綿矢りさ『インストール』レビュー
書誌情報
インストール
2001/11
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:インストール
レビュー
小学生と組んで風俗チャットのバイトを始める女子高生の日常回復作戦。女子高生の日記みたいな文体で突っ込みどころ満載なのだが、だんだん気持ちよくなってくる緩さで。つまり町田康文体の一変種なのかもしれない。
読了:2002/04/01
長めの感想
綿矢りさっていいよね。可愛いから。
最年少17歳での文藝賞受賞、女子高生作家誕生!という話題の作り方としては、数年前の篠原一(こちらは文學界新人賞)での手法とまったく同じなんだけども、出版社の売り方としてよりあざとくなってますよね。「最年少」「女子高生」しかも「可愛い」という三つ揃えで売ってますから。
もちろん「可愛い」ということはひとつの才能なので、それを活かして活躍してくださいですけども、「この子だったら話題になる!」との判断での受賞決定があからさまなのはちょっとイカンよなぁと思います。選考委員・藤沢周のコメントみても納得してないみたいだし。
そんなわけで可愛いから読みました。登校拒否の女子高生が、小学生から風俗チャットのバイトを持ちかけられるというストーリー。思ったより悪くない。わざとやってるんだろうけど「女子高生的」な語彙と文体はあちこちほころびながら、ちゃんと味になってる。ナメられてる感じもすごくするんだが、意外に楽しんでするすると読める。
チャットから退室することを「落ちる」って言うんだけども、「『帰って』ゆく人にはまた会えそうな気がするが、『落ちて』いく人にはもう二度と会えないような気がするのは何故だろう。」という一文には不覚にもしんみり感じ入りました。
次作にも期待したいんですが、期待してもいいんでしょうか。河出書房新社は、彼女をこんなにしちゃった責任をちゃんと取るように。