な登場人物 / ザ・ニュース・ウォッチ / 近頃の若者は (ほか)
評価
★★★★

「題材を思いつきさえすれば。まるで何かの病気の発作のように作品が書けてしまうというキョーフの時期」とあとがきにある。それが全てパスティーシュとして賞賛された恐怖の時期でもある。「註釈物語」が大破格的。

『続・虚構市立不条理中学校』

表紙

発行
1991年6月 徳間書店 275頁 絶版 購入
発行
1994年10月 徳間文庫(正編と合本『虚構市立不条理中学校(全)』として) 510頁 絶版 購入
発行
1998年12月 講談社文庫(正編と合本『虚構市立不条理中学校』として) 565頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 女性教師 / 第二章 生活指導 / 第三章 校則 (ほか)
評価
★★★★★

学校に監禁された主人公は教師達の論理矛盾を突きながら出口を目指す。学校という治外法権の管理社会。不可解な校則。教育とはそもそも何なのだ。大仰な舞台装置で議論を闘わせる「ギロン・アクション小説」完結編。

『ムイミダス』

表紙

発行
1991年7月 毎日新聞社 251頁 1223円 購入
発行
1994年9月 文春文庫 270頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
超・新語辞典 / 一夜漬け・人名辞典 / むかしありけり事典 (ほか)
評価
★★★

もちろん『イミダス』のパロディ。新語、人名、地名などが列記解説されている。トレンドとか逆玉とかキレカジとかここで言う「新語」は今やツライのだが、当時の流行をテーマにしたエッセイとして懐古的には読める。

『お金物語』

表紙

発行
1991年10月 朝日新聞社 287頁 絶版 購入
発行
1994年10月 講談社文庫 301頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
四十五年 / 事の始め / 貧乏な彼 (ほか)
評価
★★★

貨幣制度、倹約、遺産相続などお金をテーマとした短編集というかエッセイ集。お金のこととなるとみなドタバタ喜劇になってしまうのは何故だろう。でもゴタゴタを通してもいい奴ばかりになるのは著者の作風ではある。

『江勢物語』

表紙

発行
1991年11月 角川文庫 256頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
現代語訳「江勢物語」 / 生臭心経 / スノー・カントリー (ほか)
評価
★★★

文庫オリジナル短編集。英訳された川端康成『雪国』をさらに和訳するとか、お経の意味とか翻訳的言葉の面白さに迫るパスティーシュと、エッセイ風のインド旅行記からなる。どちらかといえば初期の実験小説の臭いだ。

『黄昏のカーニバル』

表紙

発行
1991年11月 徳間書店 265頁 絶版 購入
発行
1995年11月 徳間文庫 286頁 絶版 購入
発行
2000年12月 講談社文庫 288頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
外人のハロランさん / 黄昏のカーニバル / 唯我独尊 (ほか)
評価
★★★★

アイデア勝負の分かり易すぎるSFではあるのだが、独特の生活臭の描き方で著者らしい作品集となっている。そういう意味では誰もいなくなった世界で黙々と働き続けるコンピュータという表題作での死のイメージは異色。

『単位物語』

表紙

発行
1991年11月 朝日新聞社 244頁 絶版 購入
発行
1994年11月 講談社文庫 261頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
小間切れ五十匁 / マイナス二七三度の恋 / 耐え難い圧力 (ほか)
評価
★★★

『お金物語』に続き、温度やエネルギー、距離など単位を考えた短編集あるいはエッセイ集。このページのようなミシュランなんてヘンテコな単位もあったり、ヘクトパスカル?ってたり。前作が経済なら今回は「科学」。

『柏木誠治の生活』

表紙

発行
1991年12月 岩波書店 293頁 1478円 購入
発行
1995年4月 新潮文庫 299頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
柏木誠治の生活
評価
★★★

45歳の課長の正しきサラリーマン風景。四人家族の家庭状況など、ただ正確に写し取ることだけを目的としていて、「模写」という意味では生活をパスティーシュしている。以後のひとつの方向性ではある平凡な長編小説。

『人生うろうろ』

表紙

発行
1992年1月 中央公論新社 248頁 絶版 購入
発行
1995年5月 中公文庫 299頁 絶版 購入
発行
2002年12月 講談社文庫 265頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
野間家先祖代々之墓 / 蛭子坂産婦人科 / 御社に惚れました (ほか)
評価
★★★

ゆりかごから墓場まで、人生のさまざまな場面を切り取った短編集。結婚であったりマイホームを持つということであったり、各種イベントがそこはかとない喜び哀しみのうちに巡る。やはり観察眼の確からさが冴えるね。

