現代文学100字レビュー
ピックアップレビュー
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「主人公は私ではない!」と言い張ることでフィクション的匂いをもたせた旅行記。鹿児島の火山灰に驚いたり青森で三都物語だったりと日本の風土を確認しつつ歩く。観察するのは人間だけじゃないぞ、という作家風景。文学(小説)
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シャイニービーストが絶叫する表題作はそれでもかろうじて枠内にあるが「人生の聖」はすでに狂気の彼方。水溶性の精神が排水溝に吸いこまれて行くそのスピード。早ぇ早ぇよと興奮する傍観者たちの声。滑落する現実。文学(小説)
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後に『ノルウェイの森』の一部となる「螢」を含む短編集。この中ではそれが圧倒的に面白いのだが、『ノルウェイ~』の暗い影が入りこんでいて(発表順から言って変だけど)どうにも息苦しい。ついでに他のも重苦しい。文学(小説)
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終盤の現代文化批判のためだけに前半の映画立国ユートピアは用意されてる。「最低共通文化」も筒井風の洒落でありながら本気の哀号だしね。81年発行の予言書。架空の映画ポスターを描くのは横尾がまさに適任だろう。文学(小説)
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「ああ、海は今日もでっかいなあ。しかしハラへったなあ」な旅本、第三弾。指宿温泉に小笠原、小樽の悶絶アナゴ丼から浜名湖のスッポン、しかし食べモノ話の占める割合がだんだん増えてないか。写真でも旨そうです。文学(日記・紀行)