岡崎祥久『秒速10センチの越冬』レビュー

書誌情報

岡崎祥久『秒速10センチの越冬』表紙
秒速10センチの越冬びょうそくじゅっせんちのえっとう
1997/11
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:秒速10センチの越冬

レビュー

何者でもないおれが越冬のために選んだ仕事は、コンベアの箱に本を詰めていくバイト。夢とか希望とかはさて置いて、機械の心を手に入れる…。自己評価と実像が乖離することは、悪いことじゃないんだよ。若い頃はね。
読了:2006/10/22

長めの感想

岡崎祥久の『秒速10センチの越冬』は群像新人賞受賞作。読みながら「群像っぽいなー」と思いました。若さゆえの勢いと、モダンな実験臭と、何周もして戻ってくる自己言及。97年の受賞作なのに、80年代かと思わせるような「純文学」。

群像新人賞は村上龍村上春樹を輩出した(あと阿部和重もね)というだけでもう、その功績は後世に残るわけですが、近年の凋落ぶりはどうなんでしょうか。ほとんど成功してないように見えます。才能を世に送り出すという点でも、ビジネスの観点でも。

純文学系では絲山秋子長嶋有吉村萬壱、モブ・ノリオなんかが出てる文學界、中村文則に佐川光晴がいる新潮と、近年の受賞者で飛び出してきてる人はいるのに、群像新人賞のリストは知らない名前ばかりが並ぶ印象。プロデュース力ってことですかね?

プロデュース力で言ったら綿矢りさ中村航山崎ナオコーラ、三並夏などの「文藝」にはかないませんけどね。あざといほどに。

「群像っぽい」と言いながら群像系の作品をそう多く読んでるわけではないんですけど、一つのスタイルとして認識する程度には期待してるんです。もしかしたらいい作品が出てるのかもしれない。「手に取ってみよう」にまで至らずにそれを知らずにいるのだとしたら、それはやっぱりプロデュース力?

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