伊香保温泉、石段街と射的場と酔い酔いの夜

行程

[群馬/伊香保温泉、渋川] 群馬県は伊香保温泉に行って来ました。一泊二日、気軽な温泉旅です。名高い温泉地はやはり一度は行っておきたいところです。
「伊香保温泉、石段街と射的場と酔い酔いの夜」地図
2002-02-24
東京―渋川―伊香保温泉
2002-02-25
伊香保温泉―高崎―東京

旅行記

2002-02-24(1日目/日曜日)
石段街を散策して外湯へも

雑巾絞り
雑巾絞り

今回の旅も会社の同僚と行ったんですが、途中で2人抜け2人合流するため、参加人数7人なのに7人が揃ってるのが15分たらずという奇妙なパーティとなってます。日~月曜という日程だから無理もないのですけれど、僕も月曜を悠々休んでいられる状態ではなかったので、仕事先の電話番号控えてきてます。そんな落ち着けない温泉絵巻。

まず東京駅から先発する5人は僕以外はすべて女性。幹事業を請け負っているのであながち間違いではないのですが、早くも引率者のような気分です。新幹線で山並みを眺めながら小一時間で高崎駅に到着。普通列車に乗り換え、渋川まで。

写真は渋川駅前にあったブロンズ像。ちょっとネットで調べてもみたのですが、この娘が何者なのか分かりません。「雑巾を絞っている」像だという誰かの指摘を反駁する義務もなかったので、そのような印象になってますが、こんなに胸をはって雑巾絞るこたぁねぇよなぁ。知ってる人は教えて。

石段街
石段街

渋川からバスで30分ほどで伊香保温泉へと着きます。思ったより寒く、日陰には雪が残っています。民家の軒先のような路地裏を通り抜け、飼い犬に吠えられたりしながら、一旦荷物を預けに宿へ。

この辺で昼食にしたいのだがどこがいいだろうかとフロントの方に訪ねると、「いけや」という蕎麦屋を勧められました。どうやらフロントの方の友人がやっている店だそうで、そんなこと言わなきゃいいのになぁ説得力2割減だよなぁと僕も同行者も疑惑の目をしているというのに、「近いですよ」とまったく意に介さぬ様子。で、ほかにあてもなかったのでそちらへ向かうことにしました。

田舎の方が言う「近い」というのは倍ぐらいに考えなきゃならないってのが世の常。「この便利な時代でも機械が買えない」というキャッチフレーズ(「手打ち」を強調してるわけですね)が完全に狙っている看板をたよりに随分歩きまして、なんとか到着。自宅を改装して店にしている落ち着き感があり、蕎麦自体もなかなかにおいしゅうございました。アド街ックで紹介もされたのですね?

さて石段街へ。この360段の石段があまりに有名ですよね。源泉地から湯を引くにあたって、石段の下に樋を敷設する形で設計されたものです。湯が流れている様子を見られる小窓がところどころに空いています。ここから各旅館へ湯が分岐してゆくわけで、当時のいろいろな力関係により引き入れの可否、あるいは引き入れ量など厳密に決められ、現在もそれが受け継がれているのだとか。

伊香保を歌った与謝野晶子の詩が刻まれている部分もあり、古くから文人墨客に愛された伊香保の歴史を語りますね。

案内板
案内板

案内板もレトロな味で、伊香保温泉としてのトータルイメージを考えて作られています。石段の下方には日帰り入浴施設「石段の湯」や関所跡、上方には伊香保神社や立ち寄り露天風呂なんかがあります。

そうそう、話は前後するのですが、関所跡にはいわゆる「顔ハメ」があり、えーとこの用語で通じるのかな、侍なボードの顔の部分に穴が空いてて後ろから顔出して記念撮影したりするあれですが、入館料払って見るほどのものでもないよなぁと表にあった顔ハメだけで盛り上がってたのでした。女性4人男1人のグループですから、当然僕がお姫様にハマります。世の中そういうシステムです。

田中屋
田中屋

とりあえず、石段街をゆっくり上まで行ってみることにしました。

石段街沿いには各種みやげの店があったりするのですが、いわゆる温泉饅頭の「湯の花まんじゅう」が名物。湯の色に似せた褐色の饅頭です。店内で主人がやる気なさそうに製造している風景が見られます。バラ買いができるので、みなでひとつずつ買って店先でぱくついてみたり。旨い旨いって言ってたら宣伝効果抜群でほかのお客さん呼び寄せちゃったり。ついでに宣伝しておきましょうか、田中屋さんです。甘さ控えめで食べやすいものでしたよ。

