紀伊水道を跳び越えて(3ページ)

旅行記

2002年5月2日(5日目) 雨交じり高知

高知城
高知城

「朝起きると今にも雨が降りそうだがなんとかもっている。ので、高知観光、高知城へ行ってみた。看板の説明書き読んでると、小倉智昭みたいな顔のタクシー運転手が桂浜もう行きました?とかずーっと話しかけてきてて、うるさかったので血迷って隣の県立文学館になんて入ってしまった」

「文学館ではどちらにしてもぼくの守備範囲から離れてしまうのであまり語るべきネタもないんだけども。『土佐日記』から宮尾登美子までって高知ゆかりの文人たちの人となりにふれられる」

「写真は城の追手門。さっきのタクシー屋さん、写真撮るならここで撮ったほうがいいよ、中に入るともう面白い絵はないから。なんて言われてたんで、あまのじゃくが身上だけどもここは撮っておこうかとか。中に入ったらある意味面白い絵だったんだけどさ」

セーラー服と高知城
セーラー服と高知城

「追手門をくぐって、奇妙な幅の石段を登り、1歩で登るには長いし、2歩には短いのよ。防衛上の工夫であるという風なのでなるほどなぁこりゃ敵も蹴つまづくよなぁとか思って」

「ふうと本丸へ入るとご覧の通り。女子生徒てんこもり。中学生とお見受けします。遠足だか修学旅行だか知らないけど、大騒ぎで。いじられた鳩はばさばさ飛ぶし。いわれのないやましさを感じながら写真撮って、だってそこらで座ってる奴らパンツ見えてるもの、それを狙ってるように見えないように注意しながら写真撮って」

「で、天守閣入ってみるとそこには小学生の遠足集団。どうなんてんのよ。ヤッターマンの小メカが飛び出てくるみたいにして延々終わらない行列にあって、こっちはもう上へ登るタイミングもなかったりして。賑やかですねって入場券売りのおばちゃんに皮肉っぽく笑いかけてみたりしてね。おばちゃん恐縮してはりましたわ」

「ぐったり疲れて外へ出てみたら雨が降り始めてる」

「女子中学生、レジャーシート畳んで、ってここで弁当でも食うつもりだったんか? レジャーシート畳んで軒先で雨宿りなんかしてる。ぼくも傘をもってないんでちょっと小降りになるのを待つことにした」

日本三大がっかり名所、はりまや橋
日本三大がっかり名所、はりまや橋

「アーケード街を店覗きながら歩いて、並びの古本屋をじっくり見て、1時間ほど書店で立読みして。1冊購入。だいぶリュックも重くなってきた」

「本って重いんだよねすごく。よっぽど読み捨ててこようとも思うんだけどなんかしのびなくて。途中で1冊新書を資料的に読んで即日捨てたりしたのはあるけど、文芸作品は捨てづらいね。できるだけ旅先では文庫を買うんだけどやっぱり重い」

「写真ははりまや橋というやつで、交通量の多い交差点脇にひっそりとある。ひっそりとは言えこの町のみどころのひとつだし、観光客がけっこう写真撮りに来てる」

「江戸時代に播磨屋という豪商が掛けた橋ですね。もちろん何度も掛けなおされたものだけど、この朱塗りの太鼓橋風なのも当時の様子を忠実に再現してるんでしょうかね」

「晴れたら桂浜でぶらぶらするか、室戸岬まで出ちゃおうかと思ってたんだけど雨でどちらのプランも諦めて、この日は1日市街から出ずにだらだらしようと決めて、ここ見に来たんだけども」

はりまや橋公園
はりまや橋公園

「橋の両脇には公園が続いていて、花にはあまり関心なくてもこういう写真も撮ってみたりとか。とにかくすることないんだよね」

「この手の水際公園は雨である種、風情が増す部分もあるんで、それはそれで楽しむわけだけど」

「そうこうするうちに小降りになってきたんで、やっぱり桂浜へは行ってみようかとバス停に行くも、財布に5000円札しかなくて喫茶店で崩そうとコーヒー飲んでるうちにまた本降りになったりして、えーとこのあと何してたんだっけな。とにかくその辺にいたんですわ」

「蒸し暑い」

「まだ明るいうちにホテルに入って、寝転がって本読んでたんだっけ。で、夕食はクジラ料理の店で。カツオは昨晩寿司で食ったんだけど、この日はクジラ揚げたものにカツオ刺身で。あまりその土地土地の味を味わわねば!というようなこだわりはないんだけれど、土佐はカツオでしょ、とかまぁあるわけで」

「それから昨晩入ったアイリッシュパブにまた行ってしまった。居心地よかったので。日本酒が嫌いで、焼酎も不得手で、和な居酒屋だとビール飲むしかなくなるんだよね。酔う前に腹膨れちゃうような。ウィスキーだったら腰据えて飲めるのでこういう店のほうが過ごしやすい。アイリッシュウィスキーで筒井康隆を読む。昨晩は大江健三郎読んでてまだこの時点でも読み終わってないんだけど、バーストゥールに腰掛けて大江健三郎ってあまりに『やりすぎ』な感がしたので筒井をポケットに入れて出たんだ」

2002年5月3日(6日目) ここに地終わり海始まる?

室戸岬の海っぺりへ
室戸岬の海っぺりへ

「高知からバスに乗って2時間、室戸岬到着。チェックアウトぎりぎりまで寝てたんで、もうすでに12時回ってる。徳島方面、甲浦駅行きになるんだけども、バス時刻をチェックして、バス停前のしょぼくれた店で昼食」

「灯台だとか最御崎寺へも行こうと思ったら、歩いて登るにはキツイ山上だったのでやめ、遊歩道にしたがって海岸を歩く。気が向いたところで遊歩道乗り越えて岩飛び越えて波打ち際まで行ってみたりしながらね」

「全面的に荒くれた岩場で、断崖絶壁にどおーんって浪砕ける風景でもないんだが、侵食で尖った岩くれが連なってる。ひとつの最果てではある。旅でもう読み終えてる宮本輝『ここに地終わり 海始まる』はポルトガルなんだけど、ここもやっぱり地終わる場所なんだよな」

「岩に座って本も読んでましたよもちろん。波の音を聞きながら、潮風を嗅ぎながら、雨降ってこないかとひやひやしながらの優雅な読書タイム」

葉に刻まれた落書き
葉に刻まれた落書き

「遊歩道沿いには南洋性の草木が植わってたりするんだけど、これ、葉を削って落書きしてあんのよ。別にエコロジストでも愛護団体でもないし、こういうの見ても写真撮るような悪趣味なことは普通しないんだけども、『やのさんの赤い流星に乗って来ました(ハートマーク)』『やっぱりやのさんは変です イモ焼いた』の2文にぶちきれて撮ってきてしまいました。晒し者にしようとしたんだけどあいにく女の名前メモ取るの忘れてて中途半端なことに」

「いや、やのさんの女のほかにも大量の落書きがあって、半年前、1年前の日付がそのまま読める状態で残ってて、その傷の周りから腐り始めてるのを見るのはやはり切ないよね。人として」

「でもこれが彼ら彼女らにはほかにメディアというか媒体がなかったせいなのかもしれないね。ぼくはこの道中、ときどきネットにつないで自分のサイトの掲示板に『いま高知でーす』とか書き込んだりしてたんだけれど、それと似たような指向のものなのかもしれない」

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