肥薩線で鉄ちゃんのふり(3ページ)

旅行記

2005年10月27日(5日目) 高千穂峰トレッキング

霧島神宮の古社跡
霧島神宮の古社跡

翌朝は綺麗に晴れ上がった。駅に行くと次の普通列車は隣駅西都城どまり。西都城で鹿児島方面の列車に連絡ってしてるんでしょうか?と訊ねると、ないという。「普通列車で鹿児島方面行くんやったら次は13時50分のになるわね」って今10時だよ? それはさすがに待てず、次の特急に乗って霧島神宮駅まで。駅前の蕎麦屋で早めの昼食。

高千穂峰に行こうかと思ったのだが、そちらへ行くバスは土日にしか走っていない様子。しようがないのでバス便のある霧島神宮だけ参拝して帰るかと思って地図看板を見ていたのだが、商売上手なタクシー運転手の爺さんに声を掛けられ話しているうちにタクシーでもいいかなという気に。高千穂峰の登山口、高千穂河原まで走ってもらう。

登山口に入ってすぐに霧島神宮の跡地がある。溶岩流で燃えたため、社はここから別の地へ移されているが、鳥居と斎場が残っている。「山」が御神体であることが、この状態だとよりくっきり見える。

御鉢へのザレ場
御鉢へのザレ場

天孫降臨の地とも言われる高千穂峰。宮崎県北部の高千穂がその伝説の地としてより説得力があるが、今日来ている高千穂峰はまったく違う場所。でも高千穂峰も人を惹きつける強力な磁力がある。一度登ってみたいと常日頃思っていた山なのだった。

石畳の道をしばらく歩くとひどいザレ場が現れてきた。溶岩性の砂利、小石が、歩くたびにざらざら崩れるところを登る、疲労の激しい急斜面。道なんてないので適当なルートを選んで取り付く。途中で、これは観光気分で来るところじゃないな、と後悔したがもちろん遅い。しかもこの斜面を登った先はまだ目指す高千穂峰じゃない。

硫黄臭たちこめる御鉢
硫黄臭たちこめる御鉢

登ったところは御鉢。蒸気の上がる、まだ活動中の火口跡だ。荒い息を整えようと深呼吸すると硫黄の匂いを思い切り吸い込むことになる。気分が悪い。あまり長く立ち止まっていてはいけない場所だ。

さらに遠くに、目的の高千穂峰が見えている。ここでやめて帰ろうかと思う。「惨敗です。へへ」って旅行記に書こうかと思った。そのときふと、子供が笑い騒ぐ声が聞こえてきた。幻聴かと辺りを見回すと、高千穂峰のほうから降りてくる一群。小学校の遠足のようだ。御鉢が集音効果を果たしてる?

ここで帰ったら小学生に負けたことになるので、気を取り直して再び上る。鉢の縁に沿って半周し、一度少し下ってから高千穂峰へのザレ場、またしても厳しいザレ場がある。こんなところ遠足でよく来るな。

天の逆鉾に見とれて
天の逆鉾に見とれて

登山道入口から2時間、ようやく頂上へ到着。疲労困憊。頂上には「天の逆鉾」が突き刺さっている。奈良時代にはもうあったと言われ、いつ誰が何の目的で置いたのか謎の遺物。こういう古代ミステリー関係が好きな僕としては、今回はこれが見たくてここまで来たようなものだ。何か呪術的な要ではないかと思っているのだが……実物を前にして気配に耳を澄ませてもよく分からない。

頂上にあった山小屋には誰もいない。喉が渇いていたので売り物風に並んでいるなかから缶ジュースを勝手に飲んで一服。1000円札をテーブルに置いて帰り際、山の神かと見まごうような胸までの髭をたらした爺さんが現れ、700円のお釣りをくれた。

下りのほうが危険
下りのほうが危険

何度か滑り転び掌をすりむきながら下山して、先ほどのタクシー運転手から渡されていた名刺を見て電話する。周辺は霧島温泉郷。やや早めではあるが、運転手推薦の温泉宿に連れて行くというので行ってもらうことにした。

紅葉時にはここから見る風景がすごいのだとか、積雪時にはこのガードレールにみんなぶつかるんだとか、延々と続く喋りに付き合いながら走る。途中、宿の酒は高いからのと酒屋の前に止めてくれ、何か買えという。運転手の勧める焼酎を買った。ここまでの料金で確定しとくわ、と勝手にメーターを下ろしてしまったり(実際それからかなり走ったが、メーター停止時の料金だけを請求してきた)、謎の行動の多い運転手。

