角田光代『空中庭園』レビュー

書誌情報

角田光代『空中庭園』表紙
空中庭園くうちゅうていえん
2002/11
NDC:913 | 文学>日本文学>小説 物語
目次:ラブリー・ホーム / チョロQ / 空中庭園 (ほか)

レビュー

家族とはこうあるべしとの幻想のなか、透明な壁の個室に閉じこもりながら幸福を演じる連作長編。壊れてしまってる家族といえ、ふと振り切れる求心に胸を衝かれる。だって誰だって望んで鍵かけたわけじゃないんだよ。
読了:2008/02/09

長めの感想

すごいわ。『空中庭園』を未読のまま「角田光代なかなか面白いよね」とか言ってたのが恥ずかしいくらい、すごい作品じゃないですか。文庫解説にもあるように、突然号泣してしまうような一行というものがあるんですよ。例えば父が主人公となる章(主人公が次々変わる連作なんです)では、同情の余地のないアホな父なんだけど、娘と息子が伸びたり縮んだりする場面で(読んでない人には分からん表現かと思うけど読んでください)読んでるこちらの感情も振り切れます。

もともと僕はこういった「家族」のモチーフに弱いのかもしれない。Accessに入れてある100字レビューをいま「家族」をキーに抜き出してみたら50冊あったんだけども、全体平均に比べて評価が明らかに高い本たちなんですよね。5つ星は今回の角田光代『空中庭園』に、鴻上尚史『パレード旅団』糸井重里『家族解散』重松清『疾走』東野圭吾『秘密』筒井康隆『家族八景』

家族という枠組みを壊してしまうような想いをそれぞれが胸に抱えてて、でもそれを表出するしか家族を維持する方策がない、というギリギリのところで成り立つ物語みたいなものにぐっとくるんですよね。自分でも意識下に置いてないような記憶が私を揺さぶるんでしょうか。

とりあえず『空中庭園』は読んでみて。と文庫になった後で、映画化された後で、言うのは恥ずかしさもあるんだけど言っておきます。

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