辻仁成の100字レビュー(1996〜2000)

辻仁成書評ページ

『アンチノイズ』

表紙

発行
1996年1月 新潮社 219頁 絶版 購入
発行
1999年3月 新潮文庫 231頁 絶版 購入
発行
2007年7月 文春文庫(『グラスウールの城』と合本、『TOKYOデシベル』として) 308頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
アンチノイズ
評価
★★★★

音の三部作と呼ばれる三作目。騒音を測定して音の分布地図を作成する男。盗聴を趣味とする女。都会でも毎日梵鐘が鳴っているのに、皆何を聞いているんだ? 耳を塞ぐのではなく、耳を澄ましてみないか。という長編。

『ニュートンの林檎』

表紙

発行
1996年4月 集英社(上) 298頁 1529円 購入
発行
1996年4月 集英社(下) 318頁 1529円 購入
発行
1999年6月 集英社文庫(上) 352頁 650円 購入
発行
1999年6月 集英社文庫(下) 375頁 650円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ニュートンの林檎
評価
★★★★★

映画監督として成功する主人公の人生に何度も現れては影を落とす元子。祖父とどちらが先に生の意味を解きあかすかという賭けをした彼女は冒険を生き、老人は長編小説を書きあげる。1978年から2005年に至る長い物語。

『音楽が終わった夜に』

表紙

発行
1996年9月 マガジンハウス 203頁 1325円 購入
発行
1999年9月 新潮文庫 213頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
魂が歌わせるんだ / ベルを鳴らせ / アンコールは何をやろうか?
評価
★★★★

エコーズのツジジンセイだった頃を回想する音楽エッセイ。シーンを駆け抜けたロックバンドのフロントマンとして体感した空気は、作家にどんな影響を残しているのか。エコーズって硬派ないいバンドだったんだよなぁ。

『函館物語』

表紙

発行
1996年9月 集英社文庫 175頁 630円 購入
NDC
915(日本文学>日記 書簡 紀行)
目次
旅のはじまり / 月曜日 / 火曜日 (ほか)
評価
★★★

カメラとペンで第二の故郷・函館を描く文庫オリジナルの旅行ガイド的エッセイ。著者の多くの作品で舞台となった函館は彼の目にはこんな風に見えている。懐かしい路地と青い海、そこに生きる人々。密漁監視員も登場。

『海峡の光』

表紙

発行
1997年2月 新潮社 159頁 絶版 購入
発行
2000年3月 新潮文庫 167頁 380円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
海峡の光
評価
★★★★

主人公の勤める刑務所に入ってくる花井。主人公は彼にいじめられた少年時代の記憶に戸惑う。私を覚えているのだろうか。地味なストーリーだが心理の漂流が丁寧に書かれている。終局部で閃く悪意が眩い芥川賞受賞作。

『愛の工面』

表紙

発行
1997年4月 幻冬舎文庫 166頁 品切 購入
発行
2002年12月 幻冬舎文庫(文章のみを『錆びた世界のガイドブック』文章と合本、『彼女は宇宙服を着て眠る』と改題) 161頁 440円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
愛の工面
評価
★★★

カメラで世界と関係する女性写真家を主人公とした恋愛小説。見ることと見られること。著者が撮った奥様(南果歩)の写真がいっぱい入っている。ファインダーを通した感情に当てられて小説どころではないが、実際の話。

『白仏』

表紙

発行
1997年9月 文藝春秋 317頁 絶版 購入
発行
2000年8月 文春文庫 299頁 480円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
白仏
評価
★★★

戦争で殺した魂を背負う老人が、島に生きた人々の骨で真っ白い仏像を造ろうと思い立つ。来世、そして永遠を願って。とても『ピアニシモ』の作者とは思えない時代との乖離。あるいはこれが「文学を守る」ということ?

『辻仁成詩集』

表紙

発行
1997年10月 思潮社現代詩文庫 160頁 1223円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
未刊詩篇 / 詩集<屋上で遊ぶ子供たち>全篇 / 詩集<希望回復作戦>全篇 (ほか)
評価
★★★★

『応答願イマス』までの詩集三冊分全編と、未発表詩、エッセイ等も収録。詩人辻仁成がまるごと分かるって寸法だ。とにかく言葉を吐き出したくって小説だけじゃ足りないんだろう。やっぱり「リバティガンズ」が最強。

『僕のヒコーキ雲 日記1994-1997

表紙

発行
1997年12月 集英社 325頁 1575円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
一九九四年 / 一九九五年 / 一九九六年 (ほか)
評価
★★★

初の映画を撮り、結婚し子供が生まれ、アマチュアバンドを組み、芥川賞を受賞する忙しい日々の記録。いくらかコミカルに綴られているのだが、「そう書かなければこの日々は正直シリアス過ぎて苦しかった」と後書き。

『世界は幻なんかじゃない』

表紙

発行
1998年2月 角川書店 194頁 1470円 購入
発行
2001年9月 角川文庫 198頁 840円 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
世界は幻なんかじゃない
評価
★★★

