そのコンビニエンス・ストアでは弁当、おにぎりの類いが欠けている。物資が不足していた。カップラーメン類も。棚に欠落がある。ここはまだ屋内退避指示の半径三十キロ圏内に入っていないのに。南相馬市内だというだけなのに。
南相馬市の鹿島区、福島第一原子力発電所から30キロ圏の円弧北端のあたりです。郡山出身の作家として、被災地が見たい、福島が見たいとレンタカーでやってきた浜通り。作中では相馬の「馬」の由来、歴史も語られながら、物語性へと広がって行きます。
南相馬市の30キロ圏内か圏外か、は今(2011/8/7)まさに義援金配分方についてもめているところでもあります。そういう意味でも見えないライン(もちろん住民が作ったんじゃない、国と東電が作ったラインだ)がある地域です。
引用文の箇所に続いて、3キロほど東になる海岸へ向かうのですが、そこにあるはずの神社がない、瓦礫のなかで失語してしまう作家。
あと作中では、南から円弧に迫る、いわきのほうも訪ねています。
掲載日:2011-08-07