僕は札幌の駅につくと、ぶらぶらいるかホテルまで歩いてみることにした。風のない穏やかな午後だったし、荷物はショルダー・バッグひとつだけだった。街の方々に汚れた雪がうずたかく積み上げられていた。空気はぴりっと張り詰めていて、人々は足元に注意を払いながら簡潔に歩を運んでいた。
札幌駅から「いるかホテル(ドルフィン・ホテル)」を目指して歩くとそこにあるのは僕の記憶とまったく違う「ドルフィン・ホテル」。物語序盤です。『羊をめぐる冒険』の続編として、そちらを読んでいる人には「いるかホテル」はよく知っている場所ですし、読んでいない人には徐々にその姿が明かされていくことになります。
「ドルフィン・ホテル」という名のホテルは札幌に実在しません。札幌の駅から近くはないけど、歩けないこともない距離にあるホテルです。
掲載日:2012-08-04