『クラウディ』のモチーフとなった亡命家ベレンコに会うために、北米大陸を横断する。自由の国アメリカで暮らす彼に人生を重ねてきた作家、かつて「世界は幻なんだからっ」と叫んだ作家が報告する現代アメリカ事情。

『ガンバルモンカ』

表紙

発行
1998年5月 角川mini文庫 125頁 210円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1話 ハーフ大作戦 / 第2話 十二文字の世界 / 第3話 ドーナッツの穴 (ほか)
評価
★★★

進研ゼミで連載されたものでミニ文庫として出ている。ルーズソックスの女子高生たちのショートストーリー集。ファッションと恋愛が生活の全てである世代の断片。その世代向けに書かれたものなんだなぁ、という嘆息。

『ワイルドフラワー』

表紙

発行
1998年10月 集英社 389頁 1785円 購入
発行
2001年10月 集英社文庫 414頁 740円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一部 垂直の虹 / 第二部 矩形の林檎 / 第三部 頭上の大地 眼下の雲 (ほか)
評価
★★★★★

カメラマン修行中の僕、自分のゲイ的性向に悩む俺、書くべき物を失くしつつある作家の私。1人の女を巡って3人の想いが交錯するニューヨークの風景。1人称が3つあるという冗長になりがちな構成もうまくこなれている。

『五女夏音』

表紙

発行
1999年1月 中央公論新社 310頁 絶版 購入
発行
2001年10月 中公文庫 336頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一節 大家族との遭遇 / 第二節 大家族の内部構造 / 第三節 隠忍自重主義 (ほか)
評価
★★★

大家族の中へ婿入りした作家を主人公とした「ユーモア小説」。家族のルールに転んでゆく様を面白おかしく描いている。著者自身の体験を背景にしているが「ミルク代を稼ぐためだけに」小説を書くと誓う姿は少々痛い。

『冷静と情熱のあいだ Blu』

表紙

発行
1999年9月 角川書店 258頁 1470円 購入
発行
2001年6月 角川書店(江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』と合本、愛蔵版として) 453頁 2415円 購入
発行
2001年9月 角川文庫 262頁 480円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第1章 人形の足 / 第2章 五月 / 第3章 静かな呼吸 (ほか)
評価
★★★★

江國香織と交互に書き継がれたコラボレーション恋愛小説。8年前に別れたあおいへの想いに突き動かされ、順正の心は2人の約束の地フィレンツェへ疾走する。江國版とは対照的に全て激情としてある愛が世界を駆け巡る。

『千年旅人 (たびと)

表紙

発行
1999年11月 集英社 237頁 1470円 購入
発行
2002年11月 集英社文庫 232頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
砂を走る船 / シオリ、夜の散歩 / 記憶の羽根
評価
★★★★

自身による映画化の原作を含む短編集。死に場所を求めてやってきた片田舎で、生と死の意味に触れる男。彼岸へ渡る死者の舟は、日本海の寂しさにも合っている。「記憶の羽根」は奇妙な時間表現、場面転換で楽しめる。

『ニューヨーク ポエトリー キット』

表紙

発行
2000年2月 思潮社 81頁 1029円 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
New York Poetry Kit / Paris, Etranger / Ghost of Dublin
評価
★★★

ニューヨーク、パリ、ダブリンの風を纏った詩集。前作『応答願イマス』での実験詩は鳴りを潜め、清純派路線。感傷はムードで覆い尽くされている。「ダブリンの幽霊」はスタイルという意味では斬新ではないが面白い。

『嫉妬の香り Le parfum de la jalousie

表紙

発行
2000年6月 小学館 286頁 品切 購入
発行
2004年5月 集英社文庫 296頁 560円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
第一部 中庭 / 第二部 空間 / 第三部 出口 (ほか)
評価
★★

嫉妬のため壊れる愛と始まる愛。未来への復讐という欺瞞が立ち上る香水で甘く染まる。大人の愛というより欲情という無能感。現代的「癒しの庭」構想が引きたて役ではある古典的不倫小説。ドロドロっちゃあドロドロ。

『辻仁成 青春の譜 ZOO

表紙

発行
2000年8月 幻冬舎文庫 218頁 品切 購入
NDC
911(日本文学>詩歌)
目次
Part1 孤独の檻 / Part2 幸福の檻 / Part3 愛情の檻 (ほか)
評価
★★★★

エコーズとソロの音楽キャリアから集成した歌詞集。特に「見えない檻」との対峙姿勢が彼のロック者としての成果だろう。でもどうしても読んでるとメロディになってしまうので、純粋な評価は出来てないかもしれない。

『愛をください』

表紙

発行
2000年9月 マガジンハウス 251頁 品切 購入
発行
2003年12月 新潮文庫 270頁 460円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
本当の気持ち隠してるカメレオン / 白鳥になりたいペンギン / 片足でふんばるフラミンゴ (ほか)
評価
★★★★

孤児として愛を知らずに育った季理香のもとに励ましの手紙が届く。彼との文通から、生きることのシンプルな喜びが現れる書簡体長編。彼女の感情の起伏の妙にラストの仕掛けも抜かりなく、安心して読める「いい話」。

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