高橋源一郎の100字レビュー(1982〜97)

高橋源一郎書評ページ

『さようなら、ギャングたち』

表紙

発行
1982年10月 講談社 285頁 絶版 購入
発行
1985年3月 講談社文庫 313頁 絶版 購入
発行
1997年4月 講談社文芸文庫 381頁 1260円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一部「中島みゆきソング・ブック」を求めて / 第二部 詩の学校 / 第三部 さようなら、ギャングたち
評価
★★★★★

衝撃の文壇デビュー作。様々な冗談がつめこまれているが悪ふざけにはならない。すべてはいたってシリアスなのだ。メタフィクションでありながら、終章のカタルシスに向けてあらゆる事象が収束しはじめるのは感動的。

『虹の彼方に オーヴァー・ザ・レインボウ

表紙

発行
1984年8月 中央公論新社 201頁 絶版 購入
発行
1988年4月 新潮文庫 193頁 絶版 購入
発行
2006年11月 講談社文芸文庫 236頁 1155円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一話 虹の彼方に / 第二話 ラストダンスは私に / 第三話 クリストファー・コロンブスのアメリカ大陸発見 (ほか)
評価
★★★★★

クリストファー・コロンブスになるために、お弁当をもって出発しよう。金子光晴や『カール・マルクス』が踊る優しい寝物語。これほど知的でこれほど意味不明瞭な物語を誰が書けるだろう? 栄光のポストモダニズム。

『ジョン・レノン対火星人』

表紙

発行
1985年1月 角川書店 243頁 絶版 購入
発行
1988年10月 新潮文庫 207頁 絶版 購入
発行
2004年4月 講談社文芸文庫 247頁 1155円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 ポルノグラフィー / 1章 「すばらしい日本の戦争」 / 2章 十九世紀市民小説 (ほか)
評価
★★★★★

「リアルなものはあらずや?」ポルノ作家とT・Oは「すばらしい日本の戦争」の頭から死体を追い出すレッスンを始める。初期三部作では実は一番分かりやすい。一番グロテスクだから。笑うのを躊躇うほど湿って重いが。

『ぼくがしまうま語をしゃべった頃』

表紙

発行
1985年6月 宝島社 363頁 絶版 購入
発行
1989年6月 新潮文庫 466頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
2×30×12のための2×12 / 機械仕掛けの象使い / 言葉に飢えていた (ほか)
評価
★★★

身辺雑記があり、書評があり、対談があり、アイドル論がある棚卸的エッセイ集。初期三部作の熱狂と放心のなかで生まれた詩的駄文。「女性詩人たちへの14の質問」が面白い、そこからどんな結論が出るのかは別として。

『朝、起きて、君には言うことが何もないなら』

表紙

発行
1986年8月 講談社 162頁 絶版 購入
共著
写真:英隆
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
朝、起きて、君には言うことが何もないなら
評価
★★★

女優や歌手、愛すべき女達の肖像と、彼女達が凝視める先にあるポップでスイートな物語。僕は「おはよう」としか言えないけれど、君はきっと微笑ってくれるだろう。その後は、インディアン・コーラを一緒に飲むのだ。

『ジェイムス・ジョイスを読んだ猫』

表紙

発行
1987年2月 講談社 231頁 絶版 購入
発行
1990年8月 講談社文庫 235頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
旅日記(のようなもの) / ブックインタヴュー / '60年代のおもちゃ箱
評価
★★★★

エッセイ集だが小説として読んでも構わない。テイストとして『虹の彼方に』的なので。交遊録な「荻窪タイムス」が最高。「マレーシア式読書法」も素晴らしい。こういう風に読書したいもんだ。その他文学話いろいろ。

『優雅で感傷的な日本野球』

表紙

発行
1988年3月 河出書房新社 264頁 絶版 購入
発行
1991年4月 河出文庫 258頁 絶版 購入
発行
2006年6月 河出文庫(新装版) 304頁 735円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
偽ルナールの野球博物誌 / ライプニッツに倣いて / センチメンタル・ベースボール・ジャーニー (ほか)
評価
★★

