新宿駅東口のビルディングの三階にある、モダンジャズ喫茶店<トーム>は、ロリンズのレコードをかけていた。
僕は、予備校の午後の授業を放棄して、<トーム>に通じるモルタルのところどころはげ落ちた階段を昇ってきた。
「隆男と美津子」より。
ジャズ喫茶が流行ってた時代、60年代の新宿。中上健次自身も「ジャズ・ヴィレッジ」などジャズ喫茶に入り浸ったということですけども、この小説中の「トーム」は実在した店名ではないと思われます。
「ロリンズ」はサックス奏者のソニー・ロリンズです。そんな名前が普通に出てくる時代の新宿。
掲載日:2012-07-23