木曽の宿場町経由、鞍馬・貴船を歩く

行程

[長野・愛知・滋賀・京都/奈良井、京都、熱田] 木曽は雨。雨に濡れる宿場町。それから京都鞍馬へ。鞍馬~貴船のあたりは空気が澄んでいて気持ちいいですね。最後は熱田神宮へも寄っています。
「木曽の宿場町経由、鞍馬・貴船を歩く」地図
1999-09-23
東京―塩尻―奈良井―木曽福島―名古屋
1999-09-24
名古屋―草津―京都
1999-09-25
京都―洛北―京都
1999-09-26
京都―山科―熱田―東京

旅行記

1999-09-23(1日目/木曜日・祝日)
雨の木曽路を南下して

塩尻駅前
塩尻駅前

台風接近中。塩尻です。

「木曽路はすべて山の中」の木曽路へ行きたいとスーパーあずさに乗り込みました。ここまではなんとか晴れてますが、天気予報によると雨が降らないはずはないコンディション。駅前で蕎麦など食しながら、危うい空を見上げます。

ところで塩尻は中央本線の東西分水嶺。JR東日本とJR東海の接点なんですね。そうすると、お互いもうちょっとちゃんと考えてくれてもいいのに、乗り継ぎが非常に悪くて困りました。東京圏から木曽へ行こうとすると、僕のように特急で塩尻まで来て、ここから普通列車に乗り換えるのが一般的かと思うんですが、1時間に1本あるかどうかの普通列車が特急到着の2分前に発車するなど、半ば喧嘩を売られている状態。どうにかならんものでしょうか、これは。

奈良井
奈良井

そうぶつぶつ言いながら20分ほど列車に乗ると奈良井に到着。かつて木曽最大の宿場町であった奈良井ですが、今は静かなもんです。情緒ある軒並みが1キロくらい並びます。資料館やお店を覗きながら歩きます。いいですね、こういうの。清らかな水が湧いていて、飲んでみたらば横に「沸かしてから飲むように」との看板を発見したり。可愛らしい猫をあやそうとしたら思いきり噛みつかれてみたり(まだ痕が残ってる)。いい町ですね。

そうこうするうちに雨になりました。あっというまに本降り。茶屋で雨宿りするもいっこうにやみません。話好きな女主人と電車本数の少なさで頷きあいながら、駅へ向かうことにします。

木曽福島
木曽福島

続いてやってきたのは木曽福島。雨も続く。こちらも木曽の宿場町としての風情が残るところですが「いい町並み」は駅から少し離れているようです。雨の中をそこまで歩くだけの気力もなかったので、あまり面白味のない駅前で台風をうらみつつ過ごします。

なんだかもうすることがなくなってしまって、名古屋まで出て早めに一日終了することにしました。

1999-09-24(2日目/金曜日)
名古屋で雨宿りする一日

台風ですね、実に。名古屋駅周辺でぶらぶらとしながら、やっぱり今日は観光なんてしようがないってあきらめました。降ったり止んだり、風もすごく強くって、そこの女子高生のスカートめくれねぇかなぁとか祈りながら無為に過ごします。

とりあえず次の目的地である京都まで出ちまおう、と電車に乗ったら乗ったで本も読まずに熟睡しちゃって、いかんいかん寝過ごすところだったぜ危なぇなとホームに降り立てば草津。草津? ついでだから駅前歩いてみることにしましたが、特にこれというものもありませんでした。再び新快速に揺られて京都へ。

京都へ行ったら必ず立ち寄るアバンティの書店で2時間くらい過ごす。「花の慶次」漫画文庫なぞ立ち読みしつつ「ええ話やなぁ」と涙もろくなりつつ、駅前のビジネスホテルで早めに眠ります。

1999-09-25(3日目/土曜日)
台風一過の京都は鞍馬へ

由岐神社
由岐神社

台風も離れ、晴れました。大原へでも行こうと駅バスロータリーへ行くと、次まで20分くらいある。ので思いなおして洛北は鞍馬・貴船方面に変更。バスで出町柳まで出て、そこから叡山電鉄に乗り換えです。

鞍馬側から貴船側へ抜けてみることにします。まずは鞍馬へ登る途中にある、というか鞍馬寺の境内になるんですね、由岐神社へ。「鞍馬の火祭り」で有名なところですが、詳しく知りません。写真の割拝殿が建築的に珍しいものだそうですが、それもよく知りません。

天狗みくじ
天狗みくじ

神社には天狗のおみくじが置いてありました。さすが鞍馬。引いてみることはしませんでしたが、「天狗が来るよ。3点」なんて書いてあるんでしょうか。それじゃあ点取り占いです。

鞍馬寺
鞍馬寺

砂利道のつづら折りを登っていくと鞍馬寺本堂へと至ります。

ここでは宇宙エネルギーそのものを神と祭っていて、探り出すと実に深い世界で、なおかつ現実的な知性なのでありますが、とりあえず本堂は表象。真のパワーは奥の院にあるんで、それは後段に譲ります。

