河口部に近づくと、道の片側の崖に墓がたくさん並んでいた。沖縄でよく目にする小型の家のような墓や亀甲墓とは違い、崖を掘り抜いた見るからに古そうな墓だった。
— 目取真俊『風音』
沖縄、海岸沿いの風葬場。特攻隊員の頭蓋骨が祀られてて、こめかみの穴から風が通りすぎるときに物悲しい音がなる「泣き御頭」。
この泣き御頭は実在のものではなくてフィクションなのですが、本作の映画化でのロケ地である、本部半島の具志堅区とでもとらえておきましょうか。本部半島の海岸沿いには崖に掘りこまれた古い墓が実際にあります。
いや逆か。作品の経緯で言うと、初期短編としての「風音」が映画になって(作者がシナリオも担当)、映画のあとに長編小説として書き直された作品なので、映画での風景なども盛り込まれた作品、というわけです。
掲載日:2008-03-09