1999年4~6月

近況報告

芥川賞受賞作

今週は何を思ったか、前回の芥川賞受賞作を続けて読んでました。古本屋でようやく見つけたので。

比べるまでもなく、花村萬月が圧倒的にクドイんです。それが芸風と言っちゃえばそこまでなんですが、『ゲルマニウム~』は特にヒドイ。なにか賞を意識したような言説が多いんですね。執拗な描写、ってんなら彼のお家芸でもあることだし楽しく読めるんですが、「文学的表現」で塗りこめられるとつらいものがある。彼の作品だったら他にもっといいのがあるだろうに、とも思うんですが。

対して『ブエノスアイレス~』は涼やかです。クールです。結構好きになってきました、藤沢周。タイトルだけ見て、ハードボイルドなのかと思ってましたが、全然違いましたね。福島ですからね。それでも、受賞作よりも併録の「屋上」の方が好きなんですよ、レビューに書きましたが。たぶん僕の読解力のなさなんでしょうが。見世物ポニーがね、屋上レジャーランドの安っぽさとその哀しみをね、うーん。

もちろん、完全に僕の主観評価ですけどね。だからこそ20年前の村上龍とかが突如出てきたりするわけですね。『真昼の映像~』について語っているサイトってそうそうないでしょう。僕とても語ることもないんですが。

とにかく寮から出なきゃ

引っ越しをするわけですよ。とにかくもう。これまでの社員寮を出て、気ままな一人暮しを始めるわけなんです。

この寮ってのがクセモノでね、いまどき珍しくも食堂があり、共同の浴場があるんですね。個室は水まわりはもちろん収納すらないただの箱で。トイレや風呂場で先輩社員に会っては「お疲れ様です」って挨拶する世界ですよ。「プライベートな時間に会社の奴らの顔なんて絶対に見たくない!」のだがずるずると2年も過ごしてしまいました。潮時です。「靴かたせ!」と玄関脇のボードに殴り書かれた寮長の体育会的号令ともおさらばです。

んで、通勤時間が1時間も縮まるんです。これまで1時間30分もかかってましたからね。そんなんで寮って言えんのか! それでロックと言えんのか!とオーディエンスを煽り続けた日々よ、さようなら。

そういう晴れやかな気分なんですよ、いま。ボーナスは全部なくなりますけどね。

リンクコーナーなくしてみたり

ちょっと暗すぎ? 内容の更新をおろそかにしたまま、トップページを久しぶりにリニューアル。シンプルな表紙にしようとゼロベースで作りこんでいくうちに、なんだかよくわからなくなってきちゃってますが。まるで内向する世代。

で、リンクのコーナーなくなりました。「Webに身を置く者として、外部リンクは必要だ」と思います? まぁいいんです。久しぶりにやってきた人が「おっ」と言ってくれれば。それだけですね。

で、4年も前の旅日記をこっそりアップしちゃったりする。これは当時のメモが残っているので、それを元に。なんだか全面的に寝てばかりいる。観光なんてそっちのけで、疲れた疲れたって言っている。自分ながら面白かったので、文章はほぼ当時のメモのまま。

サイト開設1周年

今週読んだ2冊、ともに星5つつけてしまいました。ページ開設1周年記念大謝恩セール!です。いやいや、おもしろかったし。

でも早いものでもう1年ですよ。感慨ひとしおですね。今から考えるとデビュー当時は惨憺たる内容でしたが、少しずつ洗練されてきたのではないかと思っています。「誰でも平等に表現の機会が与えられる場」というWebの幻想も、その意味するところを理解しつつあります。最終更新日がもう半年前の日付、みたいな荒城の月にはしたくなかったので、週1度のアップという最低ラインを設けて踏みとどまっている。順調といえば順調です。

ただ、1周年という今日を迎えるまでには、と公言していた「旅」部門のリニューアルは遅々として進んでいません。自分的にハッパをかけたつもりだったのですが、仕事が忙しいんですよごめんなさいごめんなさいと自分に言い訳しつつ、まだ披露するレベルに達していません。そういうことです、ごめんなさいです。

うーん。やっぱり楽しいんですよ。自分で作るってのが。よそのサイトを見て回っているだけで満足できるものなのか。まだページを持ってない人にはホントに強く勧めますね。作りましょう。「書くべきこともないし・・・」って言うけど、なんでもいいのよ。僕のページ見ててもわかるでしょ。例えば「近所の○○食堂はうまい!」でもいいんですよ。立派な情報ですからね。Webという一つの大きな図書館の一部となりうるんですから。うーん。

とにかく今後ともよろしく。ってこの夏には世界は終わるんだけどな。

平野文体

平野啓一郎、行っときました。電車で読んでたから辞書がなく、読めない漢字は推測で進めましたが、新鮮でおもしろいです。これは文章修辞が「古臭い」ことの新鮮さなんですね。ストーリー自体はそう変化に富んでいるわけでもない。先が読めますしね。とりあえず『日蝕』のほうも入手次第読みたいと思ってるんですが、この文体だけのおもしろがられ方ってのは非常に危険な気もしますね。なんですか、物語の時代背景によって文体を変えるんだと、例えば明治の物語なら明治的文体で書くことがごく自然なんだと、いうことらしいですが、現代のものを描く時にどのような文体が現れるかによって評価が固まるでしょうね。しばらくは時代物で行くのかな?

