高橋源一郎の100字レビュー(1998〜)

高橋源一郎書評ページ

『文学なんかこわくない』

表紙

発行
1998年10月 朝日新聞社 230頁 絶版 購入
発行
2001年5月 朝日文庫 247頁 品切 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
タカハシさん、「オウム」を読む / 『恋愛太平記』はバカでも読めるか? / タカハシさん、日記を読む(書く) (ほか)
評価
★★★★★

お得意の文学エッセイ。今回は重厚な現代文学論となっている。「日本語」と真摯に向き合っている作家がやるともう迫力が違う。『失楽園』なんかを一刀両断しつつも、きちんとした文学論になっているところはさすが。

『あ・だ・る・と』

表紙

発行
1999年3月 主婦と生活社 247頁 絶版 購入
発行
2002年1月 集英社文庫 275頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1章 人妻図鑑 / 第2章 女尻の皺 / 第3章 恋愛というお仕事 (ほか)
評価
★★★★★

「AVというお仕事」を描いた長編。見かけと装丁はエロ本みたいだけど、勃起している頭に突然押し込まれる人生の深淵。セックスと愛なんて嘯いている場合ではない。こんな純文学見たことない。必ず最後まで読むこと。

『退屈な読書』

表紙

発行
1999年4月 朝日新聞社 253頁 絶版 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
名代名物富士そば、池波正太郎 / マルクスを知らない子供たち / すてきな人生 (ほか)
評価
★★★

文芸エッセイ。『ゴーストバスターズ』脱稿に『AV女優』、明治の文学。週刊誌の制約か1回分の文量が少ないので消化不良気味。「本当はもっとわかってるんでしょ?」と言って行間を探るのは正しい読書姿勢ではある。

『もっとも危険な読書』

表紙

発行
2001年4月 朝日新聞社 399頁 絶版 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
『こころ』の「私」とは誰か? / 凡庸な芸術家の温泉めぐり / 暗い葦の茂みの向こうから (ほか)
評価
★★★

「退屈な読書」シリーズの書評本。J文学の位置を見極めたり『こころ』のモデルは誰なのかと考えたり、あるいは漫画も読み解いて、古今東西だ。「詩のボクシング」実況中継が面白い。文芸も批評もエンタテイメント。

『日本文学盛衰史』

表紙

発行
2001年5月 講談社 598頁 2625円 購入
発行
2004年6月 講談社文庫 660頁 1000円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
死んだ男 / ローマ字日記 / ローマ字日記・続 (ほか)
評価
★★★★★

これまでの仕事を集大成する長編小説。田山花袋が「露骨なる描写」を求めてアダルトビデオを監督したり、明治を通して現在を切り刻むような気概に溢れている。『こころ』の謎に迫る章はそれだけで瞠目すべき論文だ。

『ゴヂラ』

表紙

発行
2001年12月 新潮社 211頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
序章 幸福の黄色いハンカチ / 第一章 お掃除する人 / 第二章 ニッポンのポルノ (ほか)
評価
★★★

石神井公園を舞台に掃除する詩人や悪の総裁、鴎外に老婆がバラバラに練り歩く長編。作中に登場する作家タカハシさんもその無計画さを暴露したりして、「ゴヂラ」の名のもとに全ては解決するのか不安がいや増したり。

『官能小説家』

表紙

発行
2002年2月 朝日新聞社 441頁 絶版 購入
発行
2005年5月 朝日文庫 469頁 品切 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
プロローグ / 噂の真相 / 作家タカハシ氏の苦悩と現実 (ほか)
評価
★★★★

主題も構成も『日本文学盛衰史』外伝か。樋口一葉と半井桃水の狂気の師弟関係がすさまじく素敵。森鴎外も指摘しているようにロマンチックに過ぎるのだが、愛は伝わる。一葉が「あの人に似てる」ってのはナシで頼む。

『一億三千万人のための小説教室』

表紙

発行
2002年5月 岩波新書 187頁 735円 購入
NDC
901(文学>文学理論 作法)
目次
レッスン1 小学生のための小説教室 / レッスン2 小説の一行目に向かって / レッスン3 小説はまだまだはじまらない (ほか)
評価
★★★

