ハワイなしいわき、水戸の夏梅、鯉のぼり
行程
- 2009-05-03
- 福島―小野―江田―いわき
- 2009-05-04
- いわき―いわき湯本温泉―水戸
- 2009-05-05
- 水戸―常陸太田―竜神湖―常陸太田―郡山―福島
旅行記
2009-05-03(1日目/日曜日・祝日)
磐越東線、途中下車の旅
今回の旅は福島発着になります。謎ということでもなく妻の実家発着です。旅の目的は磐越東線と水郡線に乗ること……と言ってしまうと悲しい気持ちもあり、もとい、まだ行ったことのない福島浜通り方面へ、という旅です。
福島から新幹線をひと駅だけ乗って、郡山で磐越東線に乗り換え。中通りと浜通り、郡山といわきを結ぶ路線です。沿線のみどころとしては三春、あぶくま洞など。三春は滝桜が有名だけれどもう時期はずれだし、あぶくま洞も家族連れ向けの観光地って気がするなぁと思いながら、この列車の終点小野新町までやってきました。
小野は小野小町の故郷とも言われるところです。「小野小町生誕地」の石碑が立ってます。ただし諸説あり、一般には秋田県湯沢市のほうに部があるようです。でも名乗るのは自由、石碑立てるのも自由です。また「小野温泉」という小さな温泉地でもあります。ここで昼風呂に浸かろうって計画です。
まずは駅前にあった食堂に入って昼食。「メニューあります?」「入り口の壁んとこ貼ったっから」「(座敷に上がってたのだが靴また履いて見に行く)んー、じゃビールとカツ丼ください」「あいよ(瓶ビール持ってくる)」「……グラスもいただいていいですか?」「あははは、ごめんごめん」なんてやりとり。続いて入ってきた客も「メニューあります?」「入り口の壁んとこ貼ったっから」をやってる。
厨房から店主の娘がアイス持って出てきてカウンターで食べてる、そんな田舎町の駅前にありそうな食堂です。それでもカツ丼は思いのほかおいしいものでした。せっかくなので店名も言っておきましょう、きせいや食堂、です。
食後、駅にほど近い、前もって日帰り入浴可と調べてあった温泉旅館「廣太屋」に行ってみると、「只今、休憩中です」って札が立ってて閉まってました。なんということ。
ご用の方はお電話を、と電話番号も書いてはあるのですが、休憩中のところ呼びつけて風呂入らせろというのもナンです。玄関先につながれていた犬と遊びながら待つかなとも思い、近づいたらめちゃめちゃ吼えられてあえなく退散。
うーん、どうするか。周辺のほかのみどころは、「リカちゃんキャッスル」というリカちゃん人形のオープンファクトリーがあります。今日は偶然にもリカちゃんの誕生日らしくイベントもやってます。けどもちろん行きません。そんなところに男ひとりで行ってどうする。
駅で次の列車を待つかと座っていると、「昼のお風呂に入ろうとしたらどこもやってねぇんだ」「お風呂入れるもんだと思ってた、まさかやってないとはねぇ」なんて言いながらおじさんおばさんグループが駅へやってきた。みな同じなんですね。
郡山から小野新町までは列車本数も結構あるんですが、小野新町からいわきまでの区間はぐっと少なくなります。2時間に1本くらい。しばらく待ってやってきた列車に乗って20分ほど、次は江田駅で降ります。もういわきエリアです。
ここは夏井川渓谷という紅葉の名所。四季折々に美しい、とどこかの観光案内にあるのを見てきました。でも駅で下車したのは僕だけだし、やはりオフシーズンなんでしょうね。いや、車で来る人ばかりで列車旅の人なんていないんでしょうかね。
江田駅前がすぐ渓谷ということで、駅からテントが並んでるキャンプ場が見え、その前におそらく川が流れてるんだと思います。見えませんけど。案内によると、渓谷のビューポイント「籠場の滝」までは30分ほど歩かねばなりません。渓谷沿いに散策道みたいなものがあって、水辺の景色を愛でながら歩けるのかとも思ってたんですが、歩道のない車道を、車をよけながら歩く道でした。渓谷はやはり見えません。
途中、プレハブの「美術館」がありました。おそらく近所にお住まいのおっちゃんがやってる個人美術館で、所蔵のガラクタ(失礼)か「わしの絵じゃ」を飾ってるんでしょう。B級スポット愛好心を動かされながら近づくと、土曜しか開けてないとの記載があり入れませんでした。残念。