宿に着くと、「ちょっと待っとれ」といって運転手一人で中へ。通常1万5000円のところ、1万3000円にまけさせたのだと言う。通常1万2000円で1000円が運転手の懐に入るのかもしれないが、そんなものはどちらでもいい。宿は丸尾温泉にある牧水荘。小ぢんまりしたいい宿だ。温泉もぬるめで長湯ができる。

2005年10月28日(6日目) また雨模様の鹿児島地方

霧島神宮
霧島神宮

霧島温泉郷の朝。そういえば霧島神宮をまだ参拝していなかった。バスで霧島神宮へ出、参拝。古くは昨日登った高千穂峰のほうにあり、それを麓へ移し(高千穂河原の古社跡)、さらに今から500年ほど前に現地へ移している。

立派な社殿。鬱蒼と茂る森を背面に、朱が映える。艶やかな印象を受ける。弾力のある開け方というような空気があって、高千穂峰とは違った様子。

団体客が大勢来ていてその賑やかさ自体も峰とはもちろん全く違うのだが。ちなみに高千穂峰は宮崎県、霧島神宮は鹿児島県に位置する。

霧島神宮境内の岩くれ
霧島神宮境内の岩くれ

境内は岩がたくさん。何か由来がないとおかしい、人の手が入った石組みが何の解説もなく置いてあったりする。君が代で言う「さざれ石」なども祀られている。

駅へ戻り、鹿児島市へ向かう。鹿児島中央駅に降りて、昼食を取りながらどこへ行こうか思案。学生時代に市内いくつかのスポットはすでに見て歩いている。

では、桜島へ渡ることにしようとフェリーターミナルを目指しているうちに雨が降り始めた。7日間の旅程中、雨が降ったのは2日だけだから、そんなに不運だとは思わないけれど、やはり雨だと憂鬱。

かごしま水族館のくらげ
かごしま水族館のくらげ

フェリーターミナルにほど近いかごしま水族館へ入って雨宿り。入ってエスカレーターを上がったすぐにある大水槽でのジンベエザメが見ものだろうか。水槽で泳げないほど大きくなったら海に放し、また小さなジンベエザメを飼育する……という方式。シートに腰掛けずっと見ている人も多くいる。僕も時間はいくらでもあるので、ゆっくり観察。

時間つぶしとしても、水族館は好きだ。ひやりとした雰囲気が。写真は、水流で洗濯槽のようになっているなかをぐるぐる回っているくらげ。くらげも大変だ。

揃いのジャンプ
揃いのジャンプ

平日だからか、観客がまばらななかでのイルカショー。もちろんそんなことに関係なく元気にやってる。揃いのジャンプも美しい。

水族館を出る頃には雨脚はますます強くなってきたので桜島は断念し、天文館のホテルへ。

荷物を置いてブックオフへ立ち寄る。普通の人は旅の途中で3店ものブックオフにはなかなか寄らないんじゃないか。いやブックオフでなく普通の古本屋でいいのだが、なかなか普通の古本屋に出会わないんだよね。

その後、鹿児島名物、黒豚のとんかつを食べる。絶品。

2005年10月29日(7日目) 半日がかりの帰路

かごしま近代文学館
かごしま近代文学館

翌朝も鹿児島市街をぶらぶら。近代文学館・メルヘン館へ。近くの私立美術館や県立博物館、照国神社は学生時代に行ったのだが、文学館は見ていなかった気がしたので。近代文学はもちろん守備範囲じゃない。でもブースに入るたびにセンサー感知で音声や映像が流れ出してその作家の人となりを伝える仕掛けは新鮮。

併設のメルヘン館は一寸法師、孫悟空、ムーミン、トトロ、古今東西の童話・絵本ネタで溢れ、こちらのほうが気に入ったかも。体験型の施設となっていて、32歳男性が一人で入るのは勇気がいるのだが、子供連れで入るにはうってつけだ。

その後は8時間以上かけて、新幹線と特急を乗り継いで東京まで帰る。飛行機のほうが安くて安全で快適でも、列車のほうが好きなのだからしようがない。お尻はすごく痛くなってしまったけれども。(了)

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