小説を書くための「心の処遇」に時間を割いてて実践的な指導はなにもしないゆえ、文学への志向を温める器に。エログロなボールを取りそこねてしまうような人が今どき小説を書くとも思えないし、優しすぎる感もある。

『君が代は千代に八千代に』

表紙

発行
2002年5月 文藝春秋 261頁 1750円 購入
発行
2005年9月 文春文庫 281頁 550円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
Mama told me / Papa I love you / Mother Father Brother Sister (ほか)
評価
★★★

初手からゲロだしちょっと悪酔いする。「一枚の薄いヴェール」が全体に掛かっていて、現実感のありようがどの視線からも問われている。自分はどこにあるのかと。怒涛のセックスや不敬でそこに風穴は開くんだろうか?

『人に言えない習慣、罪深い愉しみ 読書中毒者の懺悔

表紙

発行
2003年9月 朝日文庫 321頁 693円 購入
NDC
019(図書館・図書館学>読書 読書法)
目次
次の百年、あるいは千年のために / 「ゴッドハンド」の秘密 / 大江健三郎の新作を読むということは (ほか)
評価
★★★

なぜか文庫オリジナルの書評集。そつのない短評なんだけど、純文学への自負であったり「感動」させるマニュアル嫌悪であったり筋は通ってる。自作『日本文学盛衰史』について2回にわたって書いてるあたりも自信が。

『私生活』

表紙

発行
2004年2月 集英社インターナショナル 293頁 1785円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
原宿の私生活 / 沼袋の私生活 / 鎌倉の私生活 (ほか)
所要
4時間
評価
★★★

四年間の連載中に二度離婚して二度結婚してる。そんなダメな生活がどのくらい滲み出したのか、あるいは隠し遂せたのか、雑多な日常エッセイ。箱根お忍び旅といったベタから、官能小説の分析などマジメな論考もある。

『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』

表紙

発行
2005年1月 朝日新聞社 244頁 1470円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
キムラサクヤの「秘かな欲望」、マツシマナナヨの「秘かな願望」 / 唯物論者の恋 / ウィンドウズ (ほか)
所要
2時間20分
評価
★★★★

タイトルどおりの内容だが、するする読めて「深い意味があるような気がする」だけを残すやり方はいつも上手いね。自意識をひっぺがすような性交の向こうに真実があるのなら、僕らの仕事は目をそらさないことだけだ。

『読むそばから忘れていっても 1983‐2004 マンガ、ゲーム、ときどき小説

表紙

発行
2005年2月 平凡社 261頁 1680円 購入
NDC
726(絵画・書道>漫画 挿絵 童画)
目次
ペンギン村、則巻アラレ様 / ぼくも、マンガも、夏バテ気味 / 大友克洋 VS 高野文子 (ほか)
所要
3時間
評価
★★

マンガ、特に少女マンガへの造詣で名高い著者だが、この2002〜03のものが数本あるだけでほとんどが80年代なエッセイがまとまって出てくると、マンガ評論よりもこのゆるさを許容した時代感のほうが貴重な資料かよと。

『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』

表紙

発行
2005年4月 集英社 545頁 2940円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
オッベルと象 / 革トランク / 注文の多い料理店 (ほか)
所要
4時間40分
評価
★★★★★

宮沢賢治の短篇とその精神をモチーフにしながら、全く自由に飛び去る作品群。マジカルな「水仙月の四日」がすげぇ。小説で「言葉」の境界と彼岸にまで到達できるのなら賢治という触媒なんてもう必要ないんじゃない?

『ニッポンの小説 百年の孤独

表紙

発行
2007年1月 文藝春秋 451頁 2350円 購入
NDC
910(日本文学>日本文学)
目次
プロローグ――ニッポン近代文学、百年の孤独 / その小説はどこにあるのですか? / 死んだ人はお経やお祈りを聞くことができますか? (ほか)
所要
5時間40分
評価
★★★

小説論。さすが源一郎、垂直に掘り下げるねと思ってたら中盤から同じ所を回り続けてるよう。「文学的である/ない」とは何かって、例えば中原昌也を引用しながら論じるのだが、そりゃ言語化した答えは出ないだろう?

高橋源一郎書評ページ