目指せ日本海! 越後は秘湯の宿めぐり

行程

[群馬・新潟・長野/法師温泉、松之山温泉、大沢山温泉] 群馬から新潟へ温泉を巡るドライブ。法師温泉、松之山温泉、大沢山温泉と「日本秘湯を守る会」三連泊です。ほか周辺の日帰り温泉も。
「目指せ日本海! 越後は秘湯の宿めぐり」地図
1999-07-17
東京―奥平温泉―猿ヶ京温泉―法師温泉
1999-07-18
法師温泉―柏崎―松之山温泉
1999-07-19
松之山温泉―切明温泉―津南―大沢山温泉
1999-07-20
大沢山温泉―越後湯沢―東京

旅行記

1999-07-17(1日目/土曜日)
猿ヶ京三国温泉郷、いいね!

奥平温泉・遊神館
奥平温泉・遊神館

飽きもせず、温泉巡りへ行ってきました。今回は群馬経由、新潟方面。

友人の運転する車で月夜野ICを降り、猿ヶ京三国温泉郷と呼ばれるエリアへ向かいます。旧三国街道沿いに、小さな温泉、古い温泉が点在しています。3泊4日の行程のクライマックスがいきなり初日の法師温泉だったりするのですが、法師へ向かう寄り道に、2箇所の立ち寄り入浴施設を訪問しました。

ここは奥平温泉にある村営の施設、奥平温泉遊神館。温泉、食事処、カラオケなどもあるところで、まぁよくあるタイプの日帰り温泉施設ではあります。食事処ではナマズの天ぷらを乗せた「カミナリ丼」が名物のようでそれを注文、おいしくいただきました。

遊神館露天風呂
遊神館露天風呂

露天風呂は、普通。悪くはない、という程度か。んー、えーっと、次の温泉褒めるために、ここ褒めないでおきます。いや、悪くはないのよ、ホントに。

さて、このあと群馬サイクルスポーツセンターというところへ行ってみました。写真はありません。撮るほどでもなかったので。ファミリー遊園地という風情のところですが、温泉ばかりじゃつまらんということで一応。中のアポロミュージアムというトリックアートの美術館だけ見てきました。立体的に見えたり、見る角度によって絵が変わって見えたりってやつです。うらぶれ感がすごいところでしたが。

猿ヶ京温泉センター
猿ヶ京温泉センター

さらに走ると猿ヶ京温泉の猿ヶ京温泉センター。ここは味も素っ気もない名称のわりにはいいとこでした。それぞれ趣向が凝らされた温泉が数種あり、日替わりで男女入れ替わる、というもの。国道沿いにぽつんとあり、温泉だとぱっと見にはわかりにくい。つつましやか、ともいう。

古い旅館のような玄関を抜けて、秋にはそうとう綺麗だろう紅葉の渡り廊下(バランス悪くて鳴らない獅子脅しアリ)を抜けて、浴場へ。

利休の湯
利休の湯

まず大浴場「砂利の湯」。古い湯治場のイメージです。檜造りの浴場に玉砂利を引いた風呂がある。塩を盛った甕がどんと置いてあり、塩で洗え!という状況になっている。塩はフロントで売ってもいます。情緒あります。

甕に浸かる「利休の湯」。湯のたっぷり張った甕が3つ並んでいます。1人用が3つですね。打たせ湯となっていて、湯はぬるめ、長湯できます。

茶屋風の建物に入ってて利休の湯とはちょっとあざといものがあるんですが、気持ちいいのでオーケーです。

あづまや露天風呂
あづまや露天風呂

さらに鯉の泳ぐ池に浮かぶ「あづまや露天風呂」。いやー、もう満足です。これらがこの日の男性用で、もう一方には巨大な行灯の下の「塔の湯」、蒸気たちこめる「猿岩窟」、「石組露天風呂」があるそうです。湯浴み後にはトコロテンで休憩のサービスもあり、素晴らしいです。調子に乗ってここの写真3点も使ってしまいました。

なにより客が少ないのがいいところなので、みなさん押しかけないように。んー、やっぱり「猿ヶ京温泉センター」って名前は味気なさ過ぎるので、僕が名づけます。「ビバーラ甕屋」どうだ。

法師温泉長寿館
法師温泉長寿館

さて、法師温泉です。ここは知り合いがベタ褒めしていたので、大いに楽しみにしてたんですが、期待に違わず素晴らしいところでした。薦めた彼としてもこんなに素早く行ってくるとは思いもしないでしょうけど。

長寿館の1軒宿です。国鉄時代にフルムーンのポスターで話題になったそうですが(そのポスター、宿に貼ってありました)、当時の状況はよく知りません。映画の撮影があったりもしたようです。いま感じるのは静かな文人系宿だってことだけですね。なんだかここに逗留して小説でも書くと筆が進みそうな感じです。

