イタリア大氷河の全容を真下からカメラに収めたい、と考えていた谷崎がガンダラ艦長に頼んだ。うまいことにビーグル水道は湖のようにおだやかになっていた。アイスフォールの下には絶えず氷塊が落下していたが、あまり直下にまでは接近しない、という約束でガンダラ艦長は我々にゴムボートを出してくれた。
「海に還る氷河」より。
プンタアレナスから船に乗って、ビーグル水道へ。チリの南、南米大陸南端の、もう南極圏ですね。氷河がどんどん割れて落ちる海域。
椎名誠にはこういう辺境のルポも結構ありますが、そのなかでも「日本に残してきたもの」の対比が美しい紀行文です。
掲載日:2012-07-28