『神々の午睡』

表紙

発行
1992年3月 講談社(上) 255頁 絶版 購入
発行
1992年3月 講談社(下) 261頁 絶版 購入
発行
1995年3月 講談社文庫(上) 286頁 絶版 購入
発行
1995年3月 講談社文庫(下) 299頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
前奏曲 / 第一部 開祖たち / 第二部 物語 (ほか)
評価
★★★

教育の次は宗教に挑む長編。ジブ教・アルカマ教・サライ教という三大宗教によるパラレルワールド。切り刻み方は実に清水流だが少々遊びすぎ。あるいは「宗教はこれくらい笑っちゃったほうがいいのだ」という主張か。

『ダムとカンナとシンシロシテン』

表紙

発行
1992年3月 文藝春秋 220頁 絶版 購入
発行
1995年8月 文春文庫(『酒とバラの日々』と改題) 238頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ダムとカンナとシンシロシテン / 梅は散ったか / 酒とバラの日々 (ほか)
評価
★★★

父に連れられてその仕事場であるダム建設現場を訪れるという自伝的小説ほか数編。シンシロシテンという語呂は何か昆虫的な響きだがここでは父の勤める新城支店なのでありますね。好きなタイトルなのだが文庫で改題。

『世界衣装盛衰記 (よのなかはきぬぎぬのうつろい)

表紙

発行
1992年5月 角川書店 220頁 絶版 購入
発行
1996年1月 角川文庫 233頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
伝説の展開図−偽ビートルズ伝 / 世界衣装盛衰記
評価
★★

評伝がテーマの中編2編。表題作はシャネルやアルマーニなどファッション・デザイナー9人を取り上げ、それぞれ文体模倣(漱石から椎名誠まで!)で語る力作。もう一つはビートルズの評伝で、よろよろの訳詞に脱力笑い。

『青山物語1971』

表紙

発行
1992年6月 光文社 226頁 絶版 購入
発行
1995年5月 光文社文庫 249頁 500円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一章 四月 / 第二章 初仕事 / 第三章 梅雨 (ほか)
評価
★★★

冴えない青春時代を描く自伝的長編。小説家になるためには東京へ出なければならない、と名古屋から青山の会社に入った新入社員的ドタバタ。心細く心配性ながら大仕事をこなし器用に生きてる、ある種スマートな作品。

『パスティーシュと透明人間』

表紙

発行
1992年6月 実業之日本社 302頁 絶版 購入
発行
1995年10月 新潮文庫 309頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
言葉と物語 / 名古屋と旅 / 手あたり次第 (ほか)
評価
★★★

これまで照れからか等身大のエッセイを書いてこなかった著者だが (エッセイのパロディを除けば)恐らく初のエッセイ集。言葉と物語について、もちろんパスティーシュということについて、あるいは名古屋について語る。

『世界文学全集』

表紙

発行
1992年7月 集英社 397頁 品切 購入
発行
1995年8月 集英社文庫(前半を「普及版第1期」として) 254頁 品切 購入
発行
1995年9月 集英社文庫(後半を「普及版第2期」として) 263頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一回配本 オデュッセイア / 第二回配本 マハーバーラタ / 第三回配本 聖書 (ほか)
評価
★★★★

ちょっとすごいタイトルの短編集。水滸伝や三銃士や罪と罰など世界の文学を題材にした自由奔放パロディ。聖書でも遊んでる。「初期化するエデンの東のかたに園を設けてアダムを左クリックします。」なんだこれ(笑)。

『スシとニンジャ』

表紙

発行
1992年10月 講談社 325頁 絶版 購入
発行
1995年10月 講談社文庫 337頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
到着 / 二人のガイジン / 東京日記 (ほか)
評価
★★★

アメリカの片田舎から日本へやってきた青年の長編。すしを食べて侍になるんだ。夢と希望の異文化交流記。「外国人の日本観」という物語をパロディ化しつつも、日本人が忘れたブシドーを解するサウスダコタ男は強い。

『日本文学全集』

表紙

発行
1992年10月 実業之日本社 401頁 絶版 購入
発行
1996年2月 集英社文庫(前半を「普及版第1集」として) 251頁 470円 購入
発行
1996年3月 集英社文庫(後半を「普及版第2集」として) 249頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一回配本 古事記 / 第二回配本 源氏物語 / 第三回配本 方丈記 (ほか)
評価
★★★★

今度は日本文学編。ニュース・ステーションの一コーナーとして松尾さんが奥州から中継するという趣向の奥の細道がうまい。高校野球になっちゃってる南総里見発犬伝とか「吾輩は猫である。名前はクロという。」とか。