梨木香歩『家守綺譚』レビュー

書誌情報

梨木香歩『家守綺譚』表紙
家守綺譚いえもりきたん
2004/01
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:サルスベリ / 都わすれ / ヒツジグサ (ほか)

レビュー

化かし狸も懸想する百日紅も河童も、薄墨の筆先から花々がぽんぽん飛び出るようなカラフルな水墨画。異界を語る言葉と雰囲気の作りこみが素晴らしく、不可思議でありながらすっと落ちる物語に安心してのめり込める。
読了:2006/06/18

長めの感想

犬が出てくる小説として、古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』を読みました。犬が大口あけてる装丁にインパクトがあって書店でいつも目に付いてた作品、いい評判があちこちから聞こえてきて気になってた作品、ですが、ようやく読めました。

想像してたより突き抜けてないかなと思って星付け迷いましたが、犬の系譜から語る現代史、それなりに楽しみました。戦争好きなヒトの思惑とは別に、繋がり増えることの本能みたいなものが、歴史に足跡を残す。丸山健二と花村萬月を足したみたいなストーリーテリングながら、彼らには書けない種類の展開でしょうね。

途中、タイトルママに「ベルカ、吠えないのか?」という言葉が発せられるシーンがあるのですが、目次見ると最終章のタイトルが「ベルカ、吠えないの?」って「か」が抜けてるんですよ。最後にベルカに呼びかけるのは、中盤で「ベルカ、吠えないのか?」と発した老人とは、違う人物なんだろうなと想像して、ちょっとだけ泣きました。

一方で、梨木香歩『家守綺譚』にも主役級として犬が出てくるのですが、こちらはもっと無為にかわいい。異界の者どもと懇意になってはいても。

そのレビューで「薄墨の筆先から花々がぽんぽん飛び出るような」なんて書いたのは、PS2のゲーム「大神」の印象あってのものでした。ゲームやってる人はピンと来たかもしれませんね。こちらも神話や民話をもとにして、犬が大活躍するゲームで。・・・いや、神であり狼であって犬とは違うんだけれども、見た目イヌです。たったらたったら走るのを見るだけでもたまらない、犬好きならやっておくべきゲームかと思います。

ゲームの話はともかく、「猫文学」ならmixiにもコミュニティがありますし、一定の認知はされてるジャンルですが、「犬文学」ってカテゴライズされないよね。あなたの好きな犬文学は、どんなのですか? ってそんなまとまりなく犬の話。

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物語の舞台