丸山健二『月に泣く』

書誌情報

  • 月に泣くつきになく
    丸山健二まるやまけんじ
    2018-06
    柏艪舎 完本丸山健二全集
    「完本 丸山健二全集」第4回配本作品。第9巻。「鳥籠を高く」「月に泣く」の中編2編を収録。
    『鳥籠を高く』四十歳の主人公は、愛犬クロと共に、生まれ故郷のM町へ向かう。妻子に見捨てられ、職場からも追われた私は、小鳥の鷽を手に入れ、気ままな<後半>生のスタートを切る。やがて疑念に囚われた私は、鳥籠を高く樹に吊るし、戸を開けてやる。籠の中で飼い慣らされた鷽は、果たしてそこから飛び立てるのか。

    『月に泣く』雪深い寒村の林檎農家。春夏秋冬、四枚の季節の異なる屏風の傍らで眠る私の、十歳から四十歳までの物語。登場人物一人びとりの生の営みそのものが、解放を求めて外へ向かうかと思えば、内へと沈潜し、より良く生きることの困難さを浮き彫りにする。

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