長編。ストーリーからの遠心分離はますます速度を増し、野球が書いてあるのかどうかもあやふや。うーん、僕にはさっぱり分からない作品なんです、三島賞にも拘らず。野球が嫌いという個人的事情もあるかもしれない。

『文学がこんなにわかっていいかしら』

表紙

発行
1989年4月 ベネッセコーポレーション 266頁 絶版 購入
発行
1992年2月 福武文庫 318頁 絶版 購入
NDC
910(日本文学>日本文学)
目次
「たけのくん」のゲーム / 「尾辻克彦」探険記 / 高校生のための文芸時評入門 (ほか)
評価
★★★★

冒頭、松苗あけみの漫画で意表をつく文芸評論。橋本治や田中小実昌にまじって広告や少女漫画、ドラクエという物語まで論じてしまう懐の深さ。文字ならなんでも読む「活字飢餓」的切迫感が充満。日本語が好きな人だ。

『ペンギン村に陽は落ちて』

表紙

発行
1989年10月 集英社 237頁 品切 購入
発行
1992年8月 集英社文庫 232頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序文 / ペンギン村に陽は落ちて−前編 / 愛と哀しみのサザエさん (ほか)
評価
★★★

短編集。内容は各表題を見れば瞭然。「ペンギン村に陽は落ちて−前編」「愛と哀しみのサザエさん」「キン肉マン対ケンシロウ」「連続テレビ小説ドラえもん」など。漫画を解体してなんたらかんたらとか言えない迫力。

『追憶の一九八九年』

表紙

発行
1990年4月 スイッチ書籍出版部/扶桑社 311頁 絶版 購入
発行
1994年3月 角川文庫 340頁 絶版 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
追憶の一九八九年
評価
★★★

激動の1989年に綴られた日記。「日記文学」と規定しているのであくまでフィクション(?)であるのだが、原稿料の未納について告発する部分は迫力満点。平凡な作家の平凡な毎日というポーズも弛緩するほどの粋な現実。

『惑星P-13の秘密 二台の壊れたロボットのための愛と哀しみに満ちた世界文学

表紙

発行
1990年11月 角川書店 271頁 絶版 購入
発行
1992年10月 角川文庫 271頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
則巻千兵衛博士 未発表発明品目録よりNo.2401〜No.2422 / 無名の一宇宙人にして、忠実なる護衛兵、通称モコモコの詩に見るニコちゃん星の文物 / マルコ・ポーロ『東方見聞録』偽書断片 (ほか)
評価
★★★

ロボットの読書熱に応えるため世界から集めてきたという読み物の数々。様々な表現形態を駆使した博物学的、百科辞典的「駄文」。読み進むほどに意識は混濁してゆく。これらを統合すれば「秘密」は明らかになるのか。

『文学じゃないかもしれない症候群』

表紙

発行
1992年7月 朝日新聞社 225頁 絶版 購入
発行
1995年10月 朝日文芸文庫 223頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
名作はつらいよ / 「'90春夏コレクション」を見る / 幽霊の正しい描き方 (ほか)
評価
★★★★

個々の作品よりもこの世界に対して言うべきことを(湾岸戦争などに)絵解いたような文芸評論第二弾。ここで言及される「幽霊の出てくる小説」はもちろん『ゴースト・バスターズ』のこと。思えば随分待たされたもんだ。

『文学王』

表紙

発行
1993年4月 ブロンズ新社 245頁 絶版 購入
発行
1996年3月 角川文庫 250頁 絶版 購入
NDC
904(文学>論文集 評論集 講演集)
目次
ぼくの好きな日本の作家たち / ぼくの好きないろいろな本たち / ぼくの好きな作品の解説たち (ほか)
評価
★★★★

