初めての山陰(2)

東郷湖

東郷湖

松崎。東郷湖畔をぶらぶら歩く。夕陽をバックに釣糸を垂れる男たち。絵になる。送り火(?)をしている家があった。門の前にろうそくをたくさん並べ、玄関脇で何か燃していた。日本的なお盆行事がまだ生きているんだねぇとしみじみ歩いていると、車を囲んで万歳している一団がいた。これから新婚旅行にでも行くのだろうか。なにもかも古臭くていい味を出している。銭湯は表玄関が閉まっていて、ここもお盆休みか!とあせったのだが、横から入れた。

鳥取へ出る。この日は明日のしゃんしゃん祭りの前夜祭で花火大会があったらしい。浴衣の女と、それ目当ての男が大勢いてげんなりする。若い煩悩の臭気がたまらなく嫌いだ。一目散にコインランドリーへ向かう。が、ない。何故だ。あるいはこのシャッターが閉まっている建物がそうなのかもしれないが、どうしようもない。すぐに寝ちまうかと川沿いのベンチで横になろうとすると、ゴキブリが走り去る。さらにコンビニもない夜中、煙草を切らしてしまう。鳥取なんか嫌いだ。不貞腐れて睡眠不足。

8月16日(5日目) 砂丘は砂丘でしかない

鳥取砂丘

鳥取砂丘

早朝、時間を持て余してNTTの伝言ダイヤルを聞く。と、「自殺しようかな」という女の伝言が入っている。その後、彼女に優しい言葉をかける男の声があり、それに対する女のリアクションがまた入っている。延々と遠い言葉を交わし合う孤独な2人。哀しいな。神妙にそれを聞いている僕もそうとう哀しいが。

鳥取はバス路線が解りにくすぎる。路線図を色分けするのはいい。なぜそいつとバス乗り場の色分けが対応していないのだ。さらには料金表の色までバラバラだ。統一させんかい。まだある。乗り場脇に、停車するバス停を全て並べた路線図がなぜないのだ。普通あるだろう、料金を併記したやつ。まったくいらつく。と言っているうちに砂丘に着く。要するに起伏のある広い砂浜だ。そんなに異形だろうか。ラクダを歩かせて無理やり砂漠イメージにしているだけではないのか。

帰りのバスで、後ろに座ったじいさんが僕の肩を叩き「なんじゃー」と言う。「は?」「なんじゃー」。ああ、「何時や」と言ってるんだと気づき、腕時計を示してやる。

仁風閣

仁風閣

仁風閣、鳥取城跡と見る。靴擦れが起きている。なぜか両足の親指の上がざっくり切れている。つらい。これ以上見て回ることができなくて、駅へ戻る。近くにあるブックオフへ。村上龍の『ヒュウガ・ウィルス』を買い求める。

今日はしゃんしゃん祭りが開催される。飾り傘をもって踊り歩くのだ。夜が本番なのだが、エキシビジョンのような形で昼間も駅前でやっている。が、何の面白味もない。なんだか何もかもが嫌になってしまい(自殺しようかな・・・)、列車に乗る。

香住は海辺の寂れた町。海岸はキャンプ場になっている。さらに城崎へ。文学館を見たあと、温泉へ。観光客が多すぎて温泉街の雰囲気を壊している(もちろん自分も観光客だ)。路上駐車の車にパトカーが大音量で警告している。騒々しい限り。温泉街自体は味があるのだが、こんなに混んではだめだ。ここで寝ようとも思っていたのだがやめて、豊岡まで出る。

手頃な公園がなくて道端のベンチで寝るも、暴走族が頻繁に通り落ち着かない。それでもうとうとしていたところへ「起きろコラ!」という声がかかる。身体を起こすと自転車の馬鹿どもが逃げてゆく。朝4時だ。急に寒さを感じてきて眠れなくなり、駅へ行くとなんだ、待合室が開いているじゃないか。夜は閉まってしまうと思って、外で寝ていたのに。ここで寝ればよかったんだ。実際、寝ている旅人が何人かいた。

8月17日(6日目) 最終日

加古川線に初乗り。それが今日のメインイベントだ、哀しい哉。綾部、福知山、谷川と途中下車するのだが、特に見るものもない。日本海側の典型的な田舎町。それから大阪で下車。実は初めてなんだよな。ここで『全国駅前銭湯情報』の最新改訂版を入手。やった。これだけでもう大阪で降りたかいがある。実際それだけなんだが。

京都ではコインランドリーでたまった洗濯物を処理する。

あとはお決まりのように「福井で立ち食いソバ」をこなしつつ、実家のある石川へ帰る。

8月26日(1日目) おまけ。

林泉寺

林泉寺

石川の実家から東京へ帰るのに、新潟は春日山へ立ち寄った。写真は上杉氏の菩提寺・林泉寺(たぶん)。謙信もここで幼少の頃、修行をしたようだ。

この日は長岡で宿を取り、翌日は磐越西線で会津若松へ出るというアクロバチックなルートで東京まで。以上。(了)