中村航『リレキショ』レビュー
書誌情報

リレキショ
2002/12
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:リレキショ
レビュー
「姉さん」に拾われて暮らす青年が、一つ終わらせて一つ始める意志ある青春。深夜ガソリンスタンドで体操して星空へ祈る。過去を隠蔽することで不穏さを醸しながらも、軽やかな文体のなかに充満するこの幸福感は何。
読了:2007/11/25
長めの感想
『ぐるぐるまわるすべり台』のほうを先に読んじゃったんですけど、中村航、デビュー作『リレキショ』を読みました。あ、こっちのほうが面白い。
「ぐるぐる~」のときには感じなかったんですが、これ読むとすごく春樹っぽい。「屈託のない村上春樹」みたいな感じです。「はい。影響受けました」ってニコヤカに語りそうな屈託のなさです。その屈託のなさが大違いといえばそうも言えるんだけど。
そんなとき(春樹っぽいなと思った時)「なんだよ焼き直しかよ」と吐き捨てるんじゃなくて、わりと私は嬉しいほうで、楽しんで読みました。
背景をいっさい描かずに放りだされた登場人物たちは、それゆえの奥行きのなさもあるとはいえ、もらい泣きするくらいには好感を覚えました。彼らたちだけの丸く閉じた世界で、額寄せあって幸せなんて、嫉妬するじゃないか。