本館は明治の建築で、つつましやかにその重量感を誇ります。

長寿館新館
長寿館新館

川を挟んで昭和初期に建てられた新館があります。せせらぎが響いています。最初は「クーラーの音か?」と思ったほど、近い音源です。

夕食朝食ともに部屋食というのも嬉しいですね。

ここは「日本秘湯を守る会」の会員宿で、まぁ全国に散在する会員宿で1泊するともらえるスタンプを10個集めるとその10軒の中から好きなところに1泊無料で泊まれるってやつなんですが、僕、ここで10個目になりました。なんだか無料招待で法師を選んでしまいそうな感じです。四季折々に訪れたい、ってやつですな。

などともってまわりながら、肝心の風呂に触れてない。

長寿館浴場
長寿館浴場

さて、この風呂ですよ。薄暗い混浴の内風呂で、高い天井、当時モダンだったであろう窓、木のぬくもり、横の壁にそのままある脱衣棚、床を4つに仕切った浴槽、小石を敷き詰めた底からポコポコ湧き出す源泉、と箇条書きにしなければ追いつけないほど味わいある風呂です。お湯は少々塩辛い。

写真は誰もいない時間が見つからなかったので、ある程度空いているときに人のいない方向をさっと撮ったのですが、もっと広がりのあるいい空間です。熟年夫婦という感じの二人が静かに入っていました。ああ、こういう風になりたいもんだなぁと思いますね。しみじみ。

女性専用の風呂もあります。また、この混浴風呂も朝の1時間は女性タイムになるので、敬遠することなく法師を目指して欲しいと思います。

1999-07-18(2日目/日曜日)
日本海とんぼがえり

ソルト・スパ潮風
ソルト・スパ潮風

2日目は雨になりました。どうしていいのか分からないのでとりあえず日本海を目指すことにしました。柏崎まで北上。海辺にあるソルト・スパ潮風。健康ランド?という日帰り入浴施設です。日本海が望める露天風呂やミストサウナなどが揃います。

入場受付でタオル・バスタオルと室内着が渡されるんですが、この室内着が病院の服みたいな緑色でね、みんなでそれを着てマッサージ椅子などに座っている光景はかなり怖いものでした。足のツボマッサージなんてのもあります。やっぱり健康ランド。

柏崎の海
柏崎の海

砂浜へ出てみました。日本海です。雨は小雨になっているのですが、寂しさしきりです。なんだかもう海も空も分かりませんね、写真荒れちゃって。暗い空です。でも日本海ってこんなもんです。僕、日本海を見て育ちましたから、間違いありません。

鷹の湯
鷹の湯

その後は今日の宿泊地、松之山温泉へ直行。静かな山村。

温泉街にある共同湯、鷹の湯。大浴場と露天風呂があります。露天風呂からはコンクリートで固めた川が見下ろせるだけで眺めはよくない。でもお湯がいい。薄緑色で日本三大薬湯と呼ばれたという成分濃厚な湯です。塩辛く苦い強烈な味がしました。効きそう!という感じですね。

松之山噴泉
松之山噴泉

鷹の湯からちょっと登ったところで、温泉がガッシュしています。蒸気を立ち上らせながら、90度を超える源泉が数分ごとに噴出しています。これは「鷹の湯」の源泉で、松之山温泉にいくつかあるうちの一つ。温泉街の宿はほとんどこれです、多分。

また、この先には婿投げという祭りで知られる薬師堂があります。雪深い冬、薬師堂の上からその年の新婿を投げ飛ばし、雪に半身埋もれた婿に嫁が掛けより「あなた、大丈夫?」と愛を確かめあう祭りですね。ニュースでたまに見ますが。不動滝という滝もあるし(カメラマンが熱心に狙っていた)、湯浴み後にゆっくり散策するにはいい感じです。

周囲は温泉街とはいってもささいなもので、旅館も土産物屋も数えるほどしかありませんが、その中で「ジャズと蕎麦の店」が独り気を吐いています。ジャズ好きの男が突如蕎麦を打ちはじめた、正直あまり入ってみたいとは思いませんが。

そうそう、松之山温泉には坂口安吾記念館「大棟山美術博物館」というものがあります。「不連続殺人事件」の舞台だとか。でも寄りませんでした。せっかく旅と文学の接点なのに、だからこのサイトはダメなんですね。

松之山温泉凌雲閣
松之山温泉凌雲閣

宿泊したのはここ、凌雲閣というところです。温泉街からはちょっと外れたところにあります。ここは「鏡の湯」という源泉です。多分。ごめんなさい、分かりにくいです、松之山。

昭和初期の建築で、それはそれで味があるのですが、前日に明治期の法師に泊まっている比較では格下に見えてしまいますね。残念なことに。

ここも日本秘湯の会会員宿ですね。

凌雲閣廊下
凌雲閣廊下

ほら、いい感じでしょう? 木造3階建ての建物で、廊下や階段は磨きこまれて赤黒く光ってます。ぎしぎし軋みます。あちこちに「和の風情」が配置されています。

しかしながら……。なぜかコンクリート打ちっぱなしの新館があったりするんですよね……。小粋な酒処やパーティー会場があったりする。それはちょっと余分な感じがしました。