疲れてきた頃、「籠場の滝」の案内板が見えました。向かって右手に見えるあれか、足元のこれか、どこがその滝なのかよく分からないものの、確かにざばざば水が落ちてます。岸壁の荒々しさがいい感じです。柵もなく、足すべらせたら激流に呑まれるポイントまで突き出した岩のうえで、よろけつつ写真を撮ります。
やっぱり、全体に見て、紅葉の時期に訪れるのがベストかと思いました。
列車までもうちょっと時間があります。支流沿いの背戸峨廊というところも美しい景色があるらしい、というので入り口まで行ってみたんですが、相当険しい山道で、はしごや鎖を伝って登るような沢登りなんだって。そんなところ行けません。午後2時以降は入山禁止になってたので、すでに過ぎてもいます。
そんなことでいわき駅に出ます。駅前は再開発工事中。あちこちに「平」という表記があります。1994年まで「いわき駅」は「平駅」だったことを思い出しました。当たり前(?)だけどこのあたりは今でも平地区なんですね。
駅前のホテルで宿泊。夕食は中華料理屋で角煮そば。いわきでなぜ中華?という突っ込みは受け付けません。
2009-05-04(2日目/月曜日・祝日)
いわきから水戸、町歩き
翌朝。いわき駅前からバスに乗って白水阿弥陀堂へ向かいます。「いわきに来たらどこ見るべき? あ、待って、スパリゾートハワイアンズはナシの方向で」と言ったとたんに小物たちばかりになるような気もしつつ、そんなときこの白水阿弥陀堂は名前の挙がるスポットのひとつと言っていいんじゃないかと思います。フラガールとは対象年齢大幅に違いますけど。
白水阿弥陀堂は平安末期に建てられたお堂、仏像が残っていて、当時の境内を再現する浄土庭園が整備されているところです。国宝に指定されている阿弥陀堂は願成寺のもつお堂で、願成寺の本堂などは阿弥陀堂の西にあるんですが、そちらは見に行きませんでした。そういう、阿弥陀堂だけが観光客を集める寺域です。
お堂ではお坊さんが「長押の花は宝相華と申しまして、残念ながら現実の世界では見ることができません。極楽浄土に咲いてございます。彼岸に渡られたのち、この花が見えましたらそこは極楽浄土でございます。もしこの花がございませんでしたら、閻魔様とご縁を結ばれたということでございます」なんて名調子で解説してくれてます。みな正座で拝聴してたので僕も思わず正座。
解説を聴きながら、堂内を眺め回します。古い木造建築ってそれだけで味が出ますね。内陣の壁画や長押の文様など、装飾はほとんど剥げ落ちています。なんでしょう、滅びの美? 本尊阿弥陀如来もいい顔してます。
浄土庭園は発掘調査をもとに復元されたもので、背後に山を抱いた阿弥陀堂を蓮池で囲む、雅な風情です。なぜいわきにそんな本格的な浄土式庭園があるんだろう?と思うと、奥州藤原家から嫁いできた娘が建てたものなんですね。平泉の影響が入ってるのか。なるほど。
池をぐるりとひと回り。季節的にあまり華がない感じではありましたが、鯉がばしゃばしゃ跳ね、亀が日向ぼっこしている平和な池でした。
バス待ちに座ってたらボランティアガイドの方に「ここからすぐですから、ぜひ寄ってって」、と「石炭のみち」パンフレットを握らされました。いわき、湯本エリアは石炭採掘で発達したところ。観光資源化しようと炭坑跡などを含む散策コースや資料館を最近整備したみたいです。でもごめんなさい、行きませんでした。
その後、いわき湯本温泉に出ました。駅周辺にはブロンズ像がいっぱいあります。サックスを吹く男がベンチに座ってたり、しゃぼん玉を飛ばす少年を犬が見上げてたり。なんですかこれは。町のイメージ作りとしては「古湯」で押したほうがいいんじゃないか。みっちり書き込まれた手作りマップとか、地元が観光誘致に頑張ってるのはよく伝わるんですが。
案内看板によると那須、有馬、道後、玉造に並ぶ日本三古湯、ってあれ5つもある。まぁ並ぶくらい古い湯です。泉源が浅く、自然湧出してたんですね、奈良時代の開湯と云います。
でも、中央資本が入っての石炭採掘が進み、坑内に出る温泉を排出してたら大正期に一度源泉は枯れ、昭和に入ってまた新たな湯を掘ったんだとか。「中央資本」というところに憤りを感じますね。でも炭鉱跡とか「石炭」も観光資源だったりして言い方が難しいところです。
しかし、新しい温泉を掘りあてたんだったら古湯でもないんじゃ?という疑問も湧いてきました。この場合の古湯は、温泉場としての古さを言ってて、湯が昔と同じものかどうかは関係がないんでしょうか。