「ぼくの好きな日本の作家たち」として漱石や谷崎が論じられるなど、時評よりはもっと本格文学論的。といっても力を抜いて軽く流してる印象なんだけど。おかげで「文学王」なんて謙虚なタイトルがついているわけだ。

『平凡王』

表紙

発行
1993年6月 ブロンズ新社 243頁 絶版 購入
発行
1996年5月 角川文庫 243頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
平凡な人生をおくる / 平凡な旅をする / 平凡なことをする (ほか)
評価
★★★

『文学王』とセット的扱い。こちらは雑多なエッセイ風。温泉へ行ったり競馬をやったりテレビにおや?と言ったりとなんたる平凡な生活。それでもやっぱり文学のこともいろいろと考えてしまうのは平凡な作家のサガか。

『正義の見方 世の中がこんなにわかっていいかしら

表紙

発行
1994年6月 徳間書店 243頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
竹ちゃん、立ってなさい / オーストラリアでさようなら / 素晴らしき父子鷹 (ほか)
評価
★★★★

世の中の不正義を激しく糾弾するエッセイ。金丸逮捕から『ジュラシック・パーク』VS『REX』(笑)などニュースを読み解き、そこに正義を打ちたてんとする。この時代何があったのか、と後で検証するにも便利な事件帳。

『これで日本は大丈夫 正義の見方II

表紙

発行
1995年12月 徳間書店 336頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
追憶の1994年 / ゴーマニズムの時代なのだ / 永遠のバカさ (ほか)
評価
★★★

正義の見方は走る。まだ走る。阪神大震災とオウムの年だから当然その論考は避けられないが、ヘア・ヌードとかコギャルとか馬鹿な話題も豊富でひと安心だ。表題はどんどん大丈夫じゃなくなっていった日本への皮肉か。

『こんな日本でよかったら』

表紙

発行
1996年4月 朝日新聞社 282頁 絶版 購入
NDC
361(社会>社会学)
目次
通勤電車の中ではマンガを読もう / 現代人の料理「鑑賞」法 / 日本人サラリーマンは休みがコワイ (ほか)
評価
★★★★

英字新聞の連載コラムとその和訳(?)を収録。「日本ではなぜ大人が漫画を読むのか?」「日本人はなぜ団体旅行が好きなのか?」という日本の奇異を突いた質問に答える形式の日本文化論。「我がふり」直しましょうね。

『タカハシさんの生活と意見』

表紙

発行
1996年6月 東京書籍 257頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
生活 / 意見
評価
★★★

身辺雑記の「生活」と文学論の「意見」からなるエッセイ集。というと著者のエッセイはみなそうなるのだが。「タカハシさん」という架空の論者を想定することで、照れずに真面目なことが言える。賢いやり方ではある。

『ゴースト・バスターズ -冒険小説-

表紙

発行
1997年6月 講談社 366頁 絶版 購入
発行
2000年11月 講談社文庫 373頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
アメリカ横断 / 反歌−奥の細道 / アメリカ再横断 (ほか)
評価
★★★★★

予告され続けたゴースト小説。西部劇と奥の細道と哀しき正義の味方が時空を超える。滅び行く文学に、終わり行く世界に大いなる愛を。ゴーストは、そして『正義』は見つかるのか。今世紀末の世界文学を代表する傑作。

『いざとなりゃ本ぐらい読むわよ』

表紙

発行
1997年11月 朝日新聞社 253頁 絶版 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
『漫才病棟』を読んで、日本近代文学の起源を考える / 今年のNo.1『漱石を読む』にぼくが傍線を引いた所 / クライトンくん、一生映画の原作を書くつもり? (ほか)
評価
★★★

文芸時評。売れてる本も売れてない本も、純文学もタレントエッセーもなんでもこい。いいタイトルだ。あとがきにあるタイトル別案『超読んだ!』でもいいのだが、女子高生が視野に入ってるのは何ともタカハシさん的。

高橋源一郎書評ページ