現代文学100字レビュー

ピックアップレビュー

  • 『向日葵の柩』表紙
    出て行った母親を希求しながら尖る家族、聞き取れない韓国語、九官鳥が連呼する「オカエリナサイ」という虚ろな符牒。求めるほどに遠ざかる幸せを、求めることでしか生きられない情念が主人公たちを沈殿させている。
    文学(戯曲)
  • 『デジタルな神様』表紙
    近未来SFショートショート第三弾。どれもワンアイデアでしかないのだが、オチの付け方に無理がなく、それでいて唸らせる。そういう意味で通勤電車の読書に最適。脳死問題を揶揄した「ハウ・トゥ・不老不死」が好き。
    文学(小説)
  • 『南洋犬座』表紙
    沖縄、モンゴル、イルクーツク、世界中の子供やおっさんや犬が笑っている写真集。「週刊金曜日」の表紙写真集成だ。すでに発表済の写真の再録も少なくないのだが、上海のミミカキ売りおじいさんの虚ろな目線はいい。
    文学(日記・紀行)
  • 『スシとニンジャ』表紙
    アメリカの片田舎から日本へやってきた青年の長編。すしを食べて侍になるんだ。夢と希望の異文化交流記。「外国人の日本観」という物語をパロディ化しつつも、日本人が忘れたブシドーを解するサウスダコタ男は強い。
    文学(小説)
  • 『乱暴と待機』表紙
    「復讐」とか「それって愛?」とかイヤただの依存でしょ。という舞台の長編化。登場人物四人それぞれの関係性の気持ち悪さを増幅しすぎなんだけども、世俗を飛び越えた先の無私が不意に現れて戸惑わせられたりする。
    文学(小説)

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