そんなことを「つるの足湯」前で、案内看板を見ながら思います。そんなこと考えてないで早く湯に入れという感じですね。「手湯」という言い方でいいんでしょうか、湧出口のところは手を浸けられるようになってます。すごく熱い湯で、硫黄臭が強いです。でもここでは足は浸けずに、近くにある共同浴場へ急ぐことにします。
やってきた日帰り温泉施設は「さはこの湯」。火の見櫓を模した外観は、古い時代を再現した新しい施設という印象なのに、なかに入ってみたら古びてます。新しいのか古いのかよくわからん、とも思ったんですが、古い共同浴場を建て替えたみたいですね。
岩風呂「宝の湯」と檜風呂「幸福の湯」が男女日替わりになってるようなんですが、この日は男湯が檜風呂でした。
浴場に入ったとたん立ちくらみするような硫黄臭があります。八角形になった檜の浴槽が真ん中にあります。そう大きくない。連休ということですごく混んでて、みっちり人が入ってます。午前中なのでそれでもまだマシなのかもしれません。熱めの湯で、でも長居したくなるようないい湯です。浸かってても、硫黄臭でくらくらします。
湯上りにはそばにある温泉神社へ参拝。温泉タンクの横に階段があります。階段下には石碑に温泉が掛け流されていて、湯の花で覆われてます。温泉街の神社という雰囲気が出てていいですね。「温泉神社」なんて半端な名前の神社ながら、延喜式に見える由緒あるところです。
昼食に、というか湯上りのビールを飲みたくて、寿司屋に飛び込みました。生ビールに握りを注文。湯上りのビールはやっぱり最高だなぁ。
湯本温泉にはほかにも共同浴場があって、地元ユースな「上の湯」のほうが湯がいいとも聞くのですが、夕方からの営業なので行けません。駅前に「みゆきの湯」という新しい施設もあります。
湯本温泉から常磐線、特急に乗って水戸へ。まず水戸城跡へ向かいます。水戸へは10年以上前にも一度来ていて、偕楽園はじめ市内の見どころは見たのですが、まったく覚えてないんで初めてみたいなものです。
そう言いながら、水戸城跡へ来てみたら学生時代の感想を思い出しました。「城ないじゃん」って。城のあった区画は学校になってたりして、説明板があるもののほとんどモノが残ってないんですね。写真に撮って面白いものもあまりないです。
城跡はいったんいいとして、橋を渡った向かいが弘道館、藩校です。水戸では水戸藩第二代藩主光圀(義公。水戸黄門)と、第九代藩主斉昭(烈公)の名をあちこちで目にするんですが、ここでも光圀の思想と、斉昭の理念が教育に落とし込まれてます。正面の部屋に掛かる「尊攘」って大書きした掛け軸もソレですね。
斉昭は大河ドラマ篤姫でも聞いた名前。また東京を下った慶喜が水戸で謹慎していた、というエピソードも大河ドラマでのワンシーンであったと思うのですが、その部屋もここ弘道館にあります。そんなこともあって、観光客も増えてたりしますか? 混雑してます。「徳川が15代しか続かなかったのって少なくない? だってルイ53世なんて53代目ってことでしょ」「すごいな髭男爵!」って人の会話に笑う。
駅へ戻ってバスに乗り、偕楽園へ。岡山の後楽園、金沢の兼六園と並ぶ「日本三名園」のひとつですね。梅林が青々しいです。見渡す限り緑の梅林、ある意味壮観です。梅のシーズン以外はすいてたりしてとも思ってたんですが、ゴールデンウィーク、やはり人だらけです。梅だけじゃなく竹林とかつつじとか萩とか、ほかの季節でも見るべきものがあるんですね。というか、「つつじまつり」の真っただ中だったのでした。
梅は、よく見ると実をつけてます。
梅林、竹林を抜けて吐玉泉。江戸の頃より茶の湯につかったという清水が湧いています。新しい台座に勢いよく湧いていて、水道水を流してるんじゃ?とも思ったりする作り物っぽさがあるんですが、造園当時から枯れてない清水です。
園内の休み処として、斉昭が設計するなど、その造りにもこだわった好文亭。順路に沿ってほぼ1本道で亭内を見ていくんですが、なにしろすごい混雑で、最初から最後まで行列になってます。襖絵とか茶室とか、じっくり見たいものがあってもあまり自分のペースでは進めません。
なんだか残念な想いで行進していった3階、ここも木造建築としては収容人数超えて潰れたりしないんだろうかと心配になるくらいの人。でもここからの眺望は、つつじの庭越しに千波湖が望め、素晴らしいものでした。昔はもっと広い湖だったようだから、江戸期の眺めはもっとよかったんでしょうね。