凌雲閣浴場
凌雲閣浴場

浴場はこんな感じ。新館にあるんですよ。でも湯はやっぱりよいです。苦いです。熱いです。

1999-07-19(3日目/月曜日)
河原の温泉、切明温泉へ

切明温泉河原露天風呂
切明温泉河原露天風呂

3日目は松之山から南下、長野に入って秋山郷は切明温泉です。河原から温泉が自噴してます。河原を掘れば湯が湧くという「手掘り」の露天温泉として有名です。でも現実的には風呂の形に掘ってあるこの湯だまりを利用するのが手っ取り早いみたいですね。

うまく誰もいなくなった所で撮ったんですが、人がいないと温泉には見えないですね……。断わって撮らせてもらったほうがよかったかも。

ここは水着を持ってきたほうがいいですね。まず来た時にはおじさんが2人入ってました(海パン着用)。おばさんが2人横にいた。水着を持ってこなかったことを伝えながらふた夫婦と談笑しつつ(つまりは早く帰れといいつつ)、「入ったらええがね。裸なんか見慣れとるけん。サオ2本あったら驚くけどのー」というおばさんジョーク(訛り再現不正確)に苦笑いしつつ、彼らが帰るのを待っていました。

彼らが上がり、写真を撮り、さぁ入るかと半歩踏み出したところで、別の家族がやってきました。夫、妻、小学生の子供。まぁ裸を見られること自体は別に構わないのですが、女性の前でケツを出すのはマナーが悪いと、やっぱり彼らが帰るのを待つことにしたんですが、子供がプールのようにバシャバシャはしゃぎ、帰らない。

さらにおじさん組がやってきて、彼らも入れずに困っている様子。水着を持ってこなかったから誰もいなくなるのを待って入ろうとしてるんですよ、ということを話すと、水着の用意をしてきていたおじさんがしびれを切らし「よし、俺が先陣を切ってあの家族を追い出すから、お前も続け」と言ってくださいました。して、計画通り入ることができました。気づけばこれに便乗したバイク乗りも入ってる。みなで「してやったり」と笑います。ああ、旅はふれあいです。

砂の上から湯が湧き出しているから、座ると熱い。湯に立っているだけで足裏が熱い。なかなかに落ち着かない温泉です。でも、満足です。山奥まで来たかいがあります。

僕のほうは男3人組で来ているのですが、あとの2人は入りませんでした。なにを恥ずかしがっているのだ。後悔すると思うけどなぁ。長々書いてますが、何が言いたいかというと、水着持っていったほうがいいよってことですね。

雄川閣露天風呂
雄川閣露天風呂

川の対岸にある宿、雄川閣にも露天風呂があります。混浴ですが、河原の湯よりはずいぶん入りやすいだろうと思います。立ち寄り入浴もできたので、入ってみました。

萌木の里露天風呂
萌木の里露天風呂

続いて切明温泉から新潟へ戻る途中、津南にある萌木の里へ。ちょうど長野と新潟の県境あたりですね。温泉やコテージ、釣堀などがあります。

萌木の里の露天風呂「山彦の湯」です。景色はすごくいいです。緑深い山や谷があります。紅葉も綺麗かもしれない。お湯は熱め。

この日の宿泊は大沢山温泉大沢館です。日本秘湯の会の宿。結局今回は何を思ったか秘湯3連泊です。立派な門構えが迎えてくれます。

大沢館渡り廊下
大沢館渡り廊下

囲炉裏の間があったり、渡り廊下がさりげなく洒落てたり、夕涼み用の団扇が置いてあったりといろんな面で配慮が行き届いているという印象です。普通は浴衣・タオル・歯ブラシというところだろう温泉セットに、ヘチマ・軽石・足袋が入っているのもいい。

大沢館露天風呂
大沢館露天風呂

露天風呂。木の優しいぬくもりです。温度もちょうどよい。眺めもとりあえず文句ない。

内風呂。こちらは石組の風呂です。地蔵が置いてあったりと渋い。側面がガラスなので、景色も露天と同様楽しめます。

1999-07-20(4日目/火曜日・祝日)
温泉を離れて陶芸体験

旭窯陶芸体験
旭窯陶芸体験

突如、何を思ったか陶芸体験です。温泉ばかりで疲れてたんでしょうね。簡単な指導後、自由に粘土をもてあそぶ。電動ろくろも使っていいそうでしたが、素人にはキツイということで手動ろくろ。なんだか分からない物体を幾つか作成、焼いて送ってもらうことにしました。普通は2時間近くかかるらしいものを30分くらいで終了、なかば呆れ顔されました。

山岳写真美術館
山岳写真美術館

それから越後湯沢にある世界山岳写真美術館へ。ヒマラヤ・チベットなど高山写真家の作品が並びます。部屋に飾りたい!という類の美しい写真満載です。尾瀬の写真展もある。中には「カトマンズ」という温泉設備もあるのですが(なぜカトマンズ?)入りませんでした。

という感じなんですが、いかがでしょうか。(了)