その夕方、巧緻な罠にかかって身動きがとれなくなった小さな動物か何かになったような心もとなさを反芻しながらわたしは白山上から西片町にかけて蜘蛛の巣のように広がる細道の迷路をさまよっていた。
— 松浦寿輝『巴』
文京区、白山・西片・向丘エリア。東大の前あたりですね。東大卒業、東大教授の作家でもあるので、このあたりが作中にときどき出てきます。
「昔に遡れば東に下りて根津の遊郭、西に下りて白山下に花街という艶っぽい土地柄で...」ともあるので、古くは武家地であった高台か。現在も古い邸宅が少なくないところです。
掲載日:2008-04-12