偕楽園東門の前にある常磐神社に併設された「義烈館」へ「水戸のすごいものあります」って看板に惹かれて見に行くと、なにがすごいって「常磐神社史略年表」。創建からの歴史年表のなかに1996年「インターネットに『水戸黄門ホームページ』開設」なんてのが混ざってる。思わずメモちゃったくらいすごい。あとは斉昭が軍事演習で使ったという巨大な陣太鼓くらいですか。
そこから南、千波湖湖畔へ。白鳥、黒鳥など水鳥が多く遊ぶ湖です。黒鳥のかわいい親子に癒されながら湖畔の散歩。湖をまわるジョギングコースとしても整備されていて、地元の方々か、走っている人も多いです。それもあって、歩きやすい道になってます。
湖畔を歩きながら不意に、自分がまだ硫黄のにおいがすることに気づきます。湯本温泉だったら温泉の香りですが、ここ水戸ではただの臭う男なのではないか、と心配になったりします。大丈夫でしょうか。
周りは遊具のある児童公園だったり、SLが置いてあったり、綺麗な花壇があったり、賑わってます。硫黄臭の男には用事のないところですが。
巨大な光圀像がありました。後光のように夕陽を背負い、湖を睨んでいます。
水戸の見どころを見ていくと、光圀(水戸黄門)よりも斉昭の残したもののほうがたくさんあるのに、やはり存在感としては水戸黄門のほうが大きいですね。
例えば偕楽園作ったのも斉昭ですけど、なぜか光圀の印象があったり、光圀と関係があるのかどうかよく分からない千波湖のほとりに銅像立ってたり。愛されてるんだな、ということは分かります。
あげくは黄門様御一行の顔ハメなんてものもありました。男3人組が「写真撮ってください」って人にカメラ渡して向かったのを「おっ」って見てたんですけど、正面から顔入れて、カメラに背中向けてポーズしてる。通りすがりのおばちゃんが「お兄さんたち逆!逆!」ってネタにマジ突っ込みしたりする、楽しい風景がありました。
市内のホテルで宿をとり、宿泊。
夕食は本格広島風お好み焼き。水戸でなぜ広島風?という突っ込みはやはり受け付けません。
2009-05-05(3日目/火曜日・祝日)
鯉のぼりを見に竜神湖
水戸から水郡線に乗って常陸太田へ。水戸と郡山を結ぶ水郡線ですが、こちらはちょっとだけ支線という形で飛び出してます。その終着駅が常陸太田駅です。
常陸太田駅からバスで竜神湖方面へのバスに乗ります。40分ほど山道を登る車中はすごく揺れて酔いそう。バス停を降りて20分ほど歩いて山を登ると今日の目的地です。
やってきたのは竜神大吊橋。竜神湖の上に掛る長さ375メートルの橋は、人が渡る吊り橋としては本州一なんだとか。でも数年前まで日本一だったらしく、看板にはシール貼りで「日本」が「本州」に訂正されてたりします。悲しい。ちなみにここを超えて日本一になったのは、大分県に2006年にできた「九重夢大吊橋」らしいです。
4月中旬から5月中旬にかけて、この吊橋周辺に鯉のぼりを展開するイベントが毎年あり、折しも今日は子供の日。テレビ局がカメリハやってたりします。「わたくし今高さ100メートル、竜神大吊橋の上におります。今日は子供の日。子供の日と言えば、そう、鯉のぼり。」なんて。人ごみ嫌いな私ですが、鯉のぼりイベントにわざわざ来てしまったのですね。すごい人出です。
1000匹近い鯉のぼりが谷の上を泳いでいます。いや、風があまりないんで目刺しのように垂れ下がってます。壮観です。谷を渡るようにロープ掛けて鯉のぼり吊ってるのですが、どうやって設置するんでしょうね?
吊橋はもちろん頑丈なものなんですが、大勢の人が歩くんでぐわんぐわん揺れてます。歩いてるとそれほど感じないんですが、写真を撮ろうと立ち止まるとその揺れを実感できます。結構怖いです。その怖さをあおるように、橋の途中には足元をガラス張りにして下の湖面が見えるようにしてあるところもあります。
橋を往復してレストハウスで昼食。生ビールにカレー。イベント中なので、出店もたくさん出てて鮎を焼いたりしてました。
バス便はあまり本数がないので(イベント中くらいは臨時なり出せばいいのにね)、次のバスまでぶらぶらと過ごします。
バスで常陸太田の駅に戻り水郡線、上菅谷で郡山行きに乗り換えて延々と、3時間ほど乗って郡山まで直行。袋田など寄りたかったところも他にもあるけど雨になってきたしやめておきました。
夕食は郡山で降りて盛岡冷麺。郡山でなぜ盛岡冷麺?という突っ込みはもちろん受け付けません。
郡山駅前では、なにやらライブイベントをやっていました。郡山から福島まで新幹線に乗り、この旅は終了。(了)