D[di:]『キぐるみ』レビュー

書誌情報

D[di:]『キぐるみ』表紙
キぐるみきぐるみ
Brand new novel comic
2002/01
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:ぼくのまち / フワフワハウス / フェスティバル

レビュー

漫画と小説を融合させた作で、奇抜ながら両者の強みを効果的に取り込んでいる。しかも様式遊びでもなく、不細工な人は着ぐるみを着けなければならない「自覚」と「無自覚」のなかで人の心の黒い塊を見せつけている。
読了:2003/08/25

長めの感想

D[di:]の『キぐるみ』、昨年の作品ですけれども、今頃5つ星つけておきました。河出の雑誌「文藝」で連載時、たまたま立ち読みで手にとって「なんじゃこりゃ」と驚愕したイロモノなんでありますな。

コミックと小説の融合ということを著者も明確に狙っていて、期待どおりの効果をあげています。言葉でしか表現できないこと、絵でしか表現できないことがそれぞれにあるはずだというなんとも謙虚で豪胆な造り。漫画のコマ割りがしてあって、文字しか入ってない、絵のないコマが大量にあるというか、そんな感じなんですわ、手に取って確かめてみてとしか言えないのですが。

実のところ、この絵柄は好きじゃないんです。全体的に退廃好きの少女なテイストで、「こんなお話書きたがる子っているよね」って内容なんですけどね。

でもこの実験的手法にとどまらず、地獄巡りのような観念的世界観と同時に、しっかり現実的な視線を提供してる底力ゆえに評価いたします。地方から東京に出てきて、何するでもなくぶらぶらと暮らしてる人には「痛たた」と思う部分もあるんじゃないかな。私は出始めた腹をさすりながら「痛たた」と思いましたよ。

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