村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

現代文学100字レビュー

作品情報

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の表紙画像
タイトル
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
かな
しきさいをもたないたざきつくるとかれのじゅんれいのとし
著者
NDC
913 文学>日本文学>小説 物語
目次
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
所要
4時間20分
評価
★★★★☆
レビュー
「乱れなく調和する親密な場所」から疎外された理由を、16年後に追う巡礼の旅。主人公の造形、その背を押す巫女的女性など春樹らしくも類型的で、足踏み感もあるけど、磨ききった言葉で切り込む内省が瑞々しい色彩。
舞台

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話題の新作ですけど、予約だけで増刷御礼というような種類の小説ではぜんぜんない。こんなに静的な、内省的な作品を多くの人が喜ぶようには思えません。

「意欲的長編」と「挑戦的長編」の合間にあって、跳躍のウォーミングアップをしてるような長編で、『アフターダーク』みたいな色味に思えました。その割には(というべきか)昔慣れ親しんだモチーフだったり構造だったりが昔のまま採用されてるように感じられ、「やっぱり春樹の作風って好きだな」と再認識する一方で、「え、そこへ戻ったの?」とも思いました。過去の作品をどれだけ読んでるか(どれくらい好きだったか)によって受け取られ方は変わるかもしれない。

失われ、損なわれてしまったものと、あるがままに受容する主人公と、孤絶のなか、外からこじ開けにやってくるおせっかい者と。彼の描く痛みが、自分の感じている痛みそのものだと思っていた時代から20年もたって、やっぱり胸に残った痛みに喜ぶ40歳の春。新境地も楽しみだけど、これはこれで楽しめました。

あと春樹の影響で、昔カティーサークばかり飲んでたことを思い出しました。作品の感想ではないけども。

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