さらに登ると、思ったよりもあっけなく石段は終了し、伊香保神社に至ります。投票箱みたいな形状の賽銭箱に銭を投げ、必然性なくお祈りしたり。

飲泉所
飲泉所

伊香保神社から10分ほど登ると、飲泉所があります。

別に珍しくもない、源泉が飲めるという趣向のところですが、これが強烈な味わい。鉄分が濃いため、ブリキのバケツで一日寝かせた日なた水みたいな味がします。ひしゃくで飲むわけなんですが「ひしゃくの味がする」という台詞も飛び出しつつね。

横にある水は口直しのために出てるのでしょう。飲むことでいろんな効能があるわけですが、二度とは飲めませんね。「まずッ」「どれどれ」「やっぱまずいっ」と言いながら全員順番に試してみるのが旅のオキテでしょうか。

露天風呂
露天風呂

さらに10分ほど歩くと露天風呂があります。源泉地にそのまま湯を溜めて造られた共同湯で、露天風呂しかないところです。湯船に囲いをつけて、ついでに受け付け造りましたというような簡素な小屋造り。昔は混浴だったところを、真ん中に壁を作って男女に割っています。

戸を開けるといきなり正面に湯船があり、そのサイドにちいさく脱衣場があります。思ったより混雑していて、すいてたら中の写真も撮ろうと思ってたのですが撮れませんでした。いや、一度カメラを構えたのですが、堅気でない風なお兄さんにファインダー越しに睨まれたので挫けました。

湯船は二つに仕切られていて、温めの湯と熱い湯に分かれています。寒い季節ですから熱いほうが大混雑。錆色に濁った湯に浸かります。特に眺望が開けてるわけでもないですし、泳げたりする広さもない平凡といえば平凡な湯ですが、みな静かに湯治場なムードを楽しみながら浸かっています。先ほどの堅気でないお兄さんは刀傷でも癒してるのかもしれません。お湯は効き目のありそうな実にいい湯でしたし。

源泉地
源泉地

露天風呂の前では源泉が湧き出しているところがガラス越しに見られるようになっています。「伊香保源泉地」の碑が立つ。うちに帰って撮った画像見ててはじめて気づいたんですが、横に掘ってある「大阪旅行クラブ」ってなに? 奥にある胸像は温泉療法を日本に広めたとされるベルツ博士。

そろそろ途中合流組がやってくる時刻だったのですが、集合が遅れたとかで高速を突っ走ってる真っ最中という連絡が入ります。日帰り組もそろそろ帰路につかねばならない時刻なのですが、すれ違いも寂しいので石段街をぶらつきながら到着を待つことにします。「伊香保焼き」という名のタコ焼きがあったので、ソースの匂いに誘われつつ賞味。なぜ湯上りにタコ焼き。なぜ伊香保でタコ焼き。できたてのアツアツで、必要以上にクリーミー。

先ほどの湯の花まんじゅう店でみやげを買ったりしてると、ようやく男2名合流。わーいって宿の前で集合写真だけ撮ったらすぐ女性2名がお帰りです。バス停で大きく手を振って別れます。変わった集団ですよね。

そんな訳でメンバーチェンジを経て、男3名女2名となった第二期旅団でもう少し石段街を歩き、酒屋で犬ラベルの地ビールを買ったりして宿へ。

森秋旅館
森秋旅館

宿は石段から程近い森秋旅館。詩人・野口雨情お気に入りの宿だったとかの老舗で、ロビーに雨情コーナーがあったり、風呂に童謡が流れてたりします。

さっそく風呂へ。通常、大浴場の奥にある露天風呂が、この宿では大浴場とは完全に分離しています。当然露天風呂のほうへ。ちょうど陽が落ちるころで、立ち上がって眺めればいい夕景を望めるのかもしれませんが、寒くて湯船から体を出せなかったので景色は分かりませんでした。

温度は適温で、随分長湯をしました。やはり鉄で茶色くなっていて、成分濃厚ないい湯です。湯当たりしたのか、同行者1名、「手が痺れてるよー」と走り回ってました。そのくらいの、いい湯です。露天風呂のほうは午前1時に男女入れ替えとなってます。

夕食を済ませた後、いそいそと浴衣から普通の服へ着替えます。何故か。射的がやりたいからです。「伊香保といえば射的、射的といえば伊香保」という前評判に胸膨らませながら外出することにしまして。本当は浴衣のまま石段を歩くのがこの街の粋ってもんなのですが、寒いのでね。

