清水義範の100字レビュー(1999〜2000)

『永遠のタージ』

表紙

発行
1999年2月 角川文庫 242頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一話 純潔の月 / 第二話 父と息子 / 第三話 反逆の王子 (ほか)
評価
★★★

タージ・ハマルという華麗な廟を建てるに至ったムガール帝国とは何だったのか、という考察。著者のインド好きの一つの答えだが、いつもながらの文体で読みやすく分かりやすい。結論はない。だってそれは歴史だから。

『蛙男』

表紙

発行
1999年5月 幻冬舎 262頁 品切 購入
発行
2002年4月 幻冬舎文庫 274頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
一、水の章 / 二、草の章 / 三、虫の章 (ほか)
評価
★★★

自分の体が徐々に蛙になってゆく。その変化は自分にしか見えていないらしい。愛する人にも話さずにただ受け入れてゆく。「それでも人を愛せますか」でなく「プールで泳ぐのが最近楽しい」なのがほのぼのとした限界。

『迷宮』

表紙

発行
1999年6月 集英社 259頁 1575円 購入
発行
2002年5月 集英社文庫 311頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
一日目(犯罪記録) / 二日目(週刊誌報道) / 三日目(手記) (ほか)
評価
★★★

記憶喪失の男が治療と称して読まされる、猟奇的な性器切除事件の記録。ここから何を思い出せと言うのか? 自分は誰なのか? というシリアス系。ミステリーとしては弱いのだろうが、著者らしい言葉の綾が楽しめる。

『青二才の頃 回想の'70年代

表紙

発行
1999年9月 講談社 310頁 1890円 購入
発行
2003年5月 講談社文庫 317頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
万博とよど号ハイジャックで始まった / 三島由紀夫の割腹自殺に大ショック / ビューティフルじゃなかった我が就職 (ほか)
評価
★★★

人それぞれの(島田雅彦の専売特許っぽいけど)青二才の頃って、それが何年代であろうとも記憶に刻まれるものなんだよ。70年代の風俗を回顧しながら自伝色が強くなるのは当然。著者の結婚という挿話は心温まるいい話。

『今どきの教育を考えるヒント』

表紙

発行
1999年10月 講談社 248頁 絶版 購入
発行
2002年10月 講談社文庫 253頁 絶版 購入
NDC
370(教育>教育)
目次
教育を大きな視点で考える / 教育業界という奇妙な世界 / 若者の問いに大人として答える (ほか)
評価
★★★

教育大学卒業の著者による教育論。学校教育、家庭教育、国家としての教育などさまざまなレベルで語られる。「なぜ人を殺しちゃいけないの?」にまで平易な言葉で答えようとする姿勢がいい。味のある脱線が彼らしく。

『もっとどうころんでも社会科』

表紙

発行
1999年12月 講談社 260頁 絶版 購入
発行
2003年7月 講談社文庫 262頁 520円 購入
共著
え:西原理恵子
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
それにつけても土地のほしさよ / ニッポンよニッポン、あーあニッポン / 思えば何でも食うもんだ (ほか)
評価
★★★

しつこくも二冊目の社会科。西原の漫画のほうが面白かったりするのも相変わらず。土地問題や忠臣蔵から最終回は「家族」というお得意のテーマで落とし前。しかしすでに算数の雑誌連載が始まっていたりするのである。

『二重螺旋のミレニアム』

表紙

発行
2000年1月 マガジンハウス 277頁 1680円 購入
発行
2004年4月 幻冬舎文庫(『遺伝子インフェルノ』と改題) 347頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1話 いかにして人類は絶滅すればよいのか / 第2話 ブレインエイク / 第3話 ビリー・ミリガン・ゲーム (ほか)
評価
★★★

遺伝子操作、不老不死、クローンなどを扱った近未来SFたる連作。つまり渡辺浩弐風。珍しくハードボイルドタッチだが、意図的にやっている割には著者らしくないかも。「ありそうなことだな」というリアリティはある。

『もうなつかしい平成の年表』

表紙

発行
2000年5月 講談社 320頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
平成元年の年表 / 平成二年の年表 / 平成三年の年表 (ほか)
評価
★★★

平成元年から十年までの年表。清水流のウソ年表なのかと思えばさにあらず、本物の年表なのである。その時々に起こった事件を、コメントを付記しながら並べてある。新しい時代が胎動するように、清水の作風も変わる。

『日本語必笑講座』

表紙

発行
2000年6月 講談社 244頁 絶版 購入
発行
2003年11月 講談社文庫 308頁 600円 購入
NDC
810(日本語>日本語)
目次
第I室 ことばの見本市 / 第II室 流行語変遷史 / 第III室 ヘンナ語みっけ! (ほか)
評価
★★

「面白きは日本語である」という一環した姿勢のエッセイ集。もう著者の手癖みたいなもんである。変質してゆく日本語を分析。「あの無アクセント方言が今はナウいらしいのだ」なんて言い方はちょっとキツイのだけど。

『みんな家族』

表紙

発行
2000年6月 文藝春秋 325頁 絶版 購入
発行
2004年8月 文春文庫 511頁 800円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
六十四年一月七日 / ぼんやりした不安 / 豊川家の春 (ほか)
評価
★★★

著者自身を模した家族三代に渡る「昭和」の物語。劇的な環境変化における平凡達の記憶といったところだが、生きて子を成すことの意味を戦中・戦後の風俗を交えつつ考える。それぞれが最終的にみんな家族になるのね。

『八つの顔を持つ男』

表紙

発行
2000年10月 朝日新聞社 254頁 絶版 購入
発行
2004年9月 光文社文庫 281頁 540円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
新戦略 / 郷里 / 旧友 (ほか)
評価
★★★

会社での顔、父親としての顔、同窓生に見せる顔、不倫者としての顔。平凡なサラリーマンが持つ様々な顔にスポットを当てた連作小説。小手先の技術はもういいと言わんばかりのオーソドックスさと、同時にある奇妙味。

『日本語の乱れ』

表紙

発行
2000年11月 集英社 269頁 1575円 購入
発行
2003年5月 集英社文庫 302頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
日本語の乱れ / 場所か人か / たとえて言うならば (ほか)
評価
★★★

ほのかにパスティーシュな短編集。どれもエッセイ風のすわりのよさがあるので「ほのかに」なんて言ってみるけども。後書きも兼ねるような好印象な作品で締めてたり随所に職人風情はある。音声入力ソフトには笑った。

『銀河がこのようにあるために』

表紙

発行
2000年12月 早川書房 293頁 1575円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
銀河がこのようにあるために
評価
★★★

100年後のタクシーってこんな感じ?って想像を著者が楽しんでる正統的SF。宇宙物理学や遺伝子工学、人類考古学など詰め込んでお得感あり。「脳の傾斜」という新鮮な論説や「21世紀末」のカタルシスぶりはなかなか。