すぐ裏手にある霊宝殿も捨てがたい。毘沙門天がズラリ並ぶ様はなかなかの迫力で圧倒されます。

狛虎
狛虎

狛犬、完全に虎です。狛虎。虎が外部から侵入しようという魔から聖域を守っています。やたらと強そうです。このへんからもう、普通の神社と思ってもらっては困る、という感じが漂っています。どうですか。

「普通の神社」じゃない、ここは寺院なのでした。でも場の空気感から言うと完全に神社です。不思議な空間。

木ノ根道
木ノ根道

鞍馬奥の院方面へ。奥の院への道には木の根っこがワイルドに伸びてます。これを見るだけで、何か特別なエネルギーが存在してるのではと思わされます。牛若丸(源義経)がここで修行したとの噂。昼なお薄暗く、天狗がいそうな雰囲気ですね、実に。

さて。鞍馬一のパワースポットとなる奥の院。魔王殿という名がついています。岩盤(実はこれもクセモノなんですが)を祭る小さな社です。

鞍馬魔王殿
鞍馬魔王殿

伝説があります。650万年前、金星からこの地へ魔王尊サナート・クマラが降り立ったんですね。地球の統治者としてやってきた魔神です。彼は現在、地底王国の王として、人類の進化を司っているのだと言われてます。神智学ではスピリチャルな存在ですね。金星という言葉のある種生々しさに幻惑されつつ、クマラと鞍馬が似ていることに気づく人がいて、「サナート」が義経に死後与えられた尊称・遮那王(しゃなおう)に似ていると気になる人もいるでしょう。興味を持ち出すと楽しい世界です。

どちらにしても、この伝説のおかげで鞍馬は独特の教義を持って現在に至ってます。宇宙エネルギー、あるいは「光」自体が尊いものであり、地球外生命も視野に入ってきます。すでにそれは仏教でも神道でもないです。面白いと思いませんか?

貴船神社
貴船神社

もちろん僕だって何を知っているわけでもなく、興味本位の断片的なもんですが。こういうところ、何か無理して言いたくなっちゃう自分がすごく嫌。あなたも嫌でしょうが。

気をとりなおして鞍馬を越えると貴船神社にたどり着きました。こちらも、奥社のほうが「すごい」らしいのですが、このときには奥社までは行っていません。後から思うと残念なので、また行きたいところですが。

曼殊院
曼殊院

叡山電鉄で下り、修学院で下車しました。予約が必要な修学院離宮は予約してないのでパスするしかなく、曼殊院へ。門前の茶屋でビールに蕎麦で昼食ってやってたらなかなかいい気分。

枯山水庭園は見事なもの。やっぱり白砂と緑の対比は日本の心ですね。見ていて気持ちいいです。

圓光寺
圓光寺

修学院エリア、ちょっと歩いて圓光寺へ。家康の開基になる勉学の場。日本最古の木製活字がある。と言われると、出版関係者(?)としては興味深く観察したりしないといけないようにも思うのですが、んー、そこまでの活字への関心はあんまりないかも……。

詩仙堂
詩仙堂

さらに歩いて詩仙堂。麗しいじゃないすか、庭。謀反の罪で家康から追放された石川丈山の山荘ですね。時の権力者に追われたものがこういう贅の居を構える感覚、よく分からないんですが。あるいはこれが当時の質素なのか。

鹿おどしの音を聞きながら庭にまどろむ、にしては少々観光客過多。もう少し落ちつければいいところだと思います。やっぱり庭きれいだし。

金福寺
金福寺

詩仙堂から程近い金福寺。後で考えたら庭ばかり撮っていて、写真はこういう絵しかありません。逆に言えば、庭好きにはたまらないエリアです。上に方に見えるのは芭蕉が滞在し蕪村が再興したという庵。嵯峨野の落柿舎と並ぶ俳諧の庵。俳人たちの墓が並んでいます。

もうちょっと時間が余ってたんですが疲れたので出町柳まで行って鴨川を眺めながら読書など。宿は5軒目の電話で空きを見つけたビジネスホテルになりました。

1999-09-26(4日目/日曜日)
山科を経由して熱田神宮へ

神泉苑
神泉苑

翌朝。京都は二条城の前にある小さな公園、神泉苑を訪ねました。二条城設立前にはもっと広い、天皇の禁苑だったわけですが、いまや鯉が浮かんでる小さな公園です。

ガイドブックで「願い事を念じながら朱塗りの橋を渡ると叶う」とのことだったんですが、ロープ張られて渡れないようになってます。願いは端から叶わないのですが、どうしたらいいでしょう。

軽く二条城でもぶらついてから帰ろうと思ったわけなんですけど、そうこうするうちに地下鉄から修学旅行生がわらわら湧いてきたのでやめました。そのまま地下鉄東西線に乗って御陵で下車。天智天皇陵へ行こうと歩いてたのですが、道がわからなくなってただ山科駅まで歩いただけになってしまいました。まぁいいや帰ろう帰ろうと切符を買おうとしたら券売機が壊れてて遠距離切符が買えない。「証明書出すから京都まで行って買ってくれ」なぞと言われてとりあえず電車に。

熱田神宮
熱田神宮

名古屋へ立ち寄って熱田、熱田神宮へ。三種の神器のひとつ草薙剣、ここにあるんですよね? 見たい~~。ってなわけで帰路へ。(了)