射的
射的

射的屋は何軒かあったのですが、ここ10年1人も客が来ねぇってムードの裏寂れたところは避け、石段沿いのまともそうなところへ行ってみました。老夫婦が営むこの店。射的って初めてやったんですが、こんなに近いのに当たらないものなんですねぇ。1個しか落とせませんでした。

もちろん全弾命中させたところでロクな景品はないわけなんですが、練習して上達したい感じです。コツをつかんだら楽々なんでしょうね。実際、高得点を挙げた人もいましたし。

ところで。つねづね旅行記に人物写真は不要だと考えていまして、「お前の顔じゃなくて旅の写真載せろよ」と思う性質なので、グループ旅行でも人が映ってる写真は極力はじいてるんですが、こういうゲームものは人がいないと絵にならないので載せました。ご理解のほど。もちろん僕は(撮影者なので)映っていませんが。というか僕が書くと文章自体、一人旅みたいな印象になってしまいます。無意識にそういうスタンスを取ってしまっていることも考えられます。

ともあれ。写真の氏は、手の痺れは取れたんでしょうか。

弓場
弓場

同じ店内には弓場もありまして、僕はこちらのほうが気に入りました。弓……アーチェリーというモノになるんでしょうかね、それすら知りませんが。もちろん初めてです。的を射抜いたときのバスリという響音が心地よくって。金なら払うからずっとやらせてくれって感じでした。

的の中心に近いほど高得点となり、やはり景品がもらえます。

店の親父は弓道指導者の免状(?)を持っているようで(壁に掛けてありました)、適宜アドバイスしてくれます。あごの下までぐっと引いて、肘はこう、狙うのはここ、とアドバイスどおりに射るとちゃんと飛びます。嬉しいもんです。

そうこうするうちに店内は賑わってきました。この寒いのに「かくあるべし」という強い信念の持ち主たちはやはり浴衣に半纏かけて来てます。彼らと入れ替わりに出て「歓楽街」があるとの噂を聞きつけて少し捜して歩きました。お前何歳だよというストリップとかそういう奴ですか? というか女性含みのグループでそんなとこへ行ってどうしようというのでしょうか。幸か不幸か見つからず、すごすご宿へ戻りましたけど。

森秋旅館の露天風呂
森秋旅館の露天風呂

部屋へ戻って酒盛り。地ビールはなかなかコクがあって旨い。なぜか「マーライオンワイン」なるものも持ち込んでたりして、話も弾みます。結局午前3時ごろまで話し込んでたんですが、ストレートでやってたバーボンが後半効いてきて、お座なりな相槌しか打ってなかったんじゃないかと思います。

酒盛り終了後、風呂へ。デジカメを持ち込んだことは確かに覚えてるんですが、何をどう撮ってきたのかは酔いの向こうに霞んで消えており、うちへ帰ってから発見したカット(ほか湯気しか見えない内風呂らしきものが数点)。

この写真、ふるちんで撮ってるんでしょうかわたし。湯船に浸かりながら撮ってるのか? 謎です。映ってるのが同僚なのかどこかの親父なのかも分かりません。酔っ払いって嫌ですねぇ。

しかし薄闇の露天風呂で、多少画質は荒れてるものの、(たぶん)フラッシュも焚かず(たぶん)露出もいじらずにここまで撮れるデジカメってのはたいしたものです。

2002-02-25(2日目/月曜日)
帰ります、いや仕事へ?

景品
景品

二日酔い、というかリアルタイムで酔っ払ったまま迎えた朝。射的屋でゲットした賞品が微笑んでくれてます。左が射的、右が弓です。いらねぇ。

朝風呂に入っても全然酒が抜けず、そのまま帰路に。途中合流組が乗ってきた車に同乗し、スピッツを聞きながらまっすぐ高崎まで出ました。

ドライバーとここで別れ、高崎名物だるま弁当を買って新幹線に。指定が取れず、自由席も座れず、連結部で座り込んで眠りながら東京へ向かいます。うち2人は午後から会社へ出る予定。お疲れ様です。って僕もまっすぐには帰れず一度会社へ行って、酔いの覚めない顔をさらしながら仕事をひとかかえうちへ持ち帰ったり。旅行記としてどこで話しやめていいのか分からないのですが、自宅でやるはめになった仕事まで含めて温泉だったりするのです。(了)