なんだか気づけば最近は芥川賞作家ばかり読んでますが、平野啓一郎、柳美里、花村萬月、藤沢周なんかは受賞作をまだ読んでない。なぜか古本屋に置いてないんですよ。みなさん手放さないのかしら。古本屋で見つけられない限り文庫化を待つしかないような感じなんですがね。それでいて今回の『一月物語』なり藤沢周の『境界』なりは古本屋にあったんです。「売れた本ほど高い確率で」古本屋で出会うと思うのですが・・・。

そうだ、最近とみに、『永遠の仔』の評判を聞くんです。作者名忘れましたが、書店で目にはつきます。人形の表紙のやつで、2巻組。チャットやっててもあれはおもしろいと何人かが言ってました。今世紀最高だと。どうなんでしょうか。なかなか2巻組ともなると手を出しづらいのですが、やっぱり読むべきものなの?

国内制覇

今回行ってきた沖縄で、国内制覇です。全都道府県を歩いたことになります。ページにはそれぞれ載っているわけではないですけどね。これからも国内派旅人として精進したいと思います。

どちらかといえば鉄道好きで、本文では「飛行機嫌い」と書いたんですが、嫌いというより鉄道のほうが格上と奉じてるわけですよ。飛行機なんて旅の情緒もなにもないじゃねいかい、とね。それでも「離陸の際のカメラ映像」は好きです。機体の前についたカメラが、滑走路から飛び立つ様をスクリーンに映してくれるやつです。気持ちいいですね、あれ。

最近殺人的仕事量をこなしてるので、ちょいとしたリフレッシュができました。リフレッシュというには重い心象風景でしたがね。

そば屋

なぜそば屋のカツ丼はあんなにうまいんだろう。

週末ごとに雨が降る。どこかへ出かけようという気力を失わせる雨が降る。しようがないので部屋の片付けなどしていたのだが余計に散らかしてしまう。冷蔵庫には貰いものの味噌しか入っていない。シャツを洗濯しなければならない。コーラの空き缶の赤色が部屋の中で浮きあがっている。煙草で煙っている。来週は沖縄だ。晴れるだろうか?

頁数と値段

100字レビューのコーナーで、それぞれ頁数と値段を書き入れるようにしました。参考にしていただければ、と。なんかもう手をつけたいことはいろいろあるんだけどどっからやっていいものやら。あとは本の表紙写真も入れたいんですよね。忙しいことです。それより冊数増やすことを先にやるべきなんだけどさ。

だめだ。疲れてるわ。

ローカル津軽

ゴールデンウィークは青森に行ってきました。前日までは木曾伊那へ行こうかと思っていたのですが、突然気が変わりまして。五能線に乗って田舎だなーとか言って悦んできました。メインは海の秘湯、山の秘湯です。

今回ルートマップを作ってみました。悪くない。ので、過去分にも遡って全てこの形式しました。健気に頑張ってるでしょ? 褒めてください。

県別の方の更新はしません。なぜか。もうしばらくで県別のコーナー大幅リニューアルを予定しているからです。現況では意味あるとは思えませんからね、自分ながら。

5月中のリニューアルを予定しています。このWebサイト誕生一周年になる6月7日にはなんとか間に合わせたいと。現在開発状況60%。もうしばらくお待ち下さいね、あまり期待されても困るけど。個人のサイトなんてこんなものさ、というレベルですね。

鬱々と

まだゴールデンウィークは残っていますが、旅から戻りました。

今回読んだ本では、花村萬月『鬱』。みなさん、これをどう読んだんでしょうか。悩んだ挙句、僕は星2つという低い評価にしてしまったんですが、間違ってます?

おそらく途中で疲れちゃってるんでしょうね、作者が。その疲れがどっとこっちに流れてくるんですよ。なんだかもう痛々しくて辛いんです。描写、描写で突っ走ってきて、ふと素に戻ったらもう着地点が見えない。出口を探して右往左往している感じなんですね。これだけ分厚い本を旅先に持っていった僕も右往左往してしまいますよ。ねぇ。

それから、藤沢周『サイゴン・ピックアップ』は奥薬研の河原で石に座って読んでました。読み返すたびに、その情景を思い出すでしょう。旅の更新はまた後日。

ガン死について

更新が大幅に遅れまして申し訳ありません。葬式仏教のシステマティックな死の営みに参加してきたせいです。それでもカミュを気取って明日から旅に出て遊んできます。イエイ。遺影。ふう、おちゃらけてる場合でもない。えーと、いま想ってることを書いてみたんですが、少々長くなったのと、そんなもの読みたくないという人もいるでしょうから、別ファイルにしました。興味のある人だけどうぞ。「ガン死について」です。

さて、村上春樹の新作を読みました。短すぎて欲求不満です。でも春樹らしい作品ですね。他の人には絶対に書けない。魂だけ別の世界へ連れ去られるような感じ、好きです。

五体不満足は、買ってまで読む気はなかったんですが、実家に帰ったときに置いてあったので読みました。なんというか、話がブツ切れで、入りこめませんでした。障害者のために音読したものも出てるみたいですね。それはいいことでしょう。

とりあえずそんなとこ。

旅の予定を考えながら

風邪で久しぶりに寝込んでしまった。会社も一日休んだ。それも一番忙しい時に。ということで更新も投げやり。

ゴールデンウィーク、みなさんどう過ごすんでしょうか。今年は使い易い配置ですよね。30日に休めば、7連休ですか。もちろん僕もそういう目論見です。やっぱり連休は旅でしょ。みんな行くんでしょうねー。

僕も旅立ちますよ。あくまで国内で。面度臭がりなんで、事前に予約したりするのが億劫で、海外って感じにはどうしてもならないんですよね。国内だったら駅行って思いついたとこまでの切符買えばすむでしょ。あー、なんかもうだるいんですよねー、風邪で。

源一郎なのに!

やばいっすよ、これ。何がって高橋源一郎の新作『あ・だ・る・と』すよ。悩んだあげく満点つけちゃいましたもん。

AV監督が主人公なんすよね。で、コミカルにエロく撮影現場が描かれていくんす。電車でチンボコ勃てながら読んでたら隣に座ってるねーちゃんに覗きこまれてるような気がして興奮倍増のエロエロなんすよ。たしか源一郎ってほんとにAV監督やったんですよね、なんかエッセーで書いてましたけど、ひょんなことから。その体験をもう小説にしちゃったのかー、速いなー、源一郎なのに!とか思うんすけど、やっぱ実体験のリアルってゆうんすか、エロいんすよ。

んでAV監督へのインタビュー形式とか章ごとにスタイルを変えつつ、「AVの生活」が綴られるんですね。綴られるんすよ。笑っちゃう場面もあって、おもしろいなーって、星4個かな?とか言いながら読んでったんす。

そこへ! エピローグ。泣きましたよ。これまでのエロエロはなんやったんや!ゆうくらいの大激震っすよ。こんな終り方ありかよぅ! あんた、これが言いたかったのかよぅ! そのための長い前振りだったのかよぅ!ってもー、あてのない旅に出ちゃいそうなくらい呆然としちゃいましたよ。

そーいうわけで満点です。わけわかんないすけど。とにかく! 本屋で見かけたら買うべし! あっ、腰巻はずしちゃいやーん、なエロい装丁でレジには女性店員がいるけどくじけず買うべし!ってむやみに勧めてみたい気がするんすよ。するんすよ。

ゴールドラッシュ

ゴールドラッシュ読みました。何だか村上龍みたいな文体だな、と思ったりしてるんですが、おもしろかったですね。少年に共感して、だったかモチーフにしてだったか忘れてしまいましたが、「事件」との関連で話題になってたんですよね? それにしちゃ内容は全然違うじゃないですか。病理だけ捕らえストーリーを別のものにしたら、まったく古典的な小説になったという感じ。それでも読ませる力はあります。事件とは無関係によくできた作品ですよね。

友部正人

たまたま古本屋で見かけた友部正人の詩集を買ってきました。歌詞集ですね。3冊あるはずなんですが、2冊だけ置いてあったのでそれだけ買ってきました。友部正人って人は、孤高のフォークシンガーです。70年代からやってていまだ現役。フォークって言っても「神田川」みたいなノリとは全然違いますよ。無理して言えば近年の玉置浩二に近いかな。重いんだけど暖かくて、泣きそうなんだけど元気が出るという、ね。

この詩集を本屋で見つけるのは難しいでしょうが、CDなら売ってると思います。興味ある方は聞いてみてください。おすすめはライブ盤「はじめぼくはひとりだった」2枚組です。

僕はいま25歳だから、もちろん彼をリアルタイムで聞いて育ったわけではないです。どのように辿りついたかと言うと、まずストリート・スライダーズが中学の頃好きになったんですね。こいつも息の長いベテランロックバンドですが。で、そのギタリスト・蘭丸が、RCサクセションのギタリスト・仲井戸麗市と「麗蘭」ってバンドを組んだんですよ。そこから仲井戸麗市ソロも聞くようになり、あるとき雑誌の評論かなんかで仲井戸麗市を友部正人と比較して論じてたんです。それで興味をもって友部正人と。そういう流れになっております。

作家でもそうですね。村上龍が褒めてたから中上健次を読んでみる、みたいなね。そうやってすごろくみたいに進んで行くと、短距離で自分好みの匂いに辿りつけるわけです。そんな感じです。