坂井セシル/紅野謙介/十重田裕一/ほか『川端康成スタディーズ』

書誌情報

  • 川端康成スタディーズかわばたやすなりすたでぃーず
    21世紀に読み継ぐためににじゅういっせいきによみつぐために
    坂井セシルさかいせしる/紅野謙介こうのけんすけ/十重田裕一とえだひろかず/マイケル・ボーダッシュまいけるぼーだっしゅ/和田博文わだひろふみ/多和田葉子たわだようこ/川端香男里かわばたかおり/ジャン=ノエル・ロベールじゃんのえる・ろべーる/平中悠一ひらなかゆういち/アーロン・ジェローあーろんじぇろー/スティーブン・ドッドすてぃーぶんどっど/李征りせい/仁平政人にへいまさと/鈴木登美すずきとみ/ジョルジョ・アミトラーノじょるじょあみとらーの/田村充正たむらみつまさ/金井景子かないけいこ/イルメラ・日地谷=キルシュネライトいるめらひじやきるしゅねらいと/四方田犬彦よもたいぬひこ/志村三代子しむらみよこ/兪在真ゆじぇじん/黃翠娥こうすいが/信國奈津子のぶくになつこ/坂上弘さかがみひろし
    2017-01-06
    笠間書院
    20世紀ノーベル賞作家、川端康成をどのように解釈、あるいは再解釈してゆけるのか。文学・美術・映画、あらゆる分野から巨人を分析し、既成の批評神話の超越を目指す。今世紀以降も読み直し、翻訳や考察を続行してゆくために、何をどうしていけばいいのか。
    パリで開催された「川端康成」の国際シンポジウムをもとに、ヨーロッパ・アメリカ・アジアの執筆者が大集結。近代の文化遺産、KAWABATAを、世界の舞台に再生する。

    特別寄稿、多和田葉子・四方田犬彦。川端研究史上初、志村三代子による川端原作映画の紹介事典付。

    執筆は、坂井セシル/多和田葉子/川端香男里/ジャン=ノエル・ロベール/平中悠一/アーロン・ジェロー/スティーブン・ドッド/和田博文/仁平政人/李征/鈴木登美/ジョルジョ・アミトラーノ/田村充正/金井景子/イルメラ・日地谷=キルシュネライト/紅野謙介/十重田裕一/マイケル・ボーダッシュ/四方田犬彦/志村三代子/兪在真/黃翠娥/信國奈津子/坂上弘。

    【一九六八年に日本文学史上初めての文学ノーベル賞を受賞した作家の研究が、没後約45年経った現在、国際的な場で再考察されるのはごく自然なことであろう。この再考察は既成の文学研究の蓄積をふまえながら、批評方法をさらに批評してゆき、新しい視野を開拓してゆく所に目標がある。大きく分けて、作家の同時代的で実験的な創作法、つまりモダニズムと、日本の伝統的な美学や慣習に修飾を求める表現法、つまり伝統主義の両方を、批評的な神話と捉えて、それらを超越してゆく観点を編み出してゆくのが、本書のねらいである】…序文「川端研究の新しい広場を作るために」より
    川端研究の新しい広場を作るために▼坂井セシル

    ○巻頭エッセイ
    雪の中で踊るたんぽぽ▼多和田葉子

    第1部 川端康成のアクチュアリティー

    1 川端康成と21世紀文学―カノンの効果をめぐって▼坂井セシル
    1 川端文学再読の意味/2 作家の運動/3 実態対制度化/4 翻訳の功績/5 作品批評としてのパロデイ/6 モチーフの繁殖、作品の繁栄/7 終わりに
    2 川端康成、コレクションと資料の現在▼川端香男里
    1 「コレクション」としての全集/2 教育装置としての「コレクション」/3 残された課題
    3 川端―日本語と仏教▼ジャン=ノエル・ロベール[平中悠一/訳]
    4 川端と映画―「文学的」と「映画的」の近代▼アーロン・ジェロー

    第2部 モダニズム再考―その時代性と実験性

    1 一九二〇年代のモダニズムと政治―川端、横光の比較から▼スティーブン・ドッド
    1 イントロダクション/2 政治/3 モダニズム/4 revolutionの二つの面/5 結論
    2 東京―浅草の都市空間―「浅草紅団」の未完性▼和田博文
    1 浅草イメージの間テクスト性/2 映画表現と言語表現の交通/3 都市の断片と、同時代読者の心象地図/4 浅草の「底の知れない流れ」と小説の未完性
    3 川端康成における心霊学とモダニズム▼仁平政人
    1 心霊学とモダニズムの結びつき/2 フラマリオン受容と「白い満月」/3 「慰霊歌」と「抒情歌」/4 終わりに
    4 モダニズムと身体―川端康成『雪国』における旅の意味を中心に▼李征
    1 「書物」と身体/2 「鏡像」と身体/3 「天の河」と身体

    第3部 問題としての伝統―言語・身体・ジェンダー

    1 川端康成の文章観・国語観・古典観―『新文章読本』と文学史の系譜づくり▼鈴木登美
    1 はじめに―川端康成の文章論と戦後の再出発/2 『新文章読本』と歴史の感覚/3 横光利一の文章変遷史と川端の「国語」観/4 谷崎潤一郎『文章読本』と川端の文章観/5 戦後の川端と『源氏物語』/(附)戦後川端・谷崎関連略年表
    2 聞こえざる響き―『山の音』におけるナラションと撞着法▼ジョルジョ・アミトラーノ[平中悠一/訳]
    3 川端康成「山の音」と小津安二郎監督『晩春』の詩学における〈日本〉▼田村充正
    1 終戦からまもない鎌倉/2 日常生活の美と神秘/3 韻律としての映像/4 「山の音」の詩的構造
    4 「初老の男」の想像力―『山の音』のジェンダー編成▼金井景子
    1 しゃべり続ける男としての信吾/2 言葉敵としての女たち/3 特別な稽古の始まり
    5 身体と実験―川端文学における不具者の美学▼イルメラ・日地谷=キルシュネライト
    1 純粋の要素と美の逆説/2 身体障害と静かな諦めの美/3 目に見える障害と目に見えない障害/4 ジェンダーを反映した障害とジェンダーを反映した理解/5 身体と実験/6 逆説と挑発の美学に向けて

    第4部 文学の政治学

    1 「代作」と文学の共同性▼紅野謙介
    1 「代作」という現象/2 このテクストは誰が書いたのか/3 編集者としての作家/4 自分で自分を編集する
    2 占領期日本の検閲と川端康成の創作―「過去」「生命の樹」「舞姫」を中心に▼十重田裕一
    1 二つの検閲下の創作活動/2 占領と戦争を描く「過去」「生命の樹」への事前検閲/3 事後検閲の時期における「舞姫」とメディア規制の力学/4 占領下の出版活動
    3 冷戦時代における日本主義と非同盟の可能性―『美しい日本の私』再考察▼マイケル・ボーダッシュ
    1 第一世界のサイデンステッカーと川端/2 鉄のカーテンの向こう側/3 川端と第三世界

    第5部 川端康成原作映画へのアプローチ
    『伊豆の踊子』映画化の諸相▼四方田犬彦
    川端康成原作映画事典▼志村三代子

    1 狂った一頁 衣笠貞之助 一九二六年
    2 浅草紅団 高見貞衛 一九三〇年
    3 恋の花咲く 伊豆の踊子 五所平之助 一九三三年
    4 水上心中 勝浦仙太郎 一九三四年
    5 乙女ごゝろ三人姉妹 成瀬己喜男 一九三五年
    6 舞姫の暦 佐々木康 一九三五年
    7 有りがとうさん 清水宏 一九三六年
    8 女性開眼 沼波功雄 一九三九年
    9 舞姫 成瀬己喜男 一九五一年
    10 めし 成瀬己喜男 一九五一年
    11 浅草紅団 久松静児 一九五二年
    12 千羽鶴 吉村公三郎 一九五二年
    13 浅草物語 島耕二 一九五三年
    14 山の音 成瀬己喜男 一九五四年
    15 伊豆の踊子 野村芳太郎 一九五四年
    16 母の初恋 久松静児 一九五四年
    17 川のある下町の話 衣笠貞之助 一九五五年
    18 虹いくたび 島耕二 一九五六年
    19 東京の人 西河克己 一九五六年
    20 雪国 豊田四郎 一九五七年
    21 女であること 川島雄三 一九五八年
    22 風のある道 西河克己 一九五九年
    23 伊豆の踊子 川頭義郎 一九六〇年
    24 古都 中村登 一九六三年
    25 伊豆の踊子 西河克己 一九六三年
    26 美しさと哀しみと 篠田正浩 一九六五年
    27 雪国 大庭秀雄 一九六五年
    28 女のみづうみ 吉田喜重 一九六六年
    29 伊豆の踊子 恩地日出夫 一九六七年
    30 眠れる美女 吉村公三郎 一九六八年
    31 日も月も 中村登 一九六九年
    32 千羽鶴 増村保造 一九六九年
    33 伊豆の踊子 西河克己 一九七四年
    34 古都 市川崑 一九八〇年
    35 美しさと哀しみと ジョイ・フルーリー 一九八五年
    36 オディールの夏 クロード・ミレール 一九九四年
    37 眠れる美女 横山博人 一九九五年
    38 眠れる美女 ヴァディム・グロウナ 二〇〇六年
    39 夕映え少女 オムニバス 二〇〇八年
      (1)イタリアの歌 山田咲 二〇〇八年
      (2)むすめごころ 瀬田なつき 二〇〇八年
      (3)浅草の姉妹 吉田雄一郎 二〇〇八年
      (4)夕映え少女 船曳真珠 二〇〇八年
    40 掌の小説 オムニバス 二〇一〇年
      第一話 笑わぬ男 三宅伸行 二〇一〇年
      第二話 有難う 岸本司 二〇一〇年
      第三話 日本人アンナ 坪川拓史 二〇一〇年
      第四話 不死 高橋雄弥 二〇一〇年
    41 スリーピング・ビューティ―禁断の悦び― ジュリア・リー 二〇一一年
    42 古都 Yuki Saito 二〇一六年

    第6部 世界のなかの川端康成―ヨーロッパ・アメリカ・アジアの最新動向紹介
    ①フランス編▼坂井セシル
    ②ドイツ編▼イルメラ・日地谷=キルシュネライト
    ③アメリカ・イギリス編▼マイケル・ボーダッシュ
    ④中国編▼李征
    ⑤韓国編▼兪在真
    ⑥台湾編▼黄翠娥
    ⑦日本編▼仁平政人

    ●参考資料 
    ○日本近代文学館・パリ日本文化会館共催「川端康成と『日本の美』―伝統とモダニズム」展の記録
    ・ヨーロッパで初めての本格的な日本の文学者の展覧会を、どう開催したか(日本近代文学館〔事務局・信國奈津子〕)
    ・川端康成記念会挨拶(オープニングレセプション)〔川端康成記念会理事長 川端香男里〕
    ・日本近代文学館挨拶(オープニングレセプション)(代読)〔日本近代文学館理事長 坂上弘〕
    ○川端康成略年譜〔笠間書院編集部編〕1899〜2016
    ※ 一般的な事項に加え、本書の記述を追記したもの。

    あとがき
    執筆者略歴

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