柳美里の100字レビュー(すべて)

柳美里書評ページ

『静物画』

表紙

発行
1991年11月 而立書房 105頁 1050円 購入
発行
1997年12月 角川文庫(『魚の祭』と合本、『魚の祭』として) 254頁 504円 購入
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
静物画
評価
★★★

処女作たる戯曲。女子高の教室で生と死を繰り返す少女たち。「授業ごっこ」は舞台進行上の都合がよくってなおかつ「ごっこ」な境を暗喩もする装置なのかもしれない。遠景の林檎の花が小奇麗なイメージを与えている。

『向日葵の柩』

表紙

発行
1993年1月 而立書房 126頁 1050円 購入
発行
1998年12月 角川文庫(『Green Bench』と合本、『グリーンベンチ』として) 250頁 500円 購入
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
向日葵の柩
評価
★★★

出て行った母親を希求しながら尖る家族、聞き取れない韓国語、九官鳥が連呼する「オカエリナサイ」という虚ろな符牒。求めるほどに遠ざかる幸せを、求めることでしか生きられない情念が主人公たちを沈殿させている。

『魚の祭』

表紙

発行
1993年2月 白水社 ?頁 絶版
発行
1996年1月 白水社(新装版) 122頁 1835円 購入
発行
1997年12月 角川文庫(『静物画』と合本) 254頁 504円 購入
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
魚の祭
評価
★★★

次男の死によって家族が集まって来る、家。明らかに自身の家族をモデルにして、その愛ゆえのすれ違いと葛藤で迫る戯曲。ほどんど露出癖とも言える胸の内の見せ方は、やはり独自のものとして評価してもいいのだよな。

『Green Bench』

表紙

発行
1994年3月 河出書房新社 166頁 1533円 購入
発行
1998年12月 角川文庫(『向日葵の柩』と合本、『グリーンベンチ』として) 250頁 500円 購入
NDC
912(日本文学>戯曲)
目次
Green Bench
評価
★★★★

幻想のテニスコートで展開される崖っぷちの母子の対話。醜悪な一体感、ディスコミュニケーションということの見本。戯曲という形式を壊してしまうほど執拗に心理を追いかけるト書きが、小説へ向かう必然性を見せる。

『柳美里の「自殺」 放課後のレッスン

表紙

発行
1995年6月 河出書房新社 140頁 1229円 購入
発行
1999年12月 文春文庫(加筆、『自殺』と改題) 198頁 480円 購入
NDC
146(心理学>臨床心理学 精神分析学)
目次
レッスン 自殺をプログラムする / 放課後のおしゃべり / 柳美里への8つの質問
評価
★★★

高校生に向けた講演と、座談を収録。「私は自殺をしたい」と最後まで言っている講演で「○○だから生きろ」という種の気休めは一切無い。それを逆説的なものと捕らえるかどうかは高校生諸君次第。文庫化で大幅加筆。

『フルハウス』

表紙

発行
1996年6月 文藝春秋 189頁 絶版 購入
発行
1999年5月 文春文庫 190頁 410円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
フルハウス / もやし
評価
★★★★

家族という幻想ニ短編。マイホームを建てた父は寄りつかない娘達を目に、ホームレスを住まわせる。家庭回復だとか言葉にしない醒めた視線が怖い。奇妙に人形的な人物造型が不快ですらあるのだが次第に心地よくなる。

『家族シネマ』

表紙

発行
1997年1月 講談社 159頁 絶版 購入
発行
1999年9月 講談社文庫 178頁 絶版 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
家族シネマ / 真夏 / 潮合い
評価
★★★★

芥川賞受賞作を含む短編集。崩壊した家族が映画出演のために再び寄り集まる。カメラを通した虚構の家族、その脆い絆を描く装置として見事。読んでいて非常にイライラするが(いじめの「潮合い」は特に)それも手の内。

『水辺のゆりかご』

表紙

発行
1997年2月 角川書店 222頁 品切 購入
発行
1999年6月 角川文庫 277頁 540円 購入
NDC
910(日本文学>日本文学)
目次
畳のしたの海峡 / 校庭の陽炎 / 劇場の砂浜
評価
★★★

生立ちから作家デビューへ至る自伝物。「いじめられるのには原因がある」のがよく分かるし、創作欲(表現欲)の源泉もよく見える。そんな結果論はそれとして、小説としても読めるのでこの疎外感を共有してみるのも手。

『タイル』

表紙

発行
1997年11月 文藝春秋 181頁 絶版 購入
発行
2000年10月 文春文庫 183頁 410円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
タイル
評価
★★★★★

部屋の床壁天井をタイルで埋めつくす男は、モザイクという細密な狂気を体現する。切れ味良い文体で不安を煽る「ホラー純文学」で一息に読ませる。「女流作家」が描く官能小説が溶け始めるクライマックスは大迫力だ。

『仮面の国』

表紙

発行
1998年4月 新潮社 243頁 絶版 購入
発行
2000年5月 新潮文庫 288頁 絶版 購入
NDC
914(日本文学>評論 エッセイ 随筆)
目次
第一章 仮面の国 / 第二章 攻撃すべきは、あの者たちの神だ / 第三章 正義とは悪魔が被る仮面にて (ほか)
評価
★★★

「サイン会中止事件」で言論という舞台へ。少年犯罪から教育、家族の問題へ降りてゆく説得力はさすが。四方に敵を作ってゆく過程もよく分かる。言ってる事は真っ当だから、文章表現に苛立つ人も多かったんだろうな。

『ゴールドラッシュ』

表紙

発行
1998年11月 新潮社 323頁 絶版 購入
発行
2001年5月 新潮文庫 398頁 580円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
ゴールドラッシュ
評価
★★★★★

酒鬼薔薇事件からインスパイアされたという長編。社長の跡取として溢れる金と不適切な待遇に囲まれて育った14歳の少年が、人を殺す。共通するのは劣等感の裏返しである万能感。社会問題丸ごと添付という雰囲気も○。

『女学生の友』

表紙

発行
1999年9月 文藝春秋 243頁 絶版 購入
発行
2002年9月 文春文庫 267頁 470円 購入
NDC
913(日本文学>小説 物語)
目次
女学生の友 / 少年倶楽部
所要
3時間30分
評価
★★★

援助交際は未来を前借りして食い潰すことなんだけど分かってるのかと説教する著者らしい作品。未来の残っていない老人と絡ませることで問題をよりクリアに見せつつ、どこかにまだ希望があるようでないような現代を。

『命』

表紙

発行
2000年7月 小学館 231頁 1300円 購入
発行
2004年1月 新潮文庫 284頁 500円 購入
NDC
916(日本文学>記録 手記 ルポルタージュ)
目次
評価
★★★

不倫の子供を身ごもり新しく生まれくる命と、元恋人東由多加の癌に蝕まれて収斂してゆく命。壮絶な告白体の作品。生き辛い道を選ぶ「甘え」の記録として美しい。この溢れ出る情念に伴走する無力感はなんなんだろう。

『魂』

表紙

発行
2001年2月 小学館 278頁 1300円 購入
発行
2004年1月 新潮文庫 331頁 580円 購入
NDC
916(日本文学>記録 手記 ルポルタージュ)
目次
評価
★★★

『命』第二幕。やっぱりこれは小説なんだろうと思う。そうじゃなけりゃ主人公をこんな嫌な奴に描く必要がないからね。癌の闘病、父不在のまま育つ子供、いろんな問題が切迫してて、その焦燥感がやたら強く描かれる。

『生』

表紙

発行
2001年9月 小学館 298頁 1300円 購入
発行
2004年2月 新潮文庫 345頁 580円 購入
NDC
916(日本文学>記録 手記 ルポルタージュ)
目次
評価
★★★

癌死を看取る勇気も母親としての自覚もどこかなおざりにしたまま、美しかった想い出を温めなおし、愛する人が消えてしまうことにただ怯える弱さ。それゆえ物語は赤剥けてて、痛みを押し付けられる読書体験ができる。

『声』

表紙

発行
2002年5月 小学館 309頁 1300円 購入
発行
2004年2月 新潮文庫 365頁 580円 購入
NDC
916(日本文学>記録 手記 ルポルタージュ)
目次
所要
4時間20分
評価
★★★

『命』四部作最終章。葬儀が執り行われる間も、東氏の声を何度も呼び起こす。周囲の暖かな支えに「これで気づかなかったらアホだぜ」ってとこなんだが、気づくのは己が愛の日々。終盤の声しかなくなる場面は圧巻だ